10月27日から4日間、ロサンゼルス近郊サンタモニカで開催されたデジタルコンテンツに関するイベント「Digital Hollywood Fall 2008」は、テレビ局や映画会社、インターネット企業などの関係者が300人近く参加した。オールドメディアがテクノロジーをどのようにとらえているのかがよくわかる点で興味深いイベントだ。その模様から、米国のメディアコンテンツビジネスの方向性が見えてきた。
今回注目を集めていたのが、2008年3月にNB UniversalとNews Corp.が始めた動画配信サービス「Hulu」である。今回のDigital Hollywoodの議論から、Huluの成功には、既存マスメディアの成功要素が全て含まれていることが浮き彫りになった。
米調査会社ComScoreによると、Huluはサービス開始4カ月で動画視聴数が1億2000万回、動画サイトの中で全米で8番目に視聴数が多いサービスとなっている。Hulu広告営業部門責任者のジャン=ポール・コラノ氏は、「成功の一番重要な点は、プレミアムコンテンツを無料で提供したことだ。ある調査だと、コンテンツにお金を払ってもいいという人は全体の2%しかいなかった」と、無料広告モデルへの自信を覗かせる。
Huluの広告枠は、プリロール型30秒の1本のみ。このシンプルさが、マスメディアに出稿していた大手クライアントを引き寄せる。さらに、「MySpace、Yahoo、TVGuide.comなどに動画を配信」(コラノ氏)することで、リーチ数を増やしている。ネットワーク局を増やすことでリーチ数を増やしたテレビ局と同じ戦略だ。
しかし、インターネットの動画広告市場には、マス広告の重要な要素である同時性がないとの指摘もある。動画共有サービスを運営するMetacafeのCEO、エリク・ハッチェンバーグ氏は、「クライアントは、期間とリーチ数を指定して出稿する。タイムシフトで視聴時間がバラバラなインターネット動画配信市場は、まだボリュームが少ない」と視聴行動とビジネスモデルのずれを課題として指摘した。
コラノ氏は、「同時性については、スポーツのライブストリーミングに進出して解決したい。HuluのCPM(広告単価)はテレビの2倍で、ブランド想起度などの広告効果は3倍、というデータがある」と広告媒体としての価値をアピールした。
Huluは、「DVR(デジタルビデオレコーダー)を持っていない人向けの見逃し視聴サービス」(コラノ氏)と位置づけている。サラ・ペリン副大統領候補のコメディで話題になったサタデー・ナイト・ライブ映像は、Huluでしか見られないため、アクセスが増加したという。
こうしてみると、Huluの成功の要因は、ユーザーに革新的なサービスを提供しつつ、ビジネスモデルをテレビ局モデルの進化した範囲にとどめている点にあるといえる。
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