インターネットの存在がクリエイティブの重要性を加速化

海老根智仁(株式会社オプト 代表取締役CEO)2007年07月23日 12時00分

 2006年「AdAge」がエージェンシー・オブ・ザ・イヤーに「The Consumer」を、「TIME」がパーソン・オブ・ザ・イヤーに「You」を選びました。つまり、いずれも、エンドユーザーが作ったクリエイティブが、広告会社(代理店内)のプロクリエイターが作るそれを、上回ったということを示唆する出来事であったと思います。

 2000年前後のインターネット広告市場の成長期、私の認識においては、広告会社(特にネット専業代理店)は、広告主に対して、「メディア選定の提案だけ」を優先し、クリエイティブの提案を後回しにしてきたと思います。今になって各社、その重要性を各社なりに感じているという感覚です。

 株式会社電通の杉山恒太郎氏は、広告批評(7)の中でこう言っています。

「インターネットはまだまだ便利さが第一義にきていて、世の中を豊かに元気にさせるようなものにはなってないと思うけれど、便利さから豊かさへというメディアの発展のためには、クリエイティブの進化が必要不可欠なんだっていうことに確信が持てたんです。それで、僕はメディアとクリエイティブは一緒に育っていかなきゃいけないと言い続けてきました。」(広告批評(7)、マドラ出版60頁より抜粋)

 当たり前の話ですが、広告主が狙うターゲットに対して広告表現のアピール力が弱かったりしたら、広告露出にかける莫大な費用を無駄遣いさせることになります。また今後は4マス媒体、インターネット広告以外にもホームメディアやカーナビメディアなど様々なメディアがでてきます。広告会社の最適メディアプラン作成作業は、困難を極めます。そこを横串に刺すのがクリエイティブ提案なのです。

 杉山氏は同誌の中で次のような主張もしております。

「インターネット検索のような便利なものを皆が使い出すと、物事を記憶しようとしなくなったり、その上、頭の中でアイディアを編集したりする手間をしなくなる。」

 つまりインターネットやネット検索は、「いつでも簡単に調べられるので、人が記憶しようとする思いを忘れさせる」ツールなのかもしれないということです。記憶に残そうとしないエンドユーザーは、広告を見て覚えておこうともしませんし、そもそもUCC(ユーザークリエイティブコンテンツ)が流行る時代には、魅力ある広告でなければ無視するかもしれないのです。

 エンドユーザーが作ろうが、広告会社が作ろうが、より魅力的な広告及びコンテンツが多くなることが、求められると思いますし、魅力あるとか面白いとかいうこと自体が、成長率が鈍化しているネット広告市場を一層成長させる基本的な原動力になると思うのです。

 広告会社が再認識すべき基本的なことは

  • ネット市場の更なる成長のために、エンドユーザーに「選ばれる」クリエイティブ作りを目指す
  • エンドユーザーが作るクリエイティブに負けない「記憶に残させる、魅力ある」ものを作る
が必要なんです。

海老根智仁
株式会社オプト 代表取締役CEO

大手広告代理店退職後、財団法人社会経済生産性本部において経営コンサルタントの認定を受け、その後1999年9月株式会社オプト入社。2001年1月より同社代表取締役COO。2006年1月より同社代表取締役CEO。慶應義塾大学経済学部卒、産能大学大学院経営情報学研究科(MBA課程)卒、中小企業診断士。デジタルハリウッド大学院教授(「インターネットマーケティング」担当)。「サイバーコミュニティを使った『ニーズ調査』の有効性に関する比較研究」(経営情報学会2000年、共同研究)、「インターネット広告による売上革新」(同文舘出版2006年、共著)等学会・講演活動多数。

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