改めましてGoogleという会社の掲げるミッションは、「to organize the world's information and make it universally accessible and useful.」(Googleの会社概要から抜粋)。
翻訳すれば、「世界中の情報を整理し、世界中から便利に使えるようにする」となります。彼等は、このミッションを果たすために、まずは、世界中のウェブの情報を整理し検索できるシステムから会社を始めました。その際に、彼等は大量のデータの中から、瞬時にデータを検索できる様な独自システムを開発しています。
それは、大量生産されているPCのパーツを組み合わせて作ったハードウェアと独自のソフトウェアで構成されており、他社の技術に頼らない安価なコストで大規模システムを実現しています。この独自開発の安価なシステムと高度な技術を軸にして、まさに、次々に世界中の情報の整理と検索をできるシステムを提供してきています。
2007年12月時点においては、画像、ブログ、動画、ニュース、地図、乗り換え案内、大学、本、特許、商品、学術論文、無料で使用できるProgram Codeまでもが、Googleの検索対象になっています(注:一部の検索は、米国だけでのサービス提供)。この圧倒的なデータ量、圧倒的に便利な検索機能を世界中のユーザに無料で提供し、圧倒的なユーザトラフィックを集め、検索連動型の広告を始め、莫大な利益を生み出しています。
また、成長の過程で行ったIPOでも十分な資金を調達し、それらの資金を元にして、Microsoftが君臨しているOfficeアプリケーションやメール、カレンダーの分野にも進出し、さらには、Googleの検索技術を使ってユーザーのPC内のファイルを高速に検索できるツールまで無料で提供しています。さらに、ポータルが得意としていた、ユーザーグループ、ブログ、SNS、チャットなどのコミュニケーションの分野でも、無料のアプリケーションを提供しています。
一見、Googleという会社は無敵の会社に思えますが、会社経営という観点から見ると売上高のほとんどを、検索連動型広告(すこし乱暴ですが、以後、AdWords、AdSenseの両方を検索連動型広告と定義してしまいます)に頼っているという状態にあります。つまり、現在成長しているこの広告カテゴリーの収入が伸び悩み始めた時、Googleという会社の成長鈍化の可能性があるわけです。
Googleは、ユーザーの行動履歴を使って広告のパーソナライズ化などの新しいテクノロジーを使い始めていますが、それらもすべて、検索連動型広告が、よりクリックされやすいような仕掛けをしていると思うのです。
Facebookの個人のプロファイルをベースにした新しい広告のスタイルに対抗するために、オープンな仕様(Open Social Graph API)を公開し、Googleは、様々なSNSをまたがって人と人の関係性までもデータ化しようとしています。このデータも、いずれ、検索連動型の広告に反映されることになるでしょう。つまり、私がクリックした広告を私のマイミク(mixiは、GoogleのOpen Social Graphへの対応を表明しています)の友人が、Googleで検索した際にも表示するということが想像されます。ここでも、結局、Googleの売上高は検索連動型広告(ユーザー行動履歴を使った)に紐づくことをしているのです。
ここまで検索連動型広告として、完成された検索エンジンになってくると、ユーザーの心理として、「どんなロジックで検索結果や広告を出しているのかまったくわからない!という“気持ち悪さ”」、または「広告に追っかけられているのではないか?という“うっとうしさ”」などが醸成されてくる可能性があるのではないでしょうか?
The Economistによると、「(中略)オンライン広告は新たな障害に直面する、とコンサルタント会社、デロイトは指摘している。同社によれば、最近米国消費者の動向を調査した結果、回答者の4分の3以上が、印刷媒体よりもオンライン広告がうっとうしいと答えている。プライバシーの侵害を心配して、人々は販売のオンライン追跡反対の運動を始めた。(中略)」(「TheEconomist」2008年1月26日号)。
「上記モデルを中心にGoogleが成長すればするほど、広告というものの従来の本質が問われる時代になる」と思うのは果たして私だけでしょうか?
広告業に携わる方々、一瞬立ち止まり考えて下さい。「元来、広告というものは有限であり希少性があるからこそユーザーにとって価値があるのです。また広告掲載箇所は、“広告である”とユーザーから認められ、その上で広告主にとっても広告効果が高いものなのです」。この原点を忘れないでほしいのです。
インターネット広告中心の時代、成長しているものは新たなるものとして肯定しなければなりません。ただ「広告のそもそもの本質」を知らなすぎる広告マンや忘れかけている広告マンを正していく姿勢を持ち続けること、この行為こそがこれからの広告業の繁栄の基礎になるのです。
大手広告代理店退職後、財団法人社会経済生産性本部において経営コンサルタントの認定を受け、その後1999年9月株式会社オプト入社。2001年1月より同社代表取締役COO。2006年1月より同社代表取締役CEO。慶應義塾大学経済学部卒、産能大学大学院経営情報学研究科(MBA課程)卒、中小企業診断士。デジタルハリウッド大学院教授(「インターネットマーケティング」担当)。「サイバーコミュニティを使った『ニーズ調査』の有効性に関する比較研究」(経営情報学会2000年、共同研究)、「インターネット広告による売上革新」(同文舘出版2006年、共著)等学会・講演活動多数。
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