これまで欧州オンライン音楽について紹介してきたが、今回はこの分野の王者、Appleの「iTunes Store」の欧州における動向をまとめてみる。
合法音楽ダウンロード市場を立ち上げたiTunes。世界のオンライン音楽の4分の3を売り上げているといわれており、もちろん欧州でも人気だ。だが、Appleにとって欧州は何かとトラブルが多い市場かもしれない。
まずはiTunesローンチで、(おそらく)思いのほか苦労した。
英、仏、独の主要欧州3市場でiTunesがスタートしたのは、米国より1年遅れの2004年6月15日。英ロンドンで開かれた記者発表会で、Steve Jobs氏は大々的にiTunes欧州上陸を告げた。だが、実はこれ、当初の参入目標(2003年秋)より数ヶ月遅れてのサービス開始となった。遅れの理由について、Appleは公式には明らかにしていないが、各国毎のレコードレーベルとのライセンス処理に手間取ったためといわれている(Apple側は、充実したカタログでスタートするため、としていたようだが)。その間、新生Napsterが英国でストアをオープンし、ソニーが「Connect」の欧州展開計画を明らかにした。
だが参入の遅れにもかかわらず、iTunesは欧州の幅広いユーザーをひきつけた。Appleはオープン1週間で80万曲ダウンロードという数字を発表、ライバルの「On Demand Distribution(OD2)の16倍」と勝利宣言をした。
そうやってこぎつけたローンチの後にAppleが直面した問題は、価格だ。ダウンロード数は順調に伸び欧州市場を制したものの(2年後には展開国は17カ国に増え、ダウンロード件数は2億に達した)、米国価格との格差、EU域内での価格差が問題視されたのだ。
iTunesの米国での価格は1曲99セント、だが、英国は79ペンス、独や仏などのユーロ圏では0.99ユーロとなる。これらを米ドルに換算すると、それぞれ約1.58ドル、約1.33ドルとなる。
最初英国で持ち上がったこの価格差問題は、EUが介入するなど大きな問題に発展している。今年4月、欧州委員会(EC)はAppleおよびAppleが提携しているレコード会社に対し、各国で提供価格が異なることを指摘し、公式に異議を唱えた。
価格については、各国で率が異なる付加価値税などの税金の違いと見ることができるが、それだけではないという向きもある。CDの売上げが伸び悩む中、販売価格を少しでも吊り上げようとするレコード会社がAppleに値上げを迫り、Appleは提携の金額面を公開していない欧州市場で値上げを行ったという憶測だ。
このほかにも、iPod以外の端末との互換性も問題となった。
欧州で事業展開するのに障害や問題に直面している(したことがある)のは、Appleだけではない。Microsoft、最近ではGoogleと、大手はどこもEUか加盟国と一度は衝突しているようだ。
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