最終更新時刻:2008年7月24日(木) 12時52分

Web 2.0という時代の先にあるもの

森祐治

2006/12/25 18:36  

 昨年秋からWeb 2.0というコトバを目にするようになり、今年2月の梅田望夫氏の「ウェブ進化論」出版で、日本でもそれは瞬く間に広がった。すでに先行して存在していたGoogleのAPIなどを用いたマッシュアップサービスやソーシャルネットワーキングサービス(SNS)、ブログなどがそのコトバに包含されるモノとしてとらえ直され、Web 2.0のサービスとしてこれまでとは異なる視点からの評価がなされるようになった。実際、SNSやブログなどを扱う「Web 2.0系企業」の株式公開(IPO)も相次ぎ、コトバだけではなく経済面で実質を伴ったという点で、2006年は「Web 2.0」の年であったといってもいいだろう。

 Web 2.0というコトバは、不連続的なイノベーションやパラダイム転換を示すのではなく、ウェブの連続的な変化=進化の到達点を一括りにして表現したものでしかない。そのため、厳密な定義など不可能な「バズワード」と言ってしまえばそれまでということにはなる。しかし、1994年にインターネットの民間開放(まだ、ウェブがそれほど普及していない時代でもあった)がなされたときに多くの理想主義者が想像した、インターネットによる「完全な民主主義の実現」を技術的に実現可能とするための条件がそろってきたという点で、やはりWeb 2.0というコトバは時代の象徴として把握しやすい表現であったに違いない。

 逆に言えば、インターネットに本質的に期待されたエンドユーザーの自発的な情報発信の促進や相互の自律的な連携、企業などの持つ膨大な情報資源への自由なアクセスが可能にする情報の非対称性の解消などは、ただ単に世界中に張り巡らされたフラットな通信網=1.0では実現できなかったということであろう。その意味において言えば、Web 2.0は技術面での進化ではなく、それを使う人々の成熟を示す言葉であるのかもしれない(実際、Web 2.0を構成するサービスの多くは画期的な新テクノロジーで構成されているというより、1.0の頃に開発された枯れた技術を使い込むことで得られた洞察に基づくものが多いという印象が強い)。

期待とは異なった「インターネットがもたらした世界」

  一方、Web 2.0の特徴の中で語られることの多い「ロングテール」という現象は、1.0の時代ではあまり想定されなかった(あるいは、想定したくなかった)もののひとつであろう。1.0の時代の理想主義者は、「グローバルにフラット」でかつそこで利用されるアプリケーションは自由に構築可能な状態を、インターネットという世界共通インフラが提供してくれると考えていた。

 しかし、実際にはインターネットという均質的なインフラが構築されても、依然として社会構造は均質的にはならず、むしろ情報分布の社会経済的な疎密という側面をより大きく強調することになった。またこれまで視覚的にとらえられなかった社会の中での情報のマクロな分布は、むしろ均質性よりも大きく多様性を反映した広がり=ロングテールと、依然として一部の存在に情報や利用、需要が集中したり依存したりする様子を同時に描き出した。

 このことは、抽象的に世界を把握することに長けた経済学や複雑系科学の研究者は想定していたものの、GoogleやAmazonなどのように、ロングテール現象を直観的に把握できるケースが生まれるまでは、あまり多くの人には知られていなかったことだ。そして、そのことを改めてWeb 2.0というコトバの中で受け入れ、そして肯定するという「了解」の作業が行われたのではないだろうか(しかしながら、Googleなどの存在を過大に評価する傾向も同時に強まっている。確かに蓄積されたデータをもとにして新たな価値を生み出す企業としての先進性は高いものの、それを創造主のごとく拝み奉るのはいかがなものか)。

そして、新たな世界へ

 Web 2.0という世界は、すでに現実であり、コトバそのものが前述のようにイノベーションやパラダイムを意味するのではなく、状況を示すものである限り、僕らにはただちにその次を目指して世界を構築する義務があるはずだ。もちろん、そのためにはWeb 2.0という基盤を用いるための十分な知見や洞察も必要になるが、それにとらわれすぎていてはいけない。また、1.0の時代に語られたような過剰な期待に振り回されてもいけない。

 では、その進むべき方向性とはどのようなものがあるのだろうか?

特集

アップルが進める「製品の移行」--CFOの発言をめぐる憶測
米国時間7月21日の業績発表でアップルの最高財務責任者(CFO)が述べた「製品の移行」という言葉が、さまざまな憶測を呼んでいる。
10代の若者と携帯が鍵--米国広告市場における今後の流れ
日本と同様、米国でも10代の若者の間では携帯電話などの携帯端末が主流になりつつある。この流れに着目する企業側は、次の一手を考えている。

オピニオン

■インタビュー

「ニコニコ動画を日本のインフラにする」--夏野氏がニコニコ動画に参画した理由「ニコニコ動画を日本のインフラにする」--夏野氏がニコニコ動画に参画した理由
iモードの育ての親として知られる元NTTドコモの夏野剛氏が、新たな活躍の場としてニコニコ動画を選んだ。夏野氏の参画でニコニコ動画はどう変わるのか、夏野氏とニワンゴ取締役の西村博之氏(ひろゆき)に話を聞いた。
ゲームソフト会社から見たiPhoneの魅力--「ここまで整ったプラットフォームは世界初」ゲームソフト会社から見たiPhoneの魅力--「ここまで整ったプラットフォームは世界初」
7月11日、ついにiPhoneが発売され、アプリ販売サイト「AppStore」がオープンした。iPhoneの本当の魅力はどこにあり、今までの携帯電話やゲーム機とは何が違うのか。ハドソン執行役員の柴田真人氏に聞いた。

■コラム

ゲーム市場の台風の目と期待されるカプコンゲーム市場の台風の目と期待されるカプコン
全般軟調相場が続いている東京株式市場の中で、ここにきて逆行高の兆しをみせているのがゲームソフト大手のカプコンだ。
オリンパス、第1四半期決算好調観測--円安も追い風にオリンパス、第1四半期決算好調観測--円安も追い風に
東京株式相場が深刻な下げに見舞われている中にあって、比較的堅調な値運びをみせているのが好業績も期待できるオリンパスだ。
今こそ求められるフリービジネスのデザイン・スキル今こそ求められるフリービジネスのデザイン・スキル
インターネット上の多くのサービスは、無料で提供されている。エグジットを狙ったビジネスデザインでありながらも、それなりの評価を得ているサービスは多々ある。その理由として、無料サービスを可能にするビジネスモデルが成立しているからだ、といわれる。

企画特集

DELLが掲げる「新・仮想化アセスメントサービス」DELLが掲げる「新・仮想化アセスメントサービス」
〜企業システムの仮想化環境の構築を支援〜

ブログネットワーク

アルファブロガー

外資系エグゼクティブの日々今アーキテクチャが面白い
外資系エグゼクティブの日々
クロサカタツヤの情報通信インサイトインターネットのリュミエール
クロサカタツヤの情報通信インサイト
平野敦士カールのアライアンスInsightGoogleお前もか?
平野敦士カールのアライアンスInsight
江島健太郎 / Kenn's ClairvoyanceiPhoneという奇跡
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」サミット、サミット、そして今こそ!公衆無線LAN
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」
佐々木俊尚 ジャーナリストの視点暗黙共同体へ−秋葉原事件で考える
佐々木俊尚 ジャーナリストの視点

読者ブロガー

レンタルサーバの裏事情サーバトラブル事例(2)
レンタルサーバの裏事情
朝之丞のTry and TestedGoogle Lively試してみました。
朝之丞のTry and Tested

■調査レポートダウンロード

Alloraでレガシー・スクリーン・データを構造化されたRDBMSにリアルタイムでエクスポート
NetManage社のOnWebソリューションとHiT Software社とそのAlloraデータベース・マッピング製品を組み合わせることにより、非構造化したレガシー・スクリーン・データを構造化されたRDBMSにリアルタイムでエクスポート

■調査発表

調査結果「両親の誕生日、正しく言えるのは7割。恋人・子供は9割が言える」
振り込め詐欺の電話を受けたことがある人は全体の15%。身に覚えのない支払督促メールは25%に上る。 - 振り込め詐欺について調査
調査結果「セブン、ファミマ、マルK…コンビニの一般的な略称調査」

イベント情報

ERP教室 〜ERP導入検討、及び情報収集されている企業様向け!ERPでできることについてGRANDITを使ってご紹介〜
主催:日商エレクトロニクス株式会社
超実戦マーケティング徹底講座
主催:株式会社新社会システム総合研究所
朝礼担当者養成講習会
主催:NBCコンサルタンツ株式会社

CNET Japan セレクション

フォトレポート:分解、アップル「iPhone 3G」
CNET News.comの姉妹サイトであるTechRepublicは、7月11日に発売されたばかりの「iPhone 3G」を早速分解し、その様子を紹介した。
ちょっと変わった「iPhone」向けアプリケーション10種
「iTunes」のApp Storeでは、「iPhone」向けのさまざまなアプリケーションが販売または無償で提供されているが、中にはちょっと変わったアプリケーションも存在する。
契約してわかった、iPhoneのさまざまな注意事項
7月11日にソフトバンクモバイルから発売された、アップル製携帯電話「iPhone 3G」。その契約手続きの中で、機種変更時の料金やメールの保存期間など、iPhoneが持つさまざまな注意事項が見えてきた。
フォトレポート:米陸軍が表彰した2007年の技術
米陸軍は毎年春、前年の優れた発明を発表している。このフォトレポートでは、選出された2007年の優れた発明を写真とともに紹介する。
30日間、完全無防備でインターネットを利用したらどうなる?--マカフィーが実験
マカフィーは、スパマーが心理的な計略を使ってインターネットユーザーをだましており、しかもその手法は進化を続けていることがわかったと発表した。
フォトレポート:ゲーム見本市「E3 2008」--MS、任天堂、ソニーなど主要プレスカンファレンス
米国時間7月15日からロサンゼルスで開催されているゲーム見本市「E3」。マイクロソフト、任天堂、ソニーが開いたプレスカンファレンスの模様を写真で紹介する。

今日の見どころ

アナキン子役やベイダーの中の人が来日--スター・ウォーズ出演者のいま

時代を振り返る--「MS-DOS 4」のインストール

伊東美咲さんらが浴衣でアピール、WoooケータイW62Hの魅力

レビュー

[レビュー]高い信頼性を普通に使う地球に優しい電源ユニット--Antec EarthWattsシリーズ EA-650
“自作ユーザーは、電源ユニットに何を求めるのか?”出力なのか、安定性なのか、それとも機能性なのか?難し
オンリーワンの個性を極めた超薄型テレビ--日立 Wooo UTシリーズ
日立製作所の超薄型液晶テレビWooo UT 770シリーズは2008年6月にラインアップが増強され、さらに日立らしい
[レビュー]“この手があったか”と思わせるパワーユーザーも納得のPCオンデマンド--「VALUESTAR G タイプR Luiモデル」+「Lui RN」詳細レビュー
「VALUESTAR GタイプR Luiモデル+PCリモーター」は、設置場所にとらわれずにPCを使える、NECが新しく提案
[レビュー]テレビを持ち歩ける最強ツール--ソニー、Blu-rayレコーダー「BDZ-A70」
加速度的に製品の認知度を普及させているBlu-rayレコーダー。その高画質、長時間録画という製品特性に「お
今週の新製品総チェック:ソニー「VAIO」が新キーワードを発表、ビクターからはYouTube対応ビデオカメラ
[レビュー]ネットワーク対応の高機能デジタルフォトフレーム--ソニー「Canvas Online CP1」
15時間の行列で手に入れたiPhone 3Gファーストインプレッション--ソフトバンクモバイル「iPhone 3G」
今週の新製品総チェック:まさにiPhone一色の1週間、ついに店頭発売へ
北京を見逃すな!--2008年夏、今買うべき「薄型テレビ」

CNET_ID

メンバー限定サービスをご利用いただく場合、このページの上部からログイン、またはCNET_ID登録(無料)をしてください。