製品情報

EIZO

FlexScan L567

【主なスペック】
【発売日】
2003年07月
【メーカーサイト】
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ユーザーレビュー

2003年09月21日 00時00分
 店頭では見落としがちな点を書き連ねてみました。
 L567を購入しようとする人にとっての「最後の疑問」に対する回答としてお役立て頂ければ嬉しいです。

 #この機種を購入選択肢に加えている人にとっては、本機の持つS-IPSパネルの性質やスタンドの特異性については十分に理解している(または店頭で確認済み)と思われますので、「店頭やカタログですぐに解る点」については極力排除しました。
 #ちなみに、今回はEIZO E76D(21インチCRT)からの乗り換え購入ですので、比較対象となるモニタ自体が比較的大きい代物です…


・「液晶なのに省スペースではない!」可動範囲の広さとトレードオフの関係
 パネル面を最大限寝かせた場合、最大奥行きが430mm程度に達します(縦横どちらにしてもあまり変わりない)。
 また、もっとも奥まった位置までがスタンド脚部となっている為、めいいっぱいにモニタを倒して設置する場合、CRTモニタ(スタンドがモニタ中央より前前寄りとなっている)よりも、さらに設置面奥行きを必要とします。
 EIZO E76D(21インチCRT)の場合は600mmある奥行きのうち、モニタ管面から400mm奥まで接地面があれば(より後方は接地面なしの空間を確保するだけで)問題なく設置できていましたから、これと比べて都合30mm程度のさらなる奥行き余裕を必要とします。
 また、モニタの縦横変換を高頻度に行う場合は、接地面からの高さと幅に少なくとも550mm程度の余裕が必要です。
 従って、(一切画面位置を動かさない場合を除いて)一般的なパソコン用ラックに設置した場合、手前にキーボードを置く余裕がとれない場合や、モニタの回転に必要な空間を確保できない可能性がありますので、パソコンラックのサイズが適当かどうか確認する必要があります。
 あるいはパソコンラックの使用をやめて、奥行きを広くとれる普通の机を利用した方が快適に利用できるかもしれません。

・縦表示でも「書見台」並に視点を低く保てる
 もっとも高さが低くなる(=もっともパネル面を倒した)状態にセット場合、パネル描画部上端の高さは約260mmとなります。一般的なパソコンデスクに設置した場合は、目線を10度近く下げた状態でパネル上端を見る形となり、かなり楽に表示領域全体を見渡すことが出来ます。
 また、これだけ倒した状態であっても色味が極端に転ぶことはなく、画像編集などを行わない限りはまず問題とならない範囲に収まっていてかなり良いと思います。
 低色度変位パネルの特性が見事に生かされているようです。
 ただし、一度この機種に慣れてしまうと「垂直に立つ表示画面にはもう満足できなくなる」かもしれませんので、その点は十分に覚悟しておく必要があるかと。
 
・ScreenManagerPro/LCDは不安定…?
 パソコンとモニタの間をUSB接続し、アプリケーションとモニタの色設定を関連づけして、アプリ起動ごとに色設定を自動切り替えできる「ScreenManager Pro for LCD」というソフトウエアが付属しています。
 また、色設定とはちょっと違う機能として、ビデオカードが持つビデオオーバーレイ機能を用いて輝度差を作り、オーバーレイ元の画面表示を暗くした状態で、静止画や動画などのオーバーレイ表示領域のみを本来の輝度で上乗せする機能(前者は[DesktopViewer]、後者は[WindowMovie])もあります。
 正しく動作している限りはとても便利なソフトなのですが、当家環境(WinXP/nForce2-GT)ではあまりうまく動作しません。一度モニタ側のUSB/HIDデバイスを無効化して再認識させると一時は正しく動作するのですが、再起動などの操作を行うともう切り替えが効かなくなり、ソフトウエアメニューも「設定・終了」のみになる始末。
 ただし、同じPCに別途ビデオカード(ATI/Radeon8500)を刺すと「何事もなかったかの様に、快適に」動作する上に、現状ままでもたまに何事もなかったかの様に動作したりするので、マザーボード側(かそのドライバ)が悪さをしている可能性もあります。

・グレイスケールなどの表示性能は「実用上支障ないレベル」
 1677万色(各色8bit)パネルを階調拡張で擬似的に各色10bit化し、モニタで設定したガンマ値に従い必要な各色256階調を拾い出して表示に使用するという手法を用いているだけあって、通常使用範囲では階調飛びがほとんど無い自然なグラデーションが再現できます。
 プロ用のColorEdgeではこの階調設定を1段階ごとに計測装置を使って調整するというとんでもないことをしている様ですが、そこまで細かな管理は行っていないL567であっても、一般に使う範囲であれば階調特性に不自然さを感じる事はほぼ無いであろう仕上がりです。
 既にL567をお持ちの方であれば、 GIMP for Win や Adobe Photoshop などを用いて「シアン(#00ffff)→黒(#000000)」や「マゼンタ(#ff00ff)→黒(#000000)」のグラデーションを作ってみることにより、グラデーションの再現性を確認できるはずです。
 また、作成したグラデーションをJPEGファイル(品質1.00)にて保存しこのファイルを開き直すことにより、JPEG圧縮により偽色が発生している様子についてもはっきりと観察できます。

・デジタル接続はやっぱり綺麗
 ノートパソコンなどの様に元からデジタル接続を行っている機種と同じ程度にくっきりはっきりとした画質が得られます(推奨解像度時)。
 また、推奨解像度未満で表示させた場合のデジタルスムージング処理については5段階([5]未処理→[3]適切→[1]過剰)あり、標準状態のままでちょうど良い具合に表示されます。
 アナログ接続でも色調再現についてはほぼ問題ないですが、精細さやより正確な色調を求めるならばデジタル接続の方が断然有利です。
 アナログ接続の場合、たまにクロックやフェーズが1段階だけずれて設定されてしまう事があるようです…十分高精度ではありますが、それでもデジタル接続により簡単に実現する「無調整状態」との差は大きく感じます。

・スタンドを動かすには「イメージ」が必要。
 このスタンドは、ロック機能などが全くない状態で「上下動作」「チルト動作」「アークスイングによる円弧動作」の3つを連続的に行うことが出来ます。
 一度慣れてしまえば2つ以上の動作を同時に行って素早く目的位置へ移動させたり、特定動作だけを行ったりすることが出来るのですが、慣れないうちはアークスイングをするつもりが上下動作やチルト動作になってしまう場合が多く、直感的に動かすにはちょっとしたこつと慣れが必要です。
 ただし、この調整感は「一度慣れてしまうと病み付きになる」ほど良くできています。今までのスタンドと違い、「ここにパネルを置きたいんだ!」と思った位置に比較的近いところへ移動できる様になっていて、あまりストレスを感じず使える点が魅力です。
 特に、室内照明の写り込みが気になる時には、その回避方法が一つだけではなく複数とれるという点が便利に感じました。
 出来ればパン動作が出来るとさらに良かったのかも…と感じる時もありますが、試しに回転台に乗せてみたところ、あからさまに他の動作に支障をきたしていました…パン動作に関しては「持ち上げて動かす」しかないようです。
 また、パネルをめいいっぱい手前に持ってきて倒していった場合、そこからパネルを再び動かそうとする時にはスタンド単独ではきちんとパネルを支え切れていない感じがしました。
 パネルを動かそうとしなければ全く問題はないのですが、この状態からパネルを動かす場合には、スタンド最後部が浮いてしまう可能性があるので、片手でスタンド最後部に手を添えて、もう片方の手でパネル位置を操作するか、最後部をCクランプなどで固定してしまう方が良いかもしれません。

・アナログ接続用ケーブルには負担が掛かりそうな予感
 本機付属のケーブルは、アナログ接続用ケーブルを除くすべてが比較的小径となっていますが、アナログ接続用ケーブルだけは品質確保の為か比較的大口径のケーブルを使っていて、頻繁に首振りや回転動作を行った場合の配線に掛かるストレスが大きそうな感じです。
 また、スタンドにケーブルを束ねておく機構が無かったり、ケーブルが下向きに出ていたりするなど「アークスイングに向かない筐体」ではないかと感じさせる部分もあり、その点は大変気になりました。
 パネルをかなり倒した状態で配線ストレスを避けるならば、縦画面表示として横に配線を逃がす方が安心できそうです。

 ・縦画面表示に必要なもの。
 AMD/Athron系で比較的多い「nVidia/nForce2」シリーズの「GT(グラフィクス統合タイプ)」型チップセットを搭載したマザーボードのオンボードVGAが、プライマリ/セカンダリの両モニタ出力ともに縦画面状態とビデオオーバーレイに対応しています(もちろん縦画面時でもビデオオーバーレイは有効)ので、この環境を導入している人であれば、簡単に縦画面表示を利用できます。
 また、(まだ確認はしていませんが)おそらくはnVidia/GeForce4シリーズであれば、同様に縦画面表示が可能かもしれません。
 それ以外の環境であれば、Pivot(R)Softwareを別途購入して縦画面表示を行うこととなりますが、こちらは操作が簡単な反面、ビデオオーバーレイには対応していない為、縦画面表示を行っている間は[DesktopViewer]や[WindowMovie]に対応できず、一般的な動画再生も行えず、縦画面時の描画速度も若干遅くなります。
 縦画面表示が可能なモニタを作っておきながらPivot(R)Softwareを添付しなかったのは、同ソフトが「ScreenManagerPro/LCDの一部機能を殺してしまう」点が問題となったからだと思われます。

・今後に期待
 a)アークスイング操作時(特に手前にパネルが寄っている時)の安定性向上
 b)背面ケーブルを安心して誘導出来る機構が欲しい
 c)個人的には上下反転(合計270度)まで回って欲しかったです…

・こんな人にぜひ。
 1)GeForceシリーズのビデオカード(もしくはnForce2-GTマザーボード)を利用しているか、すぐに購入する予定がある場合など、縦画面環境へすぐに移行できる状態の人。
 2)撮影した写真などを編集する為に「比較的発色が正しい」液晶を探している人。
 3)パン振り以外は自由に動く、そんなスタンドに心惹かれてしまった人。
 4)表計算や文書作成、Web閲覧などの画面全体を見渡す事が多い人。
 5)長時間表示画面と向き合うことが多く、肩こりなどに困っている人。

・こんな人には「絶対に」お勧めできません(他社が得意とする分野です)。
 *)残像効果が特に気になる「3Dゲーム」が最優先の人。
 *)とにかく明るく派手な「液晶テレビ」的な表示ができるものを探している人
 *)ただひたすらに安い液晶モニタを探している人。


・個人的な満足度…
 私は付属品の[Adobe Photoshop Album]を利用する気がないのでこれは無視するとしても、「自由度の高いスタンドが付属」「デジタル・アナログ接続用ケーブル両方が標準添付」「良いパネルを使っている」「パネルを最大限に生かす良い回路を積んでいる」という点だけでも「高価である理由が十分に納得できる」と考えています。
 モニタはある程度長く使う品物ですから、今はやはり「3年たってもがっかりしない」くらいの物を購入した方が良い様な気がしましたので、色々悩んだ末に私はL567を購入しました。
 色々と文句を書いてはいますが、現状ではとりあえず満足しています。

 というか、他の(他社の)製品を購入していたら、下手をすればレビューを書く気すら起きなかったかもしれません…
 重箱の隅をつつく様なレビューを書きたくなるくらいに良い製品を作ってくれたナナオに感謝!

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