新たなブロガースキャンダルが起ころうとしているのだろうか。CenterNetworksのAllen Sternはそう考えているようだ。Allenは最近登場したビデオブログのWebb Alert(この記事を投稿した8月3日に、Read/WriteWebに触れている)の問題を取り上げ、このブログが広告ネットワークであるFederated Media(このブログをホストし、このサイトの広告を販売している。以下、FM)との繋がりを開示しておらず、この試み全体が、FMのクライアントへのトラフィックを押し上げるための凝った仕組みなのではないかと疑っている(そして、FMのクライアントが、そのサイトには不釣り合いなリンクを得たことに対する見返りとして、番組を持ち上げているとしている)。
正直なところ、これに何らかの陰謀があるとは思わないが、Allenの記事はより大きな主題に光を投げかけている。ジャーナリズムの情報開示に関する慣習という主題だ。ブログは比較的にまだ幼年期にあり、ブロガーは正統性と読者や他形態メディアの制作者からの敬意を得ようとする努力のなかで、いつ、どのように潜在的な利害の対立に関する情報開示を行えばいいかを突き止めようと格闘している。
情報開示は難しい問題で、伝統的なジャーナリズムの世界でさえ、この慣習はまだ明確に定義されていない。一般的な考え方は、書き手とその記事の対象との間にある潜在的な利害対立と見られるものについては、すべて読者に開示されるべきだというものだ。例えば、もしわたしが記事を書こうとしている新興企業に投資していたら、あるいは最高経営責任者(CEO)がわたしの親友であれば、わたしはその事実を開示するべきだ。しかし、物事はいつもそう簡単なわけでも明確なわけでもない。
ジャーナリズムにおける情報開示については、National Public Radio(NPR)のオンブズマンがよく話題にしている。2005年の11月に、彼は「ジャーナリストは情報源との個人的、あるいは職業的な繋がりについて開示する義務を負うか」と問いかける記事を公開している。これは、いつ情報開示を行うかはそれほど明らかではないということを示している。NPRのオンブズマンは、ラジオのあるDJがSlate誌のコラムニストについて情報源として触れた際、そのコラムニストが彼女の夫であることを開示しなかったというエピソードについて述べている。
彼女はその事実を開示するべきだったのだろうか。オンブズマンは「この場合、情報の開示は少ないよりも多い方がよい。他の人物を引き合いに出していれば、この番組は家族をえこひいきしているという印象を与えることを避けられただろう」と述べ、情報を開示するべきだったと結論づけている。しかし、そのコラムニストが家族の一員ではなく、昔の同僚だったらどうだろうか?あるいはそのDJが過去にインタビューした人物だったら?あるいは、コラムニストとDJが過去に恋人関係にあったが、今はそうでなかったら?彼女はジャーナリズムの完全性のために、性生活に関する情報を放送しなくてはならないのだろうか。このように、問題が難しい場合も多く、明らかに個人的な問題である場合もある。
わたしは、ブロガーの情報開示についての捉え方は行き過ぎていると思うことがある。特に、ブロガーはほぼ必ず、広告を提供している企業について書くときには広告の関係を開示しなければならないと思っているようだ(それなのに、多くのブロガーは特にそれらの広告主に感謝し、広告主を賞賛する投稿を行っている)。Read/WriteWebでは広告主との関係を開示しているが、わたしが(現在まで)Federated Mediaが広告の一部を扱っていることを開示していなかったことに、読者は気づかなかっただろう。これは、わたし個人はこれを開示することを馬鹿げていると思っているからだ。一部の人は確かに、広告主に不利なことを書き、恩を仇で返すことを矛盾だと感じるだろう。しかし、ジャーナリズム(多くのブロガーはそのために努力しているということを、ここでは認めよう)は、長い間広告によって支えられてきたメディアであり、広告主と書き手の間の関係は読者には明らかだ。
これに対して、例えばNBC Nightly NewsのBrian Williams氏が、Ford Motor CompanyがNBCのネットワーク(これにはUSA、Bravo、CNBC、MSNBCなどが含まれる)の広告主であることに番組の最後で触れてFordに関する物語を終わるようなことは決してない。New York Timesは、レビューしている映画が文化面で広告を出していることをわざわざ開示したりはしない。「ボーン・アルティメイタム」のレビューは、その映画の広告のすぐ隣に掲載されている。このレビューは好意的なものであり、広告主との関係に関する情報開示もないが、同紙が広告収入のためにサクラ行為をしているなどと考える人はいないだろう。
さらに、先ほど挙げたNBCの例からもわかるように、今日のメディアコングロマリットの状況はジャーナリストにとっては難しい状況を生み出しうる。Slate誌の7月11日の記事では、Jack Shafer氏が、当時間近に迫っていたRupert Muroch氏によるDow Jonesの買収に関して、News Corp.がWall Street Journalを掌握した際の同紙の完全な情報開示がどんなものになるかを書いている。同氏が言うように、それは「ほとんどマンハッタンの電話帳と同じくらいの長さになる」
「Wall Street Journalは現在、CNBCの番組を引用したりDow Jonesと競合関係にある出版物や事業に言及したりする際に、毎回情報開示をすることはしていない。したがって、News Corp.に所有されたWall Street Journalも、Facebookや、Paramount Picturesの映画や、Random Houseの書籍や、NBCの番組やNew York Daily News、LexisNexis、ESPN、Comcast、Dish Networkやその他何千ものNews Corp.と直接の競合関係にある企業に触れる度に、毎回親会社との関係を開示しなければならないという明確な理由はない。
しかし常識は、News Corp.の競合相手に関する本格的なニュース記事を書くときには、何らかの添え書きが必要だと告げている。わたしの大まかな見積もりでは、Wall Street Journalが取り上げる価値のあるNews Corp.の競合他社に関するニュースは、毎日1ダース以上現れる」
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス