「まさに青天の霹靂とはこのこと」と外資系証券のIT担当アナリストが思わずつぶやいた。日経新聞による証券アナリストや機関投資家向けのアンケート調査によって「2003年に期待する新興企業」(今年1月8日付け掲載)の堂々トップに輝いた企業の株価が、わずか1カ月後になんと5分の1の水準にまで暴落してしまうとはいったい誰が予想できただろう。
その悪夢のような暴落劇の主役を演じたのはヘラクレス(旧ナスダック・ジャパン)市場上場のセラーテムテクノロジーだ。同社は、デジタル画像処理で独自の技術を持つソフト開発会社として知られ、鳴り物入りで2001年12月に当時のナスダック・ジャパンに上場。その後これがヘラクレスとなってからは、早期に東証1部への直接上場が取り沙汰されていた「ITベンチャー期待の星」といえる存在だった。
ところが同社は2月6日、今6月期の12月中間期の大幅減益決算を発表。第2四半期(2002年10〜12月)の業績が急激に落ち込む衝撃的内容に失望売りが殺到し、翌日7日から大量の売りを浴びる展開となり、連日売り気配のままで値つかずの状態が続いた。やっと値がついた14日には73万5000円(6日終値)だった株価が23万5000円にまで暴落していた。その翌日も下落が続き株価は15万5000円まで下落、2月25日に一時10万4000円まで売り込まれた。
同社の新藤次郎社長によると、「第1〜第2四半期(2002年6〜12月)にかけて明確なトレンド変化があった」という。第2四半期の連結営業損益は3億2600万円の赤字に転落。昨秋買収した米Extensis社が寄与したものの、同期の単体売上高は1億円強にとどまった。同社のコア技術であるデジタル画像フォーマット「VFZ」に著作権管理ソフトなどを組み合わせた主力製品「IDPデータベースシステム」の販売本数が第2四半期極端に急減。「有料画像配信を手掛ける先駆的ユーザーの需要が一巡した」(同)という。
かなり極端な業績下方修正とはいうものの、これだけならここまでの暴落はなかっただろう。実は背景に新藤社長自身の不明瞭な持ち株売却の経緯があったのだ。
昨年12月24日、筆頭株主である新藤社長の保有株1万2654株(持ち株比率16.1%)のうち4348株(同5.5%)が社長の資産管理会社、コンコルデアにいったん移された。そして、同月30日に3900株(同4.9%)が米国にある資産管理会社に売却されている。一般的に、申告分離課税への一本化に備えたクロス取引による簿価引き上げは、企業オーナーの節税対策であり、取得価格明確化の側面もあり必ずしも責められるべきではない。だが、新藤社長が「売上急減の兆候を認識したのは11月ごろ」としており時期的に割り切れないものが残る。
「新藤社長のとった行動は、業績に急ブレーキが掛かってきたことから、株価が急落する前に持ち株を売却して損失を免れたと判断されても仕方のないもの。株価の暴落はむしろこれによる信用失墜の表れではないのか」(市場関係者)との見方も出ている。
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