PC上で氾濫する広告プログラムはさまざまな呼び方をされているが、その多くは過激な表現を含んでいる。
Slashdotの利用者であれば、そうした広告はスパイウェアであり、作者は厳しく責められるべきであると考えるだろう。一部の議員はこれを「サイバー不法侵入」と呼び、こうした詐欺的な行為を法的に規制しようとしている。一方、このニッチ広告市場の最大手であるClariaにしてみれば、こうしたスパイウェアは非常にうまみのあるビジネスである。同社の昨年の売上は9000万ドル、利益は3500万ドルに達する。しかし、大半のインターネットユーザーにとっては、迷惑以外の何者でもない。
とは言うものの、一部のソフトウェア開発者やコンテンツプロバイダにとって、スパイウェアは生きていくための手段である。シェアウェアをダウンロードしたユーザーが代金を支払ってくれるのを期待するよりもはるかに確実に利益を生み出せるからだ。スパイウェアによる侵入の程度と攻撃性はさまざまだ。そこで、スパイウェアと称されるプログラムをダンテの神曲の地獄編になぞらえて、9つに分類してみた。
スパイウェアという言葉は、1995年10月16日、Microsoftのビジネスモデルを揶揄(やゆ)するUsenetの投稿の中で最初に使われた。Lexis/Nexisで検索してみると、この言葉は最初、小型カメラのようなスパイ用機器を指していたが、1999年頃Zone Labs社が同社のZone Alarm Personal Firewallのプレスリリースで初めて現在の意味で使ったということだ。それ以降、この言葉は広く使用されるようになり、2000年初めには、最初のスパイウェア対策用プログラム(Steve Gibson作のOptOut)も登場した。
スパイウェアは、1999年頃から現在の意味で使われるようになったわけだが、この言葉が何を意味するかについては意見が分かれている。そもそも「スパイ」という言葉は誤解を招きやすい。最も迷惑の度合いが高いとされるスパイウェアでさえ、大量の情報を収集はするものの、それらをサーバに送り返すことはしていないからだ。コンピュータセキュリティの専門家たちは、害のあるソフトウェアという意味で、これらの総称としてマルウェア(malware)という語を使っている。一方、こうしたソフトウェアの作者たちは、アドウェアという言葉を使いたがる。彼らの立場から見れば、正真正銘のスパイウェアであるTrojanやキーロガーなどのリモートアクセスプログラムと一緒にされては困るというわけだ。
さて、そのアドウェアはどのように広まったのだろうか。これらのプログラムは、ウイルスと違って、インターネット上で破壊行為を目論む正体不明のプログラマによって書かれているわけではない。基本的に、アドウェアを広めた要因は3つある。低価格ソフトウェアの小売モデルの破綻、PtoPアプリケーションの普及、そしてクリック型課金広告(広告がクリックされた回数に応じて業者が広告主に課金するタイプの広告)の登場である。
理由はいろいろあるだろうが、新規参入業者が30ドル以下のソフトウェアを販売するには、小売ベースでもインターネット販売でもうまくいかない。小売ベースでは、(会計ソフトやオペレーティングシステムといった)高価なアプリケーションのベンダが確固とした地位を築いており、割り込むのは難しい。小売ベースの販売に成功したのは、最近では、ビデオ編集およびDVD用ソフトウェアのベンダIntervideoくらいのものだ。
それに、低機能のソフトウェアはインターネット上で無償で入手できるものだとユーザーは思っている。実際、IMクライアント、ウェブブラウザ、ウェブメール、さらにはチェスやカードゲームに至るまで、ほとんどのインターネットベースのアプリケーションは無償である。シェアウェアの代金回収率があまりにひどかったため、そうしたビジネスモデルを始めた企業は、積極的に収益を上げられるようにモデルを改良しなければならなかった(その代表格がZone Labsである)。
確認しておくが、IMクライアント、ウェブメール、ちょっとしたゲームなどは、これまでも、広告によって収益を上げていた。理由は簡単で、そうしたソフトウェアのメーカー(America OnlineやYahooなど)は、大規模な広告販売部門とネットワークを自社で抱えていたというだけのことだ。しかし、中小のソフトウェア開発業者にはそんな力はない。だから、アドウェアを使って広告部門をアウトソーシングするしかないわけだ。多くのアドウェアがスクリーンセーバーやちょっとしたユーティリティソフトに添付されているのはそういう理由からだ。しかし、こうした使い方をされているのはアドウェア全体のごく少数に過ぎない。
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