株式市場関係者の間で2006年に注目されているのが「飛躍的な伸びが見込まれるブログ(日記風簡易型ホームページ)を、いったいどの企業が実際のビジネスに結びつけて収益化に成功するか」という点だ。すでに、数多くのIT・ネット関連企業がブログの事業化についてしのぎを削っているが、ここにきてそのリード役と目されはじめたのがネット広告代理店で東証マザーズ上場のサイバーエージェントだ。同社のブログ収益化のビジネスモデル、自ら立ち上げた投資育成事業の今後の展開などを探った。
総務省の調べによると、ブログ登録者(開設者数)は2005年9月末時点で473万人(同年3月末335万人)となっており、今年中にも登録者は1000万人を突破するのではとの見方も出ている急成長分野だ。ところが、株式市場関係者のあいだでは、これを事業として収益化するビジネスモデル創出に対する疑問も語られていた。
ところが、大和総研の1月12日付けレポートによれば、「サイバーエージェントが効果的に収益を上げる可能性の高いビジネスモデルの構築にほぼメドをつけてきた」としている。それは、ブログ関連事業を(1)タイアップブログと(2)マッチング広告の2つに分け、それぞれの分野で収益の拡大を目指すというもの。タイアップブログは、広告主から依頼を受けて、特定の商品やサービスを紹介するブログを作成し、それを広告や販売促進に活用しようとするものだ。サイバーエージェントのトップページからタイアップブログへと誘導する。一方、マッチング広告は多様なブログの内容に合わせて、その一部スペースに広告を表示する手法で、コンテンツ連動型広告とも言われている。同社では「ブログクリック」というサービス名で展開している。
同社では、従来のパソコンや携帯電話向け広告のような手数料型ビジネスに力を入れながら、自社のサイトの広告枠を売るなど、集客自体が直接売り上げにつながる事業の比率を高めていく方針だ。こうした戦略の一環として同社は、昨年12月15日、携帯電話向け広告事業などで電通と提携すると発表した。同社の子会社シーエー・モバイルに電通グループが11%強出資し、共同で国内外の携帯広告や携帯通販事業を開拓いていく。
さらに、もうひとつ注目したいのは同社の投資育成事業だ。これまでインターネット関連企業の多くは、企業買収を中心としたM&A頼みで投資事業に参入しているケースが目立つ。ところが、同社の場合は多額なエクイティファイナンス(新株の発行を伴う資金調達)を伴い、これが財務内容の悪化長期化や、発行株式数の増加に伴う1株当たり利益の希薄化に対する懸念から株価推移が軟調展開となる副作用も目立っている。しかし、同社の場合は自力で新規の投資育成事業を立ち上げており、リスクがかなり少ないことは評価できそうだ。
同社では、2006年9月期の連結業績について、売上高600億円(前期比39%増)、経常利益40億円(同48%増)、純利益35億円(同41%増)と予想している。とくに、連結純利益について昨年12月15日に、従来予想の20億円から35億円に上方修正したことが注目される。
同社の株価はこの純利益予想の上方修正をキッカケに20万円台前半から上昇軌道に転じ、先週末の13日には前日比4万円トップ高の33万6000円まで急上昇をみせている。この1カ月間ですでに40%近くの急騰をみせているだけに、当面は高値波乱の推移も見込まれるものの、中期的には40万円を目指した値動きとなりそうだ。さらに、一昨年、昨年に続いて今年も9月決算期末には株式分割を実施する可能性もあり、目の離せない状態が続きそうだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」