昨年シカゴで開催されたDMA(ダイレクト・マーケティング・アソシエーション)の2007カンファレンスでのバズワードは「コンバージェンス」。「コンバージェンス・マーケティング」という概念が非常に新鮮に映る。
「コンバージェンス」とは、「統合」とか「収斂」とかを意味する。様々なマーケティング活動をひとつの方向に束ね、収斂させ、力を最大化するというニュアンスである。
このカンファレンスでも注目に値するのは、リチャード・ローゼン氏が提唱する「Rosen Velocity Scale」という考え方で、広告の訴求要素をブランドイメージ100%からダイレクトレスポンス100%まで10段階のグラデーションに分けて、コスト・パー・セールスを計測している作業だ。短期ではダイレクトレスポンス要素が高いほど、コスト・パー・セールスは高くなるが、マーケティングの時間軸が中期、長期になると認知・検討・レスポンスの効果のバランスが良いものの方が費用対効果が良くなる。
こういったことは考え方としてはあったが、実証結果や理論化されることは、あまりなかった。この理論の重要なことは、ダイレクトレスポンスなどROIを確実に把握しながら広告の費用対効果を日夜追及する行動様式をもった人たちが、ROI把握をベースとしながら、ブランディングコミュニケーションの効果を模索するということをし始めたことである。この動きは非常に面白い。
「ブランディングとはマーケティングの時間軸を中長期にとった場合のROI追求である」とはっきり定義してしまうと以外とすっきりするところがある。そして、常にレスポンスを測りながら、ブランドコミュニケーションの効果をつまびらかにしていく手法は、地に足が着いていて、極めて説得力がある。
また、中期長期としなくても、ブランディング要素も取り込んだ獲得型広告は、顧客の質を高めるということがあるような気がする。例えば、単に1人当たりの獲得単価でいえばアフィリエイトが効率的かもしれないが、その客単価やリピート率を考慮すれば必ずしも最終的な費用対効果が良いかどうかは分からない。ブランド訴求から検討、納得感を得る情報を得てレスポンスに誘導していれば、それが一連の行動で短期であっても、クオリティの高い顧客獲得につながる可能性を秘めている。
とにかく、ダイレクトレスポンスを追求するなかで、そのソリューションの最大の要因がクリエイティブであることを再度認識し、そのソリューションをネットでもレスポンス最適化を求められている広告サービス提供者が担うことに意味がある。
「ROI側からブランディングを語る」これができると、これから非常に強い広告サービスが確立できる。
青山学院大学文学部英米文学科卒。1982年に株式会社旭通信社入社。営業職を経て、1996年同社サイバービジネス開発室室長。同年デジタルアドバタイジングコンソーシアム株式会社の設立に参画。設立時に同社代表取締役副社長に就任。黎明期にあったネット広告の普及、体系化、理論化に取り組む。JIAA(インターネット広告推進協議会)のガイドライン作成や新人研修テキストなどの多くを執筆するほか、著書多数。2006年7月からADKインタラクティブCOO兼デジタルアドバタイジングコンソーシアム株式会社取締役。「インターネット広告革命」(2005年宣伝会議)、「Mobile 2.0」(2006年インプレス)、「究極のターゲティング」(2006年宣伝会議)、「次世代広告コミュニケーション」(2007年翔泳社)など。
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