「Wikipediaの世界」では、商業化について、そしてボランティアによって執筆、編集されているオンライン百科事典のウェブサイトから利益を上げる事業が生まれることについて議論が起ころうとしているようだ。大手の出版社が史上初めて同サイトの人気の高い記事を印刷して販売する計画を立てており、多くの人はコンテンツの執筆者は本来もらうべき印税をだまし取られているのではないかといぶかっている。
ドイツの大手出版社Bertelsmannは、「The One-Volume Wikipedia Encyclopedia」という名称の書籍を印刷する計画を発表した。この書籍は9月に19.95ユーロ(約32ドル)で販売される。この本にはその年に最も人気の高かった記事の一部が収録される予定である。Bertelsmannで辞書類を担当する編集者のVarnhorn博士は、最近のNY Timesの記事で「われわれはそれをオンライン百科事典の年鑑と考えている」と述べている。この声明は、この本が毎年印刷される多くの年鑑の1年目の版になる可能性を示している。
これは合法的なのか。その通り。Wikipediaサイトの素材はWikipediaを出典として表示する限りは無償で使用できるようだ。さらに、Bertelsmannは1部売れるごとに財団に1ユーロ支払う予定だ。
しかし、これによって、自主的に自分の時間を割いてオンライン資料の作成に貢献し、その作業を高貴な取り組みであると信じていた無数の執筆者はどうなるのか。Now SourcingのMark O'Neil氏は、これによって執筆者たちがまさにどうなるのかを知っていると思っている。つまり執筆者たちは利用されているのだ。O'Neil氏は次のように書いている。
「Wikipediaは彼らを大々的に利用している。いや、回りくどい言い方はやめて現実に即して述べよう。Wikipediaは彼らをだましているのだ。(中略)Wikipediaが自分たちの成果を商用の印刷事業に使用すると知っていたら、彼らはこうした記事を執筆することに二の足を踏んだに違いないとわたしは確信する。少なくとも彼らは契約書と、後から金銭的な補償を受けることを要求していただろう」
O'Neil氏の投稿にコメントを付けた何人かの人は異議を唱えている。その1人は、搾取など全くないと指摘している。BertelsmannはGNU-FDLライセンスの下で合法的にコンテンツを販売するのでありこれは全く問題ない、と。
しかし、正直に考えてみよう。執筆者たちが、自分たちの書いたコンテンツが、「情報を無償で提供する」という運動に貢献するのではなくて、商業出版社の金もうけを助けることになると知っていたなら、それでも、自分の多くの時間を無償で提供しただろうか。
世界最大の孤児の収容施設である「SOS Children’s Village」が「Wikipedia CD」をアフリカに配布しているように、Wikipediaが発展途上世界に配布されるのは結構なことだが、誰かが金もうけをするのを無償で手伝うとしたら、これはまた別の問題である。
しかし、Wikimedia GermanyのエグゼクティブディレクターであるArne Klempert氏にとっては「金が問題なのではなく、これは知識が持つ力を示す非常に良い例なのである」。それは真実かもしれないが、Bertelsmannは銀行に「知識」を預けるわけではないだろう。
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