IntelやApple Computer、AMDなどは今後数カ月、ベンチマークテストで自社製品の優位性を強調する戦略に出るだろう。しかしそうしたテストは、えてして現実からかけ離れたものが多い。
「EverQuestを32台の2ウェイ・ラックマウントサーバ上で同時に動かし、海中を漂う生き物の物語を描きたいって? XPR 2500ならばそれが可能だ」---これは典型的なセールストークだ。
Appleはこの8月に新しいデスクトップ機Power Mac G5を発売し、AMDは9月にAthlon64の出荷を控えている。一方Intelは、Itaniumプロセッサの第三世代製品であるItanium 2(開発コード名Madison)を6月末に発表し、さらに今年後半にはPentium 4に改良を加えたPrescottを発表予定だ。
AppleのCEO、Steve Jobsは、32ビットと64ビット両方のソフトが動作可能なIBM製チップ搭載の新G5で、ベンチマークを積極的に展開し、Intel製チップを搭載するPCに大差をつけようとしている。
AppleはSPEC(Standard Performance Evaluation Corporation)の各種のテストを通じて、G5とIntel製チップ搭載のPCを比較している。小数点を含む数値の計算をどの程度うまく処理できるかを試す浮動小数点演算のテストでは、2GHzのプロセッサを2個搭載したAppleのG5が840点に対し、3GHzのPentium 4を1個搭載したDellのDimension 8300は693点。整数演算テストでは、Appleのマシンが800点、Dellのマシンはこれより「わずかに上回る」889点だったとAppleは説明している。
これに対するIntelの反応は早かった。同社は直接コメントしなかったものの、SPECのテスト結果を掲載したサイトを参照するようにとした。それによると、Intelの3GHzのPentium 4が浮動小数点演算テストで1213点、3.2GHzのPentium 4では1252点で、2ウェイのAppleマシンより50%優れているという。整数演算のテストでは、3GHzのPentium 4が1164点、3.2GHzのPentium 4は1221点だった。
Appleのテストに関しては、同社のホワイトペーパーの中にも矛盾があった。ハードディスクのアクセステストでは、Appleマシンは高速のシリアルATA接続の機器で行われた。いっぽうDellのマシンは、シリアルATAが利用できるものでありながら、古いタイプのままで行われていた。
AMDはAthlon64の性能については明らかにしていないが、HPは先週、AMDが発表予定のチップの性能を示すマシンのスペックを間違って同社サイト上で公開してしまった。AMDらしい話である。
ベンチマークは信頼できるのか
Appleは嘘をついたのだろうか。いやAppleが言うようにDellマシンではそのような結果しか得られなかったのだろう。だがベンチマークの方法自体は闇の中だ。各社ともベンチマークや性能を主張するにあたって、多少のごまかしを行っているのは確かなようだ。また、独立系ベンチマーク機関であったはずのBAPCo(Business Applications Performance Corporation)は、かつてIntelの中に本部を構えていたこともあった。
またAppleでもかつて自社のデスクトップ機G4 Cubeをスーパーコンピュータと称していたことがあった。ただしAppleは、G4 Cubeをスーパーコンピュータだと認めたのは、米国政府の武器輸出を取り締まる担当部署だけだったということを口にしていない。スパコン並みの性能を売りにしたG4 Cubeは、パキスタンをはじめとする新興の核保有国への輸出規制にひっかかった。こうした規制はその後改訂されている。
今年はこのような内部操作が勢いを増すだろう。AppleとAMDはシェア低下に直面していたが、やっとIntelと互角に戦える製品を発表することができた。テスト結果であれ顧客獲得であれ、利点を訴えるために利用できるものであればなんでも使いたいところだろう。
こうした主張の中には、幾分ばかげているものもある。Apple、AMDとも64ビットのソフトを動かせることを歌い文句にするだろうが、この特徴を利用できるようなソフトはほとんどないという事実については口をつぐんだままだ。それでも新しい製品の持つ長所をうまく打ち出せるだろうから、Intelはきりきりまいさせられるだろう。さらにつけ加えると、IBMは両社に技術的支援を行い、Intelに大きく遅れを取らないようにしている。
AppleのCEO、Steve Jobsが設立した映画制作会社のPixarで起こったことは、さらに興味深い。「当社のRenderManを使ってベンチマークを行った結果、Power Man G5は世界最速のデスクトップマシンだと言える」と、Pixar社長のEd Catmullは6月下旬に述べている。
しかしCatmullが口にしなかったのは、PixarがいまほとんどIntel製チップで動くマシンで作業しているということだ。Pixarは今年初め、制作部門のマシンをSunのサーバからIntel製チップを搭載したRackSaverサーバに入れ替えた。また、同社のデスクトップの大半も同様にIntel製チップ搭載のマシンと言われている。映画「Finding Nemo」のほとんどはPentium 4マシンで制作したものだと語る関係者も2人いる。
Intelの連中は、今年いろいろなプレゼンテーションの場でこうしたもっともらしい話しを何気なく暴露するだろう。しかしPixarがAppleマシンを採用することになれば---Catmullのコメントから察するところ、その可能性は高そうだが---Jobsはそのことを大々的に宣伝するに違いない。
いずれにせよ、今年の秋はおもしろくなりそうだ。
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