リスティング広告の登場
ほんの数年でGoogleがYahooやMSNを押さえ、形勢逆転に至った原因は何か。そのひとつに、クリック課金型(Pay-Per-Click)によるキーワード広告の発展が挙げられるだろう。
キーワード広告とは、各検索エンジンで検索窓にユーザーが入力した単語に応じて露出する広告のことを指す。例えば「パソコン」と検索窓に入力すれば、検索結果にパソコンを扱うショップのバナーや文字広告が掲載される、といった具合だ。広告主にしてみれば、自社製品に興味を持つ消費者にアピールできるため、キーワード購入によるメリットがわかりやすい。
中でも、ユーザーがクリックした時だけ課金される(Cost-Per-Click)キーワード広告は「リスティング広告」と呼ばれ、米Overtureの検索マーケティングサービス「Sponsered Search」が発端となって普及した。これは検索サービスサイトだけでなく、提携先の有名ポータルサイトの結果結果ページにも広告主の関連サイトが表示でき、サイト集客率や収益率を向上させられる。同社は2002年7月より日本での営業を開始している。
米Interactive Advertising Bureau(IAB)の発表によれば2003年度の米国インターネット広告市場は前年の60億1000万ドルから72億7000万ドルまで増加したが、この中に占めるリスティング広告のシェアは前年の15%から35%までに急拡大している。
Googleも、2002年2月に「AdWords」というリスティング広告を開始(日本では2002年9月から開始)。2003年8月には自社以外のサイトにAdWordsと同様の広告を配信する「AdSense」を開始している(日本では2004年1月から開始)。先日発表されたGoogleのIPO資料によるとGoogleの2003年度の売り上げ9億6190万ドルのうち95%がこれらの広告収入によるものだという。
これに対してYahooは2003年7月、当時MSNと関係が深かったOvertureを買収。有料登録サービス「Site Match」サービスを開始した。広告主は料金を払うことで定期的にYahooへウェブページをフィードできるようになり、その先のデータベースで即座にインデックス付けされるようになる。こういった新サービスの提供によりYahooはGoogle勢力の拡大を阻止し、奪われた検索サービスユーザーを取り戻す構えだ。
OvertureとGoogleのリスティング広告サービスは、広告主が入札によりキーワードに対する広告料を決めるシステムだ。入札価格がキーワード検索結果に表示されるリンクの順番に影響する。リスティング広告サービスを提供するもう1社、Looksmartは、CPC単価が均一の「looklistings」サービスを提供していたが、これはキーワードと検索アルゴリズムの適合性がそのまま広告掲載順位へ現れる結果となり効果を実感しにくい。そのためか、Overture/Googleと同じくキーワードへの入札方式を採用した「sponsored listings」サービスを開始した。広告主にわかりやすい、効果的なキーワード広告の掲載方法が好まれているということだろう。
検索以外の領域に拡大するGoogle
Googleが大幅にシェアを伸ばした理由としてもうひとつ、「単なるサーチエンジンサイトにとどまらないサービスの多様化」も考えられる。登場した当初は「精度の高いキーワード検索」のみが売りだったGoogleも、イメージやディレクトリといった検索機能を追加。さらに、ニュース集計/ショッピング比較サービスや、ソーシャルネットワークサイト「orkut」、容量1GBを誇る無料メールサービス「Gmail」の開始、サーチボックスから路線/辞書/株価情報などへのリンクを表示するサービス──など、より使いやすい検索や、検索以外のサービスを続々開始、ユーザーの取り込みに成功している。Blogサービス「Blogger」を提供するソフトウェア会社、Pyra Labsを買収したことにより、Blog分野への参入も視野に入れていると見られる。
つまり、最初は単なるシンプルなサーチエンジンという位置づけだったのが、徐々に独自サービスを提供するポータル化への道を歩んでいるのだ。
こうなると、既にポータルサイトとして成功しているYahooやMSNも安穏としていられない。YahooはGoogleの動きを受け、ソーシャルネットワーキングサービスへの参入や音楽ダウンロードサービスの検討を表明、現在提供している有料電子メールサービスの容量増強にも踏み切った。MSNも、ニュース記事、株価/商品検索機能、キーワードナビ機能を搭載した新しいMSNツールバーを公開するなど、毛検索エンジンサービスの開発競争はヒートアップしている。
現在、各社が力を入れているのは、検索のパーソナライズだ。ユーザーの検索結果を解析することで、同じキーワードを入れた際に現れる結果を最適な状態にする。例えば、検索キーワードに「アップル」と入力した結果、コンピュータ関連事項をよく検索している人ならば「アップルコンピュータ」が最上位に表示されるようになる。現在Googleは、パーソナライズド・サーチエンジンのテストバージョンをテスト中だ。
また、同じく注目を浴びているのがローカルサーチ。ユーザーが指定する地域に絞った情報検索のことで、地元の公園やカフェ、ホットスポットの検索などにも便利だ。米国のGoogleでは地域検索サービス「Google Local」を、Yahooは地図情報と連動してローカルコンテンツを検索できる「Smart View」サービスを開始した。いずれにしても、検索結果をユーザーのニーズに合わせることで検索サイトのリピーターが増え、キーワード広告もさらに効果的となる。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス