Larry Ellisonの予言がついに的中した。彼に与えられるべき賛辞は決して多くないが、少しは称賛されて然るべきだろう。
異常なほど自己中心的な性格をしていることで知られ、レッドウッドショアーズの神官(オラクル)と呼ばれるEllisonは、しばしば大言壮語したり暴言を吐くため、マスコミは、彼以上に話題性のある人物を見出すことなどとても考えられなかった。
Oracleの最高経営責任者(CEO)であるEllisonは、大言壮語してはばからないこともあるが、1人の技術者であり、業界に多大な影響力を持つ人物であることには変わりがない。Ellisonの発言には業界全体が耳を傾ける。Ellisonは1年前、企業向けソフトウェア事業は整理/統合される運命にあると発言し、その後、自身の言葉通りPeopleSoftに対する敵対的株式公開買い付け(TOB)を開始し、論議を巻き起こした。
OracleはPeopleSoftの株主に対し、1株当たり24ドルで同社に株式を売却するよう求め、その売却期限を米国時間11月19日に設定した。また同社は、PeopleSoftの株主が呼びかけに応じなければ買収を中止すると述べた。
これは、Oracleが毎年開催している顧客カンファレンス「Oracle OpenWorld」に向けた動きとしては良いものといえる。同カンファレンスは12月に開催される。Ellisonはこの他にも数々の予言を行い、物議をかもしてきたが、たまたまその中の1つの予言の記念日がつい最近過ぎ去った。Ellisonは5年前の11月に行った演説の中で、ネットワークコンピュータに関する自身の構想を再び持ち出したのである。
同氏の基本的な考え方は、われわれも認識している通り、PCの余命は幾ばくもないというものだ。PCは将来間違いなく、小型かつ低価格のネットワーク機器に取って代わられる。このネットワーク機器は、ハードディスクではなくセントラルネットワークにデータを保存する。そうなれば、アップデートやバグの修正は自動的に行われ、管理コストは皆無に等しくなる。
多くのマスコミ関係者やアナリストは、Ellisonが推進しているこの将来ビジョンは絵に描いた餅だと批判した。ところで、このビジョンはEllisonの最大のライバルであるBill Gatesに対し同氏を優位に立たせる可能性もある(オペレーティングシステムはもう不要、Microsoftも不要という考え方だからだ)。
Microsoftは依然として存在し、繁栄し続けている。しかし面白いことに、Ellisonの予言は大体において実現している。実現の仕方は彼の想像とは異なっているが。
Ellisonがネットワークコンピュータを推進し始めた1995〜1996年当時は、ネットワークの帯域幅が乏しく、コンピュータの処理速度は遅く、大半のマシンは高価だった。さらにEllisonは、コンピュータがJavaと共に進化すると考えていたが、当時のJavaはほとんど機能していなかった。
同氏の他の多くの予言と同様に、この予言もあまりに時代を先取りしすぎていた。ネットワークコンピューティング革命は起こったが、すぐに終わり、大半の人々は革命が起こったことに全く気付かなかった。しかし、ウェブに接続されたPCやHTMLを動的に生み出すサーバベースのアプリケーションの出現と共に、ネットワークコンピューティング革命は起こったのだった。
Ellisonがこのテーマについての演説を行った当時は、真のウェブアプリと呼ぶにふさわしい製品はほとんど存在しなかった。今や世界は大きな変化を遂げた。ウェブは、テキスト、リンク、画像といったコンテンツ以外にも様々な用途に利用されている。われわれは、メールの送信、旅行情報の検索、顧客関係管理(CRM)への取り組みなど、様々な目的でインターネットを利用している。
当時のEllisonは単に推測を述べていただけだが、今やソフトはブラウザ向けに開発/提供されており、一方、デスクトップアプリ(いわゆるクライアントサーバアプリ)は明らかに減少傾向にある。ネットワーク接続されたアプリケーションはついに現実のものとなり、ウェブアプリケーションと呼ばれている。どんな呼ばれ方であろうと、これはEllisonのネットワークコンピュータ構想そのものに他ならない。
筆者略歴
Charles Cooper
CNET News.com解説記事担当編集責任者
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