横山隆治(ADKインタラクティブCOO)
2008/02/18 12:00
「インタラクティブ領域は専門的に対応する人材が必要か」「特に広告会社の営業という役割において、インタラクティブに特化する必要があるのか」――答えはイエスである。何故なら、インタラクティブ領域といっても既にたいへん領域が広くなっているからだ。
インタラクティブというだけでもウェブ関連(クライアントがダイレクトマーケターかマスマーケターでもスキルは全然違う)、ネット広告、モバイル広告、サーチ関連(SEO、リスティング……)、CGM関連、テクノロジー関連……と、今も日々領域拡大が継続するこの世界では、既に「インタラクティブなら何でも来い」のスペシャリストという存在はいない。インタラクティブ領域の、そのまたそれぞれの専門家に依頼しないと出来ないことばかりだ。一定以上の知見をもって、各スペシャリストにクライアントニーズを正確に伝え、トータルにプロデュースする営業マンが要る。
ところが、今総合広告会社の営業はそうではない。営業にプロデュースするだけの知見がない。ないのに営業はクライアントをインターフェイスする。各分野にスペシャリストがいて、彼らをプロデュースするのが代理店の本来機能であったはずだ。スペシャリストほどはスキルがなくても、スペシャリストにクライアントのニーズを明確に伝えたり、トータルな視野から自分なりの解釈でディレクションすることができなければ広告会社の営業とは言えなかったはずだ。
インタラクティブ領域では、そうなっていないことをおかしいと思わないのは、総合広告会社が「インタラクティブ領域がどれほど幅広く奥が深いか」を理解できていないからだ。また、インタラクティブ領域を起点とする広告ビジネスそのものもが、従来と構造が違うことに気づいていなからだ。現状でも極めて領域の広い営業マンに、プロ化しているクライアントに対応してインタラクティブをプロデュースさせるのは無理である。
総合広告会社の営業マンのなかにもインタラクティブに対応できる潜在力をもつ人はたくさんいる。しかしその人に従来の対応もさせて、なおかつインタラクティブもプロデュース機能を発揮しろというのは虫が良すぎる。そんなスーパーマンはいない。
組織論に話を置き換えると、従来のマス広告を売るためにできている現在の広告会社の組織編成に「インタラクティブ部門」を付け足すことがいかにナンセンスかということだ。まず、スタッフ側だけのスキルでは到底対応できない。そして提供サービスの構造が従来と違う。既存の総合広告会社がインタラクティブをトータルキャンペーンの「部品」と考えるのなら、それは間違いだ。世の中の広告全部がインタラクティブキャンペーンになるかどうかは分からないが、インタラクティブがマーケティング構造の中核になるキャンペーンが急拡大するのは確かだと思う。この時、当然マス広告も活用されるだろうし、従来型の店頭施策もあるだろう。
しかしそのキャンペーンでマス広告に10億投資され、インタラクティブが1億だったとしても、コアになっているのは1億のインタラクティブの方だということがある。ここを抑えた者の勝ちである。そもそも企業の自社メディアであるWebにはメディアバイイングコストはかからない。よって広告コストがかかるからキャンペーンのコアという訳ではない。要は何を起点としてブランデッドコンテンツを開発するかである。
米国のインタラクティブエージェンシーが、一部でマス広告のバイイングもやり始めているのは、広告主のマーケティングの中核を押さえ始めたからだ。彼らは単に専門エージェンシーではなく、インタラクティブを攻略起点とするトータルエージェンシーになっている。日本でも総合広告会社におけるスキルをベースに、ネット系の常に新しい商品やアイディアを勉強して提供しつづける文化をもった次世代広告マン人材の集団=次世代インタラクティブエージェンシーが必要である。
広告会社が提供するサービスは、コンサルやクリエイティブ、コンテンツ開発などフィーがとれる付加価値の高いものと、オペレーションサービスなどの比較的付加価値の低いものとが二極化するだろう。そうなると異なるビジネスモデルのこの両極を同じ会社が担うことが難しくなる。従来はマス広告のメディアマージンですべてを包含できたが、今後はそうはいかなくなる。ひとつひとつのサービス提供を最適化しないと競争力を欠くことになる。それぞれのサービスの最適化で一番重要なのは、それぞれのサービスの営業力であり、営業の人材である。売るサービスの専門性が高いのであれば、営業も専門性を発揮しなければならないのはどんな世界でも常識なのではないだろうか。
青山学院大学文学部英米文学科卒。1982年に株式会社旭通信社入社。営業職を経て、1996年同社サイバービジネス開発室室長。同年デジタルアドバタイジングコンソーシアム株式会社の設立に参画。設立時に同社代表取締役副社長に就任。黎明期にあったネット広告の普及、体系化、理論化に取り組む。JIAA(インターネット広告推進協議会)のガイドライン作成や新人研修テキストなどの多くを執筆するほか、著書多数。2006年7月からADKインタラクティブCOO兼デジタルアドバタイジングコンソーシアム株式会社取締役。「インターネット広告革命」(2005年宣伝会議)、「Mobile 2.0」(2006年インプレス)、「究極のターゲティング」(2006年宣伝会議)、「次世代広告コミュニケーション」(2007年翔泳社)など。
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インタラクティブ営業を作ったら、余計機能分化して混乱しませんか?マスもウェブも制御できるスーパーバイザーを育成するほうが天命にかなっていると思いませんか。あるべきビジョンを脇において、やりやすいほうからやるという手っ取り早い対症療法には賛成できません。旧来の広告会社には、とにかく、担当クライアント(あるいはブランド、プロダクト)に対して全権およびその目標達成責任を持つプロジェクトマネージャが必要だったのです。それをやらずに各部門から集めたスタッフによる合議制・役割分担制にして誤魔化してきた日本の代理店の慣習がここにきて破綻しかけているだけで、別に筆者の言われる「インタラクティブ営業」が主導権を握る必要はないのです。第一、筆者の論調ですと、マスはノン・インタラクティブで、ウェブやモバイルがインタラクティブメディアだとの決めつけに読めますが、マスメディアはインタラクティブメディアですよ。怠惰な日本の広告マンがその大いなる機能を使いこなせなかっただけで。