海老根智仁(株式会社オプト 代表取締役CEO)
2007/03/05 11:00
昨今、インターネットを使ったマーケティングが、企業に積極的に採用されるようになり、インターネットマーケティングという言葉自体も定着してきたと言えます。
その1つの理由として、「インターネットを使ったマーケティングは測定・分析可能である」と言うマーケティング担当者が多いと思います。つまり、数値で測れるインターネットマーケティングは、その特徴の1つである測定性・分析性から、ターゲット設定や広告メニューのミックスなどをしやすくしたと思うのです。
企業は、インターネットマーケティング活動やインターネット広告活動を通じ、ユーザーアクセスデータなどを収集、整理、分析し、それに合致した製品情報などを、適合したインターネット媒体などに合理的にアプローチすることが可能になったのです。
しかしWeb 2.0時代になり、消費者行動(特にインターネット上の)に変化が見られました。それは「消費者(以下ユーザー)は、主体的・能動的にインターネットに参加し、行動するようになった」ということであります。つまり、ユーザーのインターネット上の行動やスタイルが複雑化し、個々の行動が予測しづらくなりました。予想も付かないユーザー行動の複雑性は、ターゲット設定やアプローチ手法の不安定性を生み、それがまた企業のマーケティング活動に新たな課題を持ちかけていると思います。
また、ユーザー自身の趣味や嗜好も変わりやすいため、以前取得したユーザーデータベースもマーケティング活動に使えないという事態も起きています。つまり企業はユーザー自体を良く知ることが重要になってきているのです。しかも日ごと時間ごとにその特性を追う必要が増してきたのです。
私は2007年に注目しているワードが2つあります。1つは「ライフタイムバリュー」で、もう1つは「エンゲージメント」です。このような新しい考え方を広告業に携わる人たちは持つべきだと考えます。
ライフタイムバリューは、goo辞典によりますと、「長期的に1人の顧客から得られる利益を指標化したもの。生涯価値、寿命価値とも呼ばれ、1回の購入額に一生涯で購入回数を乗じたりして得る。この値が大きいほど優良顧客となる」と説明しています。
エンゲージメントは、conex-in.comによりますと、「(中略)ターゲットとする消費者が、如何にブランドアイディアと関わり、同調しているか、その度合いを計測する手法が必要になっている。エンゲージメントという考え方では、単なる商品の売買ではなく、消費者との関係性を高めることに繋がっているのだ」と説明しています。
ユーザー行動が複雑になり、ユーザーを継続的にセグメントする行為さえも難しい時代に、企業(広告業)にとって、「消費者全体を個の集まりと捉え、その行動などの特性を継続的に分析するとともに自社との関係性を数値化し、その個の数値を生涯にわたって高めていく」――そんな新しいマーケティング思想が重要視されると思われます。既にある言葉から名付けるのであれば「ライフタイムバリュー・マーケティング」(LTVM)といったところでしょうか。
大手広告代理店退職後、財団法人社会経済生産性本部において経営コンサルタントの認定を受け、その後1999年9月株式会社オプト入社。2001年1月より同社代表取締役COO。2006年1月より同社代表取締役CEO。慶應義塾大学経済学部卒、産能大学大学院経営情報学研究科(MBA課程)卒、中小企業診断士。デジタルハリウッド大学院教授(「インターネットマーケティング」担当)。「サイバーコミュニティを使った『ニーズ調査』の有効性に関する比較研究」(経営情報学会2000年、共同研究)、「インターネット広告による売上革新」(同文舘出版2006年、共著)等学会・講演活動多数。
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同感です。個へのアプローチ自体は新しいことではありませんが、ネットの出現による消費者自身の変化は、広告に質的な変化をもたらします。少なくとも戦後初めてのケースです。毎回毎回、製品やサービスをよく見せていくかという「一期一会」ではなく、相手のために場合によっては自社以外を薦めるくらいの「器量」が求められる時代になりました。広告はより経営に近い場所での戦略が必要になったと感じます。