最終更新時刻:2008年10月8日(水) 12時27分

ググらずSNるようになったSFC生

松村太郎

2004/07/22 10:01  

 2004年春学期がそろそろ終わろうとしているが、今学期はSFCでソーシャルネットワーキングサービスが広まった学期だった。新しいツールにがっついて発掘していく人たち、そういう人に話を聞いて面白がって使い始める人たちから端を発して、一気に広がっていく。そのような新しいツールの波を熱狂的に受け入れていく人がいる反面、保守的に構える学生もいる。

 SFCではコンピュータやネットワークを介したコミュニケーションが生活必需のツールになっている事はこれまでも書いてきた。新しいツールを導入する場合、今までの生活スタイルを少し変える必要が出てくる。 生活に密着しているからこそ変化を望まないという学生も少なからずいるため、「新しいコミュニケーションへの熱狂」だけでは、保守的な人たちが使い始めるきっかけとしては足りない。

 SFCにおけるソーシャルネットワーキングの普及は、そんな保守的な人たちが使い始めるだけの理由があったと見る事ができる。一方で、時期的な問題もあったかもしれない。新学期が始まる4月初旬でも期末試験やレポートに追われる7月でもなく、学生にとってあまり忙しい時期ではない4月の終わりから5月にかけて起こった。そのため学生が少し余裕がある時期に、新しいツールを試してみようという事でこぞって使い始めたからこそ、上手くいったという点もある。何か学校の中で仕掛ける時は無視できない時間感覚だ。

 SFCの学生でも複数のソーシャルネットワーキングサービスを利用している人がほとんどだ。多くの学生がGREEとmixiを利用している。細かい違いはあるが、基本的な機能はほぼ同等だ。大きな違いは画面の色。GREEの白を基調としたシンプルな画面構成に対して、mixiはオレンジでカワイさがあるインターフェイスになっている。ある学生は「GREEは蓄積型、mixiは構築型として使っている」と話す。

 GREEは今までの関係や新たに出来た友人を記述しながら人間関係を蓄積していく使い方、一方のmixiではもう少しオープンに人間関係をmixi上で作っていくような使い方に、自然と使い分けているそうだ。画面の色や細かい機能の違いから、そのサービス上で自分がどう振る舞ったらいいかということを、サービス設計者の意図と合っているか否かに関わらず、自分でかぎわけながら使っているSFCの学生の姿が垣間見られる。

 SFCには人にあった時にすぐ「ググる」習慣があった。すなわちその人の本名をGoogleで検索するということだ。漢字、ローマ字、ニックネームなど、キーワードを変えながら何回か検索すると、その人が何となく分かってくる。検索結果としてまずは、その人のウェブサイトやゼミのプロフィールページ、スタッフとして関わっているプロジェクトのウェブサイトが出てくる。さらにSFCの学生の場合は過去の授業やゼミのレポート、発表資料なんかが出てきたりもする。何をやっている人か、どのコミュニティに属しているか、といったいろいろな情報を総合すると、その人が何をやっていそうな人かが何となく分かってくる。

 これらの情報は半分以上は過去の活動の残骸のような情報だ。情報として古いもの、変わってしまったものも含めてGoogleの検索結果に出てきて、その人を判断する材料になっている。本人もGoogleで人名検索をして残骸から人を判断しているが、自分も同様に残骸から判断されていることについて、何も考えていないようだ。これがソーシャルネットワークサービスを使い始めた事で、変化が起きつつある。

 ソーシャルネットワーキングがキャンパスで普及し始めると、今度はGoogleではなくてソーシャルネットワーキングの上で人名検索をするようになってくる。ソーシャルネットワーキングでは、その人の紹介としてプロフィールや趣味や所属、そして友人関係と言った欄が用意されていて、一覧する時に一つのフォーマット上で見る事が出来る。blogと連携しているサービスも多いが、これはいわば自由記述欄だ。今までの断片や残骸の情報ではなく、最新のその人の紹介を素早く見られるため、人名で「ググる」よりも効率的にその人を知る事が出来るようになった。

 検索される側にも変化がある。今までの残骸情報は、自分のウェブサイトの中の情報なら自由に削除や変更が出来るが、ゼミやプロジェクト、授業のサイトなどにある情報は、いちいちウェブ管理者に連絡しなければ変更が利かない。これに対してソーシャルネットワーキングの上では、自分についての情報をどう魅せるかアレンジする事が出来る。

 この結果、学生達は自分に関するどんな情報を置いておくか、という点を気にするようになってきた。さすがに友人関係に手を入れようという人がいるかどうかは分からないけれど、友人関係も含めてきちんと自分を知ってもらうよう務めるようになる。学生達がソーシャルネットワーキングによって、セルフプロデュースをし始めたと見る事が出来る。

 以前の記事で紹介した、ソーシャルネットワーキングで名簿を作ったゼミ。このゼミでも次の9月から始まる新学期に向けて、ゼミ生の募集が始まっている。ここでもソーシャルネットワーキングの効果が出てきている。まずゼミの見学をしたいという学生が増えた事。今までは学校のオフィシャルサイトにあるゼミ紹介のページとゼミのオフィシャルサイトが主な情報源だったが、ソーシャルネットワーキングでメンバーページを作った事で、どんな人が所属しているか、その所属している人がどんな人かが分かるようになった。

 見学を希望する学生も受け入れるスタッフになっている学生も、お互いのソーシャルネットワーキングのプロフィールやblogの記事一覧を見る。見学希望の学生は、そのゼミがどんな雰囲気なのか、自分が知っている人がいるか、といった情報を得ておこうと努めるし、ゼミのスタッフは入ろうとしている人が何をしたいのかを推し量る材料にしている。多くの場合ゼミに入る選考があるが、入ろうとする学生は選考の期間、頑張ってblogを書いたり自分のプロフィール画面を充実させるようにすると、ソーシャルネットワーキングが自己アピールのツールとして機能し始めるのではないか。

 さてこのゼミ内で起きている変化をもう一つ紹介する。ソーシャルネットワーキング上で一向に友人リストの紹介文を書いていないゼミの先生だが、オススメの書籍紹介を充実させるようになってきた。するとゼミ生がこぞって紹介されている本を読み始めたのだ。ゼミ生達に話を聞くと、研究を進めていくに当たって「先生の意図している事や思いが読めたような気がする」「オンラインストアのレビューより、先生の一言の方が重たい」と、なぜ先生がその本を薦めているかを感じ取って読んでいるという意見が多い。「先生の本棚から本を借りる感覚」とは上手く言い当てていると思う。

 また先生が研究関連の本に限らず紹介をしていると、別の感想を聞く事が出来る。先生が友人の本を紹介していて、それを読んだ学生は「先生と友人である、という経験を含んだオススメだから、その本からより深い感動が得られた」と熱く語っていた。半年ごとにゼミを変更できたり、2つのゼミを掛け持ちできたりする、学生の流動性が高いSFCにおいては、ソーシャルネットワーキングが先生と学生の深い関係をアシストする格好のツールとなっている。

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