ここにきて、クレジットカードの個人情報の大量流出問題、高校生がネット情報を利用して作った爆発物による殺人事件、アダルトサイトの未成年者への悪影響などネット関連犯罪の多発が改めて大きな問題としてクローズアップされてきた。
こうしたなかで、ネット上の有害情報の閲覧を抑制する「フィルタリングソフト」の開発や販売のリーディングカンパニーであるデジタルアーツ(大阪証券取引所ヘラクレス市場に上場)の将来性に注目が集まっている。
デジタルアーツの株価が先週の6月30日に急騰をみせ、一時ストップ高となる前日比5万円高の41万5000円まで買い進まれ、5月16日につけた年初来高値40万8000円を約1カ月半ぶりに更新した。翌日の7月1日も続伸して、一時42万7000円まで買い進まれるほどの人気を集めている。
株価が先週後半に急上昇をみせた直接のきっかけは、国内準大手のコスモ証券が6月28日付で「有害Webサイトの影響による犯罪防止で、個人家庭向け拡大へ」と題するリポートを発表し、投資判断を新規「B+」(5段階評価の上から2番目で、今後半年以内に株価パフォーマンスがTOPIXを5〜15%程度上回ると予想)でカバーを開始したことだ。
このリポートによると、「株価(6月28日終値の35万2000円)の今期予想PER96倍は高い数字ではあるものの、(1)有害ウェブサイトの影響による犯罪防止需要などから、伸び悩んでいた一般家庭向けが今期以降拡大ペースを高める公算が大きく、中期的に高めの利益成長を継続する公算が高きと考えられることや、(2)今期の会社計画は保守的と考えられ上方修正される可能性が高いことなどが株価の押し上げ要因として寄与する」としている。
同社の業績は、前期比の2005年3月期の経常利益(非連結)が1億3700万円(前々期は7700万円の赤字)。今期の2006年3月期から初めて導入する連結経常利益は2億5500万円に拡大する見通しだ。これは、文部科学省が小学校から中学校、高等学校までPCの積極導入を進めており、これに伴って同社の「フィルタリングソフト」が順調に拡大しているためだ。さらに、今後は家庭向けで大きな需要拡大に期待が寄せられている。
同社では、従来の主な市場だった業務用では、情報漏洩など、より企業の問題点に即して訴求している。また、学校では混迷のネットモラル教育の現場をサポートする企業や官公庁、教育機関向けの「サーバータイプ」の製品を開発し、その一方で今後の需要拡大が見込める家庭用では、子供から大人まで安心してネットのコンテンツを享受できる社会を実現すべく、一般家庭向けの「クライアントタイプ」と、2系統に収れんし大幅に改善している。
一般家庭向けは、家庭で子供のインターネット利用を管理するソフトウェアとして、顧客のPCに直接インストールして使用する。アダルトサイトや出会い系サイト、残虐なサイト、自殺誘発サイトなど、子供たちに見せたくないインターネットのサイト閲覧を遮断する。
新バージョンでは、新しい技術を搭載してできたばかりの未知のサイトに対してもフィルタリングの効果が発揮される。また、子供のネット利用という観点から機能が拡張し、家庭における個人情報保護から特定情報の送信を防止する機能を搭載している。そして、ウェブフィルタリング以外のオプション機能として、「安全なデスクトップ」機能を搭載。子供が使うアプリケーションを制限できるようになり、子供のいる家庭の「勝手にソフトを起動させ、問題が起こるのではないか」といった懸念を解決しているのが特徴だ。
企業や官公庁、教育機関向けソフトは、企業や学校など、複数の端末を同時に管理する環境で、サーバにインストールするタイプの製品だ。これまで国産のフィルタリングでは実現できなかったウェブブラウザ経由のほぼすべての通信内容に対してフィルターをかけることが可能となった。これにより、さらなる情報漏洩を予防する。これらの新製品は7月の中旬から下旬にかけて相次いで新発売される。
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