6月20日に東証マザーズに新規上場した携帯電話・パソコン向けにアフィリエイト(成功報酬)広告事業を展開しているアドウェイズへの売買に誤発注が発生したことを受け、東証をはじめとした各証券取引所が相次いで新規上場銘柄の初値決定前の誤発注防止プログラムを稼働させている。
アドウェイズ(証券コード番号2489)株は、新規公開当日の6月20日、差し引き1000株以上の買い注文を受けて買い気配でスタートしたものの、午前9時10分に突如公開株数を上回る大量の売りを浴びて147万円(公開価格140万円)で初値がついた。市場関係者の多くは「アドウェイズはネット関連の人気株で、少なくとも初値は公開価格の2倍に当たる280万円は超える」と見ていただけに、突然の大量売りによる予想外の低水準の初値形成に驚きの声が上がった。そして、まもなくこれが誤発注であることが判明した。
当日誤発注問題で記者会見した立花証券の土屋卓洋副社長は「機関投資家から同日に新規上場したCDG(証券コード番号2487)に1670円で2600株の売り注文が入った。ところが、当社のトレーダーが証券コード番号を“2489”と間違えて売りを執行した。すぐに注文を取り消したものの、143〜147万円で1482株が約定。約定代金は21億円5000万円だった」としている。
なお、CDGは企業が使用する販促物(セールスプロモーショングッズ)の企画・販売を主力事業としている。
さらに、立花証券では誤発注が起きた背景について、(1)コード番号を間違えた、(2)値幅制限のない新規上場銘柄であったこと、(3)発行済み株式数の3割未満の株数であったこと――をあげた。上場初日にとんでもないトラブルにみまわれたアドウェイズのその後の株価は、順調に上昇トレンドをたどり、先週末の6月30日には一時、342万円(公開価格140万円に比べて2.4倍)まで買い進まれている。
2005年末のジェイコム(*)の誤発注問題を受けて東証では、発行済み株式の30%超の注文を自動的にブロックするシステムを導入していたのに加え、6月26日には価格面でのチェックプログラムも稼働させた。これは、板の中心値段を基準に上限4倍プラス値幅制限、下限4分の1マイナス値幅制限というものだ。
わかりやすくいうと、初値が付く前の新規上場株の売買について、注文価格が公開価格の4倍(プラス値幅制限値)を超えるか4分の1(プラス値幅制限値)を下回る場合は自動的に注文を受け付けないという制度だ。つまり、“たら・れば”の後講釈になるが、価格面でのチェックプログラムがあと1週間早く導入されていれば、今回の誤発注は未然に防げたことになる。大証でも、6月26日から東証とほぼ同様のシステムを稼働させている。
実は、ジャスダックはすでに2004年の取引所化と同時のタイミングで、4倍上限・4分の1下限の注文範囲を設定した価格面でのブロックシステムを導入しているのだ。ジャスダックでは、6月26日からこれに加え新たな誤発注対策として、上場株式数の30%を超える注文を遮断するプログラムを稼働させている。
今回の誤発注問題について証券会社からは“明日はわが身”ということもあって、これまでに表立った発言はみられない。しかし、準大手証券のトレーダー部門の幹部からは「残念ながら、小規模の誤発注はどこの証券会社でも日常的に起きているのが実情。小規模な誤発注の処理は、通常証券会社が自己売買部門の勘定で内部処理している。したがって、価格が4倍から4分の1以内、株数で発行済みの30%以内であれば、今後も誤発注が起きる懸念は残る」としている。
また、投資家への影響については「これまでに発覚した誤発注はいずれも証券会社のミスで、投資家に被害がおよぶ(逆にすばしこい個人投資家が大儲けしたケースはある)ケースは少ない。また、上限4倍、下限4分の1という範囲の売買注文の限定では、上場以降の株価形成に支障を与える可能性は少ない」(市場関係者)とみている。
*ジェイコム株の誤発注問題‥‥2005年12月8日の前場の午前9時27分、みずほ証券は、同日東証マザーズに新規上場した人材派遣会社のジェイコム株の売買注文で、1株61万円とで売りと発注するところを、誤って61万株を1円で発注する指値で空売りを実行した。この売り注文を受け株価は9時30分に、57万2000円でストップ安まで売り込まれた。みずほ証券は、東証に注文の取り消しを要請したが、この取消要請は東証のシステムに受け入れられなかった。そのためみずほ証券では、買い戻しを実施。推定では約51万株の買い戻しをかけたとされ、最終的には、77万2000円のストップ高となり、単純計算でも、みずほ証券自体が270億円の損失を被ったとされている。
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