次世代光ディスクの規格間競争に注力している間に、ハリウッドのコンテンツオーナーたちの中での対立が急速に解消され、次世代ビジネスの中核となるオンライン配信事業の展開が加速しつつある。
年初、例年のように国際家電見本市「2008 International CES」が米国時間1月7日にラスベガスで開幕した。ここではますますハイデフ(高精細)化する映像コンテンツに対応する次世代光ディスクの2大陣営がしのぎを削るプレゼンテーション、あるいは展示合戦をするものと予想されていた。
2006年はじめにBlu-ray Disc、HD DVDの両規格から最初のプレーヤー製品が発売され、その後DVDの急速な普及に一躍買ったゲームコンソール「PlayStation 2」の次世代機「PLAYSTATION 3」が同年秋にソニー・コンピュータエンタテインメントからリリースされるなどした。しかし、その普及はそれほど加速しないまま、1年以上が過ぎていた。そして、更なる戦略の発表と対応製品のリリース、そして両規格を採用した映画などのハイデフコンテンツが大量にCESでは発表されると誰もが想像していた。
だが、その直前の1月4日、大きな変化が生じた。メジャースタジオのひとつであるWarner Bros. Entertainmentが、それまで支持を表明してきた次世代光ディスクフォーマットのHD DVD陣営に反旗を翻し、これまで敵陣であったBlu-ray Discフォーマットに限って今後、作品リリースを行っていくことを発表したのだ(参考:「ワーナーブラザーズがHD DVD陣営から離脱、東芝は「それでもHD DVDで戦う」」)。そのため、HD DVD陣営はCESで予定されていたショウ前夜のイベントを急遽中止するなど、対応に追われたという。
そしてこの話題は日本のメディアでも大きく取り上げられ、東芝やMicrosoftが推すHD DVDは、ソニーや松下電器産業(今年10月1日付けでパナソニックに社名変更することを1月10日に発表している)ら家電陣営のBlu-ray Discに「負けた」と報じられた。
しかし、実は別の流れが昨年10月から同じ米国で顕在化している。歴史的なスケールで見れば、この別の流れに比してWarnerの動きは相対的に小さいものでしかないであろう。もっとも、この別の流れを「モノつくり大国」日本はあまり興味をもって眺めていないようだが。
別の流れとは、映画の都ハリウッドで起こったものだ。それは、昨年11月5日から、1万5000人以上の映画やテレビで活躍する脚本家たちが所属する米国脚本家組合(WGA)が米映画テレビジョン製作者連合(AMPTP)に対して起こしたストライキに象徴される。
WGAは昨年10月いっぱいで切れたロイヤリティ料率に関する契約内容の変更を要求していた。しかしメジャースタジオ(大手映画会社)らに代表されるAMPTPはこれをはねつけた。それが、今回のストライキの大きな原因だ。
WGAのストライキは、すでに深刻な影響をハリウッドに与えている。多くの映画やテレビ番組の制作が中断、あるいはスタートできない状態になり、WGAに同調する全米映画俳優組合(SAG:6月からWGAと同様の要求でストライキを実施する予定)によるボイコットのために、アカデミー賞の前哨戦ともいえるゴールデングローブ賞の授賞式が中止に追い込まれるなど、ハリウッド地域の経済にはすでに100億円以上のダメージが生じているという。
そして、ストライキの影響は現在だけにとどまらず、今年の後半に公開を予定していた映画の多くが興行開始を延期、あるいは製作中止といった状況に追い込まれた。このため、独立系映画会社作品や外国映画、あるいは英国やオーストラリアで撮影されたクィーンズ・イングリッシュの「ハリウッド」映画の地位が相対的に高まるなど、ハリウッドの近い将来にも大きな影響が及ぶと予想されている。
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