検索精度を高めることに注力していた黎明期から、各種広告サービスを導入したビジネスモデルの確立へ──。検索業界を取り巻く状況が劇的な変化を遂げる中、検索サイトを運営する各社は今後の狙いをどこに定めているのか。連載1回目の今回は、GoogleやYahoo、MSNを中心に、検索サービス市場における変化と現状をまとめた。
インターネットにおける検索サービス市場の変化
検索サービスを提供するサイトは、1995年から1997年にかけて、米Yahoo、米Infoseek、米excite、米MSNなどが相次いでオープン、インターネットの入り口と称する「ポータルサイト」の基盤を固めた。検索エンジンそのものも、検索サービス開始当初の主流だった登録型のディレクトリ検索に加え、米AltaVista、米Inktomi、ノルウェーのFast Search & Transfer(FAST)などのロボット型を採用した検索エンジンが台頭、各検索サービスへと取り入れられていく。日本でも1997年、NTT-X(現 NTTレゾナント)が日本語のロボット型検索エンジンを利用した検索ポータルサイト「goo」を開始、大きな話題となった。
ポータルサイトの歴史は、インターネット業界において各社の生き残りを賭けたM&Aの歴史でもある。大規模なM&Aは1997年後半から始まり、2000年に至るまで数十件もの企業による買収/合併が繰り広げられた。
例えば、短期間でM&Aを繰り返した企業のひとつに米Lycosがある。同社は1998年2月、無料ホームページ型のコミュニティサイトである米Tripodを買収することで、インフォメーション系やナビゲーション系のサービスを得意とする他ポータルサイトを押さえ、コミュニティを中心とするサービスの強化へと転換した。続いて同年8月には、フリーメールやホームページ、ディレクトリサービスを提供するコミュニティサイト「WhoWhere」を買収。さらに10月、米Wired Digitalの買収を試み、コンテンツの充実を図る。しかし最終的には2000年5月、Lycosは125億ドルにてスペインの大手プロバイダであるTerra Networksに買収され、Terra Lycosと名称も変更した。こうした買収劇はLycosのみならず、YahooやExcite、AOL、MSNなどの大手ポータルサイトには付きものと言ってもいいだろう。
2000年、検索エンジンの勢力図に異変が起きる。1998年に設立された米Googleのサーチエンジンである「Google」の人気が爆発的に広まったのだ。シンプルな検索画面と検索速度の速さ、関連キーワードに則した検索結果が好評のGoogleが台頭するにつれ、ほとんどの大手検索サービスサイトに公式検索エンジンとして次々と採用され始めた。
しかし、当初Googleを採用していたYahooは、今年になってGoogleのサーチエンジンの利用を停止している。いずれの企業も、独自のサーチエンジン開発/採用へと乗り出したためだ。その背景にある事柄を、次に紹介していこう。
Googleの独走に待ったをかけるYahoo、MSN
2004年3月、インターネットでの検索エンジン利用の断片調査では、米国におけるGoogleサイトのクリック数が過去最高を記録したと、市場調査会社のWebSideStoryが発表した。獲得した数字は、調査したクリック数全体の41%を占めていたという。Yahooは2位で27%、MSNは3位で20%に届かなかった。
注目は、YahooとGoogleにおける数字の差が、昨年よりも広がっていることだ。昨年のGoogleは36%、Yahooは31%。両者の間には5%しかなかった差が今年は14%と、約3倍もの水をあけられてしまっている。
これが3年前になると、状況はまったくの反対だった。Yahooでのクリック数は全体の37%で、MSNも15%のクリック数を獲得。Googleはわずか12%にしか及ばなかったのだ。
こうした「Google一人勝ち」とも言える状態に、周囲は驚異と焦りを感じている。YahooがGoogleの検索エンジン採用を取りやめ、自社エンジン開発と採用に踏み切ったのは、いまの状況を打破するためだ。MSNは目下、自社アルゴリズムを使ったサーチエンジンを開発中。Yahooは次世代の有料検索サービスを見据え、Inktomiを買収することで高精度のエンジン開発へと力を入れた。
このYahoo Search Technology(YST)と呼ばれる新しい検索エンジンは、米YahooのYahoo! Searchにて今年2月より採用されている。日本でも、Yahoo! JAPANが4月から新たにサービスを開始した動画、画像、音声検索に対応したマルチメディア・サーチ機能に導入された。動画と音声に関しては、Googleでも取り扱っていない。
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