タグ--ロボット検索への挑戦

文: Daniel Terdiman (News.com)
翻訳校正:坂和敏(編集部)
2006年01月10日 09時00分

ウェブ検索に人間の視点を取り入れる

 最近、テクノロジー関連のイベント--特にデジタルエリートの比率が高いイベントに参加した人は、そのイベントの「Flickrタグ」を告知している人の姿を見たことがあるかもしれない。

 Flickrタグ--外国語のように聞こえるかもしれないが、ある意味でそれは正しい。Flickrは人気の高い写真共有サービスだ。Flickrのサイトにアクセスすると、登録ユーザーが投稿した5000万枚を超える写真のほとんどを見ることができる。ユーザーは自分が投稿した写真はもちろんのこと、他のユーザーが投稿した写真の大半にもキーワードを付けることができる。検索可能なこのキーワードは「タグ」と呼ばれ、Flickrをはじめとする急成長中のオンラインサービスに共通する大きな特徴となっている。

 「Flickrタグがうまくいったのは、それが基本的に人と人とを結びつけるものだからだ」とFlickrの共同創設者Stewart Butterfieldは言う。「あらかじめタグを決めておけば、多くの人の手で、大量の写真を簡単にまとめていくことができる。今ではさまざまなイベントで、『このイベントのタグはbaychi05です』といった告知が行われるようになっている」(Butterfield)

タグ
「タギング(タグを付けること)」とは、ウェブ上の情報を人間の視点でインデックス化することであり、理論上はコンテンツをより直感的に検索・共有できるようになる。タグシステムは「folksonomy」(人々を意味する「folk」と、分類学を意味する「taxonomy」を組み合わせた造語)や「共有ブックマーク」と呼ばれることもある。

 タグの考え方はきわめて単純なものかもしれないが、それもたらす影響は甚大かつ複雑だ。過去十数年間、インターネット上の情報は主に検索エンジンのアルゴリズムによって分類ないし見つけられてきた。これは骨の折れる作業であるだけでなく、精度も非常に低かった。タグの人気が急速に高まっているのは、タグを利用すれば、何の脈略もなく散らばっている大量のデータを、直感的に体系づけることができるからだ。

 「folksonomy(人々による分類)」とも呼ばれるタグシステムは、通常はサイトの所有者ではなく、ユーザーによって作成される。タグの仕組みを導入することによって、多くのオンラインサービスがアクセス性と利便性を飛躍的に高めることに成功した。タグはブログ、共有ブックマーク、写真、書籍といったリソースに社会的な文脈を与える。

 タグは実用的なだけでなく、概念としても優れていると指摘する人もいる。タグの概念は、インターネットの黎明期をほうふつとさせる社会的な思想を内包しているからだ。タグユーザーの多くは、タグが個人に力を与えるシステムである点を高く評価している。長年の間、ユーザーはサイト管理者が決めた分類に従って、サイトを見て回らなければならなかった。しかしタグの登場によって、そうした状況は飛躍的に改善されつつある。

 「この数十年は、トップダウンのメタデータを利用したプログラムが主流だった。ユーザーはサイトの構造を理解し、それに従ってデータを分類しなければならなかった。しかし、これは人間が得意とすることではない」と、技術カルチャーに特化したブログ「BoingBoing」の編集者で、電子フロンティア財団(EFF:Electronic Frontier Foundation)の欧州担当コーディネータを務めるCory Doctorowは言う。「folksonomyの優れた点は、ユーザーが自分の利益のために、自発的に情報を管理することによって、付随的または偶発的に正の外部性(positive externalities)がもたらされるようにしたことだ」

 タグは多様なデータベースやインターネット上の情報をインデックス化し、検索可能にするためのツールとして利用されていることから、いずれはこれがGoogleのような検索エンジンのライバルになる可能性があると見る人もいる。

 検索エンジンに関する著作を持つBrad Hillは、現在のタグは協調的なソーシャルツールであって、汎用的な検索には適していないとしつつ、タグが社会に深く組み込まれるようになれば、いずれは多くの人がまずは「タグクラウド」(多様な領域をカバーしたカテゴリの集合体)で検索するようになる可能性もあると述べている。

 「タグの利用者がクリティカルマスに達すれば、巨大なタグクラウドを検索することが、検索エンジンを利用するのと同じくらい合理的な選択となるかもしれない。これは興味をそそられるアイディアだが、実現するのは当分先のことだろう」(Hill)

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