ソニーの株価が10月30日、8月10日に付けた年初来高値を更新した。売買代金は東証1部市場でトップ。東証1部市場の主力銘柄は10月20日前後に年初来高値を付けており、高値未更新だったソニー株はその出遅れ感が意識されていた。高値を更新した10月30日の取引終了後には2010年3月期業績予想の上方修正も発表しており、いよいよソニー株が東京市場の中心に躍り出しそうな雰囲気となってきた。
東芝や三菱商事など、日経平均株価にも採用される東証1部市場の中心銘柄は10月20日前後に年初来高値を更新していた。2008年9月の金融危機発生後の景気急減速から企業業績はようやく回復基調に入ってきたが、ここにきて為替市場が急速に円高ドル安に傾き、輸出企業の収益を痛めるのではとの懸念が強まっていた。しかし、金融危機発生後に日本企業が取り組んできたコスト削減など収益力強化策の効果が表面化してきていることに加え、中国など新興国向け需要の拡大などを評価する動きが強まってきている。
ソニーは当初、2010年3月期業績について連結売上高が前期比5.5%減の7兆3000億円、税引き前赤字は1400億円(前期は1749億5500万円の赤字)を予想していた。消費不況の影響を大きく受けてパソコンやデジタルカメラの価格競争が激化しており、厳しい状況が続くとみられていた。
原子力発電関連として株式市場の注目を集めていた東芝や、中国やブラジルなど新興国向けビジネスの拡大が期待される三菱商事などと比べて業績回復のドライバーが見当たらず、株式市場における物色の手掛かりも少ない状況だった。それゆえ、ソニー株はほかの中心銘柄が高値を更新する中で出遅れてしまっていた。
全般相場の戻りが一服し、10月29日には日経平均株価が1万円割れする中でソニー株は全般相場に逆行して静かに上昇していた。そして、米国市場のGDP速報値が5四半期ぶりにプラス浮上したことや、為替市場が円安ドル高基調に切り返したことなどを材料に10月30日の東京市場は急反発。同日、ソニーには高値未更新であることから出遅れ感が意識された上、海外資金の流入観測も指摘されていた。
同日取引終了後、ソニーは2010年3月期9月中間決算を発表。同時に通期業績計画の上方修正も発表した。売上高計画は当初計画を据え置いているが、1400億円を想定していた税引き前利益は700億円まで縮小する見込みとなった。構造改革費用を当初予想より200億円上積みしたが、それでも液晶テレビ事業などでの固定費削減の効果に加え、デバイス事業や金融事業の改善により収益を大きく寄与してくる。構造改革費用とソニー・エリクソンの損失を除く実質ベースであれば営業損益は1000億円を超える黒字であり、収益改善が着実に進んでいることが確認された。
ソニー株はこれまで5月、6月、そして8月と2800円近辺で押し戻されており、上値の抵抗線となってきた。しかし10月30日にその抵抗線であった8月高値を更新してきたことで、2009年4月以降滞在してきた2600円を中心とするモミ合いのレンジから上放れており、チャートパターンもソニー株の上昇を支えることとなりそう。業績予想の上方修正を受け、ソニー株はさらに人気を集めていきそうだ。
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