最終更新時刻:2008年10月10日(金) 23時50分

ついに日本の音楽業界に風穴を開けてくれたアップル

津田大介

2005/08/08 17:09  

「音楽配信の世界標準」が日本に上陸

 去る8月4日、ついに日本の音楽配信業界に、かねてより噂されていた「黒船」が来襲した。米Apple Computerによる「iTunes Music Store(iTMS)」が始まったのだ。

 iTMSは元々米国で2003年4月に始まった音楽配信サービス。大手レコード会社のほぼ全ての楽曲を網羅する豊富なカタログ、1曲99セント、1アルバム9.99ドルというわかりやすくリーズナブルな料金体系、「5台のパソコンまでコピー可能」「同社の携帯デジタル音楽プレイヤーであるiPodに無制限でコピー可能」「CD-Rへ無制限でコピー可能(同一のプレイリストを焼く場合、7回までという制限あり)」というユーザーにとって非常に使い勝手の良いDRM(デジタル著作権管理:音楽配信の場合、著作権保護機能やコピープロテクトという意味で使われることが多い)といった諸条件は非常に魅力的だった。これが奏功し、サービス当初から大ブレイク。開始からわずか2年強で5億曲を販売する音楽配信サービスの「デファクトスタンダード」となった。

スティーブ・ジョブズ氏
日本版iTMSの発表会にはApple CEOのスティーブ・ジョブズ氏が登場した

 「音楽配信の世界標準」であるiTMSが、世界第2位の音楽市場規模を誇る日本に満を持して上陸したわけだから、日本の音楽業界はもちろん、メディアの注目度も非常に高かった。8月4日の開始発表イベントではApple CEOのスティーブ・ジョブズ氏がわざわざ来日し、日本版iTMSの発表とデモを行う熱の入れよう。会場には明らかに音楽業界関係者とみられる人がたくさん見受けられ、iTMSの話に花を咲かせていた。

 発表された日本版iTMSの内容は非常にシンプル。一部では「日本の厳しい価格統制やDRM制限にiTMSも合わせざるを得ない」という悲観的な声も聞こえていたが、実際に蓋を開けてみると「カタログ数100万曲」「1曲150円もしくは1曲200円」「DRMは既に展開済みのiTMSとまったく同じ」というiTMSの「基本思想」を忠実に守った内容だった。

 カタログ数の点でいえば、9割程度が洋楽と見られ、日本のレコード会社の楽曲は既存の音楽配信と比べると少ない(開始時点で参加しているメジャーレコード会社は東芝EMI、ユニバーサル ミュージック、エイベックス ネットワーク、コロムビアミュージックエンタテインメント、プライエイド・レコーズ、ビーイング・ギザグループの6社。8月5日付けの日経産業新聞によれば、ビクターエンタテインメントもまもなく参加するようだ)。

 しかし、これは時間が解決する問題のようにも思える。レコード会社にとって今後iTMSが販売ルートとして「おいしい」存在になってくれば、現在不参加のレコード会社もiTMSに参加せざるを得ないからだ。洋楽に関しては現在でも十分なカタログを確保しているので、1992年の「洋楽CDの発売後1年レンタル禁止措置」以来冷え込んでいる日本の洋楽市場の活性化につながる可能性も高いのではないだろうか。

 価格に関しては、従来の日本の音楽配信の標準価格が1曲210円〜270円だったということを考えれば150円、もしくは200円という価格は十分安い。1曲150円という価格は、米国の99セント(8月8日現在で約111円)と比べれば高いように感じるが、英国のiTMSは1曲0.79ポンド(同約157円)。欧州各国のiTMSは0.99ユーロ(同約137円)なので、世界的に見ても十分許容範囲の価格だろう。元々210円で販売されていたJ-POPが200円になってもあまりインパクトはないが、中には270円で販売されていた楽曲が150円に値下げされたもの(東芝EMIの一部音源など)もあり、全体的には値頃感が感じられる価格設定になったと言えるのではないか。

 DRMを「世界共通」で通したことには正直なところ驚いた。というのも、数カ月前に何人かの音楽業界関係者から「全世界とまったく同じDRMでは日本のレコード会社は応じない」「Apple側もDRMを全世界共通にすることにこだわっていない」といったニュアンスの情報を聞いていたからだ。

 DRMを消費者にとって使いやすいものにするというのはiTMSの根幹ともいえる重要な部分。Appleも交渉の過程でこの部分を譲らないことが成功への道だという判断をしたのだろう。恐らくAppleと日本のレコード会社の間で価格も含めて相当に丁々発止のやり取りがあったと思われるが、最終的に全世界共通のDRM(Fairplay)でスタートしたのは純粋に喜ばしいことと言える。

 Fairplayの採用は、従来の日本の音楽配信で採用されていたDRM(買ったパソコン以外には楽曲をコピーできず、CD-Rへの転送は一部楽曲を除いて不可、携帯デジタル音楽プレイヤーへの転送も回数制限がある)が大幅に緩和されたということでもある。このことはユーザーにとって非常に大きな意味を持っている。

iTMSのデモ
ジョブズ氏は実際にiTMSで楽曲を購入するデモンストレーションを行った

特集

「ソーシャルメディアキャンペーン」の半数は失敗--アナリストが指摘する理由
多くの企業がソーシャルメディアキャンペーンを計画している。しかし、ガートナーによると、キャンペーンを始める理由が明確になっていなければ、失敗に終わることになるという。
人工知能による会話マーケティングの可能性
日産NOTEのウェブサイトがおもしろい。人工知能を用いて、ユーザーの質問にCMでおなじみのキャラが反応してくれる。裏側で実現しているのは、PtoPAが開発したソフトウェア「CAIWA」だ。同社はこれをウェブマーケティング分野でも活用しようとしている。

オピニオン

■インタビュー

Windows VistaにとってXPはライバルか?--マイクロソフト グローバルマーケティング担当Brad Brooks氏Windows VistaにとってXPはライバルか?--マイクロソフト グローバルマーケティング担当Brad Brooks氏
コンシューマー市場向けの取り組みを強化すると発表したマイクロソフト。日本におけるWindows VistaやWindows Media Centerの現状をどう見ているのか、コーポレートバイスプレジデントのブラッドブルックス氏に話を聞いた。
「iPodを日本で一番売りたい」--ビックカメラ有楽町店に聞く新iPodの魅力「iPodを日本で一番売りたい」--ビックカメラ有楽町店に聞く新iPodの魅力
発表後初の週末となった9月13日に、新iPodファミリーの店頭イベントを開催したビックカメラ有楽町店本館で、店長の石川勝芳氏に、iPodの販売状況と店内での取り組みについて伺った。

■コラム

進化するユーザビリティテスト〜「ユーザー行動観察調査」の効果・効能進化するユーザビリティテスト〜「ユーザー行動観察調査」の効果・効能
近年のウェブサイトリニューアルプロジェクトでは「ユーザビリティテスト」を実施することが当たり前になってきたようです。今回は、単なる「使いやすさ調査」を超えた「ユーザー行動観察調査」の効果・効能を紹介します。
“オトコの遊びゴコロ”をくすぐるロマンたっぷり「自動車ケータイ」“オトコの遊びゴコロ”をくすぐるロマンたっぷり「自動車ケータイ」
香港や中国のケータイショップでは、「おぉっ!こりゃかなりいける!」とワクワクしてしまう怪しいトンデモケータイに出会うことがある。そんな魅力あふれる製品の1つが、今回ご紹介するケータイである。
ソフトバンク株価の下落加速--iPhone一巡し資金繰りを懸念ソフトバンク株価の下落加速--iPhone一巡し資金繰りを懸念
日経平均が約4年10カ月ぶりに1万円の大台を割り込む中、ソフトバンクの株価が、全般相場の低迷にも増して下落が加速している。

企画特集

ネットと家電をつなぐチャレンジ「Life-X」
第一題:ライフログ・シェアリングサービス「Life-X」の第一印象は?
エンタメCGM「gooメーカー☆メーカー」エンタメCGM「gooメーカー☆メーカー」
【第2回】メーカー/占いのコンテンツを作ってみた!

ブログネットワーク

アルファブロガー

外資系エグゼクティブの日々I am Jamming!
外資系エグゼクティブの日々
クロサカタツヤの情報通信インサイトグッバイ、レバレッジ!(1)
クロサカタツヤの情報通信インサイト
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」9月イベントお知らせ
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」
ケータイ時代のスタンダードiPhonista Nightの事後報告
ケータイ時代のスタンダード
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance新サービスをローンチしました
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance
鈴木健の天命反転生活日記パラレルワールドとしての電脳コイル
鈴木健の天命反転生活日記

読者ブロガー

今どきのメッセージ論日経平均株価の落ち着く先は…(2)
今どきのメッセージ論
箱田雅彦・ネットとメディアのききかじりにゃふにゃふ動画
箱田雅彦・ネットとメディアのききかじり
インフラコンサルティングの最前線コンサル業界進化論〜悪評の原因を考える〜
インフラコンサルティングの最前線
WebClip - ウェブのニュースと Second Life (セカンドライフ)琴線に触れた発言集 - エンジニアの未来サミット
WebClip - ウェブのニュースと Second Life (セカンドライフ)
夢幻∞大のドリーミングメディア騒がれないと不安になる人たち
夢幻∞大のドリーミングメディア

リサーチ

■リサーチコラム

薬事法規制の厳しい健康食品に代わり、増え続ける化粧品メーカー
薬事法規制が厳しくなる今、特に規制が厳しい健康食品にかわって化粧品を販売しようとする企業が増えている。そこで、覚えておきたい化粧品と薬事法の関係について簡単にまとめた。
携帯電話の待ち受けに関する調査--最も利用される画面は「自分で撮影した写真」
携帯電話の待ち受け画面に関する調査を実施したところ、10・20代は飽きやすく待ち受け画面を頻繁に変更する傾向にあり、30・40代は季節感や臨場感を重視することが明らかとなった。
電子マネーによるライフスタイルの変化に関する調査--電子マネーコアユーザーは、高所得者層
電子マネーによるライフスタイルの変化に関する調査したところ、電子マネーを活用するのは高所得者層に多く見られた。また、1度に1万円以上チャージするユーザーは10%強であることも明らかになった。

■調査レポートダウンロード

金融不安の市場に、IR活動は何を頼るか!?
CMS未導入企業300社へのアンケート 担当者のホンネを徹底追求

■調査発表

【ゲームクリエイターの方へ】攻めの開発体制を敷くAQインタラクティブ社の中途採用・求人情報をレポート
Alibaba JAPAN、カー用品店に関する調査 カー用品専門店の認知、利用ともトップは「オートバックス」
調査結果「携帯OS『Android』認知度調査、6割が『知らない』 〜ユーザー期待のメーカーは?」

イベント情報

Microsoft Windows SharePoint Services 3.0によるチームサイトの構築
主催:グローバルナレッジネットワーク株式会社
Microsoft .NET入門
主催:グローバルナレッジネットワーク株式会社
Microsoft SQL Server 2005 インフラストラクチャの設計(#4612)
主催:グローバルナレッジネットワーク株式会社

CNET Japan セレクション

ココが変わった、新型「ニンテンドーDSi」--「ニンテンドーDS Lite」と比較
任天堂が11月1日に発売する新型ゲーム機「ニンテンドーDSi」はどんな点が新しいのか。既存のニンテンドーDS Liteと比較するとともに、新機能を紹介する。
フォトレポート:本体が分離するNTTドコモの「セパレートケータイ」の謎に迫る
NTTドコモは家電展示会「CEATEC JAPAN 2008」において、端末が2つに分離できる携帯電話「セパレートケータイ」を展示している。どのような仕組みなのか、何ができるのかを、写真で紹介する。
話題のスマートフォン、写真で見るBlackBerry Bold
RIM製スマートフォン「BlackBerry」の新モデル「BlackBerry Bold」を2008年度第4四半期にも発売すると発表したNTTドコモ。話題のBlackBerry Boldを写真で紹介する。
こんなものもありました--CEATECで見つけたオモシロ新技術たち
幕張メッセで開催されている展示会「CEATEC JAPAN 2008」では、幅広い分野の最新技術が一堂に会している。ここではその中でもユニークな新技術や展示を紹介する。
「iPhone 2.2」アップデートの概要が明らかに--App Storeのインターフェースなど変更
アップルは、新たな「iPhone 2.2」アップデートのリリースに向けて準備を進めている。Safariに加え、App Storeのインターフェース変更などが予定されている。
ケータイはまだまだ進化する--CEATECで見た未来の技術
幕張メッセで開催されているデジタル家電の展示会「CEATEC JAPAN 2008」では、携帯電話関連の新技術が数多く展示されている。その様子を写真で紹介する。

今日の見どころ

自動車の未来を垣間見る--2008年パリモーターショーのコンセプトカー

2008年度グッドデザイン賞が発表--環境を意識した新基準も

GMのハイブリッドカー「Chevrolet Volt」、パリモーターショーに登場

レビュー

今週の新製品総チェック:新PS3が登場!ニコンが発表した映像製品「UP」とは?
「東京ゲームショウ2008」が10月9日から開催され、新PS3やXboxの新作ゲームなど、ゲーム機の大型発表が相次
[レビュー]2011年画質を備えた高画質、多機能Blu-ray--ソニー「BDZ-X95」
ソニーのBlu-ray Discレコーダー新製品が登場した。2007年から引き継がれる「やりたいことから選ぶ」シリー
今週の新製品総チェック:よりモバイルPCとして進化した「Let's note」が登場
松下電器産業の「Let's note」、デルのデスクトップPCとPC新製品が数多く登場した。Let's noteは9時間駆動
今週の新製品総チェック:フルサイズCMOS搭載のキヤノン「EOS 5D Mark II」が登場
キヤノンからもフルサイズCMOSセンサを搭載した「EOS 5D Mark II」が登場した。合わせてコンパクトデジカメ
今週の新製品総チェック:第4世代iPod nano登場、ソニー「α」、松下「LUMIX」に新機種も

CNET_ID

メンバー限定サービスをご利用いただく場合、このページの上部からログイン、またはCNET_ID登録(無料)をしてください。