Google傘下のYouTubeは米国時間3月12日、APIの拡張を発表した。これは、同社の経営陣が2006年に16億ドルという高額でGoogleに身売りすることに同意して以来の、最高に気の利いた展開だ。
APIの拡張によって、開発者たちはYouTubeのサービスに今までよりも直接的にアクセスできるようになるほか、従来のYouTubeのインターフェースやブランディングに依存しない「クロムレス(chromeless)」なプレーヤーを作成できるようになる。
大げさに騒ぎ立てるつもりはないが、これは重要な出来事だ。APIの拡張は、動画共有サイトとしてYouTubeを後押しする代わりに、YouTubeを動画サービスへと変貌させるための基礎を築くことになる。計画どおりに進めば、YouTubeのインフラを利用した動画関連サービスが大量に出回り始めるだろう。そして、YouTubeの親会社であるGoogleは、世界中の多数の動画を手中に収めることになる(それが何を意味するか、インデックス化や収益の可能性の点で考えてみるといい)。
技術プラットフォームに生まれ変わろうとしているのはYouTubeだけではない。Micro Persuasionというブログを執筆しているSteve Rubel氏は、この件について次のような卓見を示している。
大手ウェブ関連企業はすべて、やがて来る動きを見据えている。賢明にもこういった企業は、単なる巨大サイトにとどまるのではなく、APIを開発して簡単に利用できるサービスプラットフォームへ転身しようとしている。YouTubeも今日の発表で、そうした動きに新しく加わったにすぎない。Amazon.comにはオンラインストレージサービスの「S3」があり、Googleには「OpenSocial」と膨大なAPIライブラリがある。Microsoftも同様だ。Facebookは、アプリケーションを外部でも開発できるようにした。Twitterは、そもそもAPIありきで、(その結果としての)ビジネスモデルは二の次だ。そして最後に、ウィジェットが急増している状況は、どこにでも持って行ける小さなコンテンツの将来性を示している。
また、Silicon Alley InsiderのDan Frommer氏は、API拡張の意味を次のように的確にとらえている。
YouTubeの新サービスを自分のサイトで利用すると、訪問者はそのサイトにとどまったまま、直接YouTubeに動画を投稿できるようになる。サイトのページビューや注目度はそのままで、動画のホスティング料金を支払う必要もない。一方でGoogleは、おそらくそういった外部サイトのコンテンツに配信する広告枠を販売するのだろう(今日の発表では、広告の売上配分については何も触れられていなかったため、無料サービスと引き換えに広告売上のすべてをGoogleが手にすると思われる)。
では、こういったYouTubeの動きにとって、障害となり得るものは何だろうか。足を引っ張りそうな問題は1つしか考えられない。それは、コンテンツ制作者らが著作権の問題に関して、今でもGoogleとYouTubeに対する反感を持ち、距離を置いていることだ。また、ViacomがGoogleとYouTubeを相手取って起こした10億ドルの損害賠償訴訟は、情報開示の段階にすら至っていないことを忘れてはならない。
経験に基づいた勘と言ってもいいが、この訴訟が進展して裁定が下される前に、Googleは和解に持ち込もうとすると思う。Microsoftは、独占禁止法違反に関して政府との和解が成立した後、長引いていた競合企業たちとの訴訟を解決するために大金を費やした。しかし、それはMicrosoftが事業を継続するのに役立つ出費だったのだ。
YouTubeは、社会現象としてこれからも大きくなる一方だ。Googleは、何が重要かをわきまえている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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