ソニーは本当にエレクトロニクス産業の負け組なのか

 先日ビジネスウィーク誌が発表したブランドランキングでは、前年の20位から28位に後退し、16%のブランド価値毀損という不名誉な結果になったソニーだが、依然としてその存在には期待が集まっている。新“ガイジン”CEOのハワード・ストリンガー氏の就任や新チップCELLなど、テクノロジーだけではなくサムシング・ニューを生み出し続けるという姿勢は、創業以来のソニーのDNAそのものに違いない。

実は「日本の期待の星」のソニー

 官庁関連のある研究会で投資銀行の方が、「日本の期待の星は、“ガイジン”社長と高性能チップだけ」といった趣旨のお話をされていた。

 「期待の星」における“ガイジン”社長とは、ルノーに買収された日産のカルロス・ゴーン氏ではなく、企業自らが選出したソニーのハワード・ストリンガー氏(正確には会長)である。また、高性能チップとは日本が比較的強いといわれるDSP(デジタル信号処理用マイクロプロセッサ)やアナログチップといった周辺チップではなく、デジタル機器の心臓部にあたるCPUであり、またしてもソニーのCELLチップを指すのだという。

 マスコミからは「失望」や「低迷」といった言葉で評されがちなソニーではあるが、依然として市場に近い専門家からは大きな評価を得ているようだ。

 もちろん、この話はITや家電などのハイテク領域において、プラットフォーム戦略の優位性がグローバル市場における競争優位を高め、結果として時価総額に反映されるという条件を前提としたものである。だからこそ、プラットフォーム戦略によって結果がレバレッジ(左右)されやすいソフトウェアの重要性をよく理解している英国出身(だが、米国ソニーの代表)のストリンガー氏への評価が高まっているのだ。さらに、ゲーム端末だけではなく、広く家電やIT機器にまで実装可能な、プラットフォームとなりうる新たなパラダイムを備えたハードウェアイノベーションとしてのCELLへの期待が現れている。

堕ちたブランド評価

 とはいえ、世界に冠たるソニーのブランドには影が差している。

 米国のビジネスウィーク誌(8月1日号)は、恒例のブランドランキングを発表した。ここ数年20位前後に毎年ランクインしてきたソニーは、100位以上の企業の中で最大のブランド価値総額の下落幅(16%)を記録し、昨年の20位から28位へと大幅後退しているのだ。

 このランキングは、ブランドコンサルティング会社であるインターブランドの評価指標を用いて算出された。インターブランドのブランド評価指標は、ここ1年のブランド別売上におけるブランドの貢献具合を価値としたもので、日本でも経済産業省がブランド価値評価研究会を立ち上げた際に参考としたものでもある。

 これまで日本企業ではトヨタやホンダの自動車産業を除いて20位までにランクするのはソニーしかおらず、全世界の家電メーカーとしても(NOKIAやGEを家電メーカーと呼べば別だが)20位までにはソニーしかいなかった。しかし、今年は韓国のサムスンが順位を上げてソニーと交代した格好になった(順位の詳細を見るにはビジネスウィーク誌のインタラクティブブランドランキングが面白い)。

過去を評価するか、未来を評価するか

 先の投資銀行の方の話とビジネスウィークのランキングという、この矛盾したソニーへの評価をどう考えるべきか。

 実はそれほど難しくはない。これら2つの評価軸はまったく異なるものであり、並べて語ることはできないからだ。すなわち、期待とは未来に対する評価であり、ブランドとは過去に対する評価ということができる。

 であれば、未来に対する戦略さえ間違わなければ、ブランドにおける酷な評価もあっという間に挽回できるということだ。むしろ、未来に対する正しい戦略を打ち出せば、これまで以上に市場での期待を高め、かつブランドへの信頼を強めることができる。

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