史上最年少で上場したアドウェイズ社長の行動力:前編 - (page 3)

構成:西田隆一(編集部)2006年07月13日 13時00分

岡村:当時、ヤフーで検索すると、検索結果があいうえお順で出ましたよね。あいうえお順よりもアルファベットのほうが優先だったので、Aでいろいろ考えていて、広告はADだから、ADで始まる言葉で何かカッコいいのはないかなと思って、Adways(アドウェイズ)となって、アドウェイズエージェンシーだと。

小池:なるほど、そういうことですか。それで、フィルターの会社を辞めた2人でやっていたといっても、システムとか作らなきゃならないでしょう。それはどうされたんですか。

岡村:それは外注に出したんです。最初は創業資金100万円で始めて、パソコンを買って残りが70万円ぐらいだったんです。その70万円でとりあえずはシステムを作ろうと思って、普通にシステムを頼んだら高そうだったので、当時住んでいた新大阪にある専門学校の前まで行って、パソコンができそうな学生に声を掛けて、「クリック保証型広告のシステムを作れるか?」という話をしたんです。

 「できる」と言う学生がいたので、彼に50万円を渡して待っていたんですが、結局、その学生はできなくて、そのお金も返してもらえなかった。

 お金もなくなったので、次は成果報酬でやってもらおうと思ったんです。ヤフーで「システム 大阪」と検索したら、システム屋がずらっと出てきたんで、上から順番に片っ端から電話して、こういう事業をやるんだけれども売上制でやってくれないかとお願いをしたら、やってみようという学生に出会って――彼はうちの役員になってあとで辞めたんですが――成果報酬で作ってもらっていたんです。

小池:成果報酬というのはどういう意味ですか?

岡村:広告売り上げの30%をシステム使用料金で支払うという契約でやっていたんです。

小池:なるほど。成果報酬型の商品を売るシステムも成果報酬でやっていたんだ。

岡村:リスクが全然ない(笑)。

小池:結局それがうまくいったわけですか。

岡村陽久氏

岡村:そうですね。2000年ぐらいのときはクリック保証型広告が主流というか、人気があったんですが、2001年ぐらいからクリック保証型だと費用対効果が合わないと思うクライアントが増えてきたんです。うちはクリック保証型ではなくてその先の成果報酬型だということで、結構ニーズがあったんです。それで、クライアント数もけっこう順調に取れました。今と比べたら大したことはないですが、売上も思った以上に上がりました。

小池:そのとき、社員は何人ぐらいですか。

岡村:始めたときは3人です。株式会社になったのと同時に成果報酬を始めたので、それが2001年2月か3月ぐらいですが、その時は僕も入れて3人ぐらいでした。

小池:今は日本だけで社員が100人を超えていますよね。社員も採用して、今のモデルのアフィリエイトに変えていくのはいつ頃だったんですか。

岡村:2003年ぐらいまでは、いわゆる成果報酬といっても大きく分けて、アフィリエイト型とアクション型と2つのタイプがありました。アクション型というのはメディアも選べないし、成果に関しても全部お金を払わなければならない、成果の承認もできない、ただ成果報酬型だというだけです。メディアも選べて成果の承認もできるというのが、アフィリエイト型です。

 2001年から2003年ぐらいは、アクション型のほうが儲かっていたんですが、2003年ぐらいからアクション型はクライアントが嫌がり始めたんです。

 それで、2003年の真ん中ぐらいで、前の事業をやめて一気にアフィリエイト型に全部切り替えたんですが、ちょうど2004年ぐらいからアフィリエイトがブームになって、もちろんうちだけではありませんが、アフィリエイトの会社がぐいっと伸びました。あのときに切り替えなかったら、うちも時代の波に乗れなかったかなとは思っています。

小池:2000年に事業を始めてから2003年前までやってきて、その間にいろいろ苦しい時はなかったんですか? 普通、起業するといろいろ苦しい時を乗り越えて、みたいなことがありますよね。わりと順調に来ちゃったんですか。

岡村:もちろん、うちもいわゆるピンチみたいなこともありました。例えば、うちは2001年10月に7000万円事件というのがあったんです。うちの2001年(1年目)の売り上げって1億3500万円なんです。

小池:1年目からもう1億円超えたわけですか。

岡村:ええ、なんとか。1億3500万円だから月次にすると大体1000万円ぐらいですよね。それが2001年11月に、前月まで1000万円だった売り上げがいきなり8000万円に跳ね上がったことがあったんです。前月に比べて7000万円も増えたんですが、それが1件のお客様だったんです。これはすごい儲かったなと思って、新卒の採用も始めて、社員旅行も企画して、「えらい儲かる企業になっちゃったな」と思っていて、実際に11月末に請求してみたら、7000万円なんて払えないとクライアントが言い出したんです。

 ところが、うちは成果報酬なので、クライアントから7000万円いただいて、当時は50%ぐらいメディアに渡していたので3500万円は払わなきゃいけないんです。仕組み的に言うと、クライアントとうちの間に代理店が入って、代理店とうちとの間では1件2万円だったんです。で、3500件の申し込みがきたので7000万円という契約だったんですが、代理店とクライアントの間では1件の申し込みが200円だったんです。なので、70万円しか払えないとクライアントが言い出した。要は、代理店が間違えて契約を結んでしまったというオチなんですが。

 最初の契約の3日目に代理店に電話して、「結構申し込みが来ているが、払えるのか」という確認を入れているんですが、代理店の担当はその時点でビビって大丈夫だと言っちゃったんですよね。そこからうちも2日に一遍ぐらい電話していたのですが、「大丈夫だ」と言うので問題ないと思っていたら、代理店の担当が怖くて言えなかったという話でした。

 うちもメディアから「大丈夫なのか、その料金は払えるのか」とバンバン電話が掛かってくるんです。で、「クライアントに確認を取ると大丈夫だと言っているので、大丈夫です」と言っていました。その時点で仕入れが3500万円発生したんです。貯金が200万円ぐらいしかなかったんです。これは払えないと思って……。

後編に続く・後編で岡村さんの7000万円事件の見事な対応策が明かされます。掲載日は7月18日の予定です。)

小池 聡

iSi電通アメリカ副社長としてGEおよび電通の各種IT、マルチメディア、インターネット・プロジェクトに従事。1997年にiSi電通ホールディングスCFO兼ネットイヤーグループCEOに就任。シリコンアレー、シリコンバレーを中心にネットビジネスのインキュベーションおよびコンサルティング事業を展開。1998年にネットイヤーグループをMBOし独立。1999年に日本法人ネットイヤーグループおよびネットイヤー・ナレッジキャピタル・パートナーズを設立。現在、ネットエイジグループ代表取締役、ネットエイジキャピタルパートナーズ代表取締役社長などを務める。日米IT・投資業界での20年以上の経験を生かしベンチャーの育成に注力。

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