携帯端末の生産が自由化
中国国家発展改革委員会は2005年2月、以前から噂されていた携帯端末生産のライセンス制度の廃止を決定した。このライセンス制度とは、中国で携帯端末を生産するにあたって、中国企業・外国企業にかかわらず政府の認可が必要だというものだ。このライセンス制度の廃止に替わって、中国での携帯端末生産は許可制となり、市場参入への障壁は緩やかになる。
中国では実質上、国産の携帯端末しか販売できない。海外の携帯端末メーカーが中国市場に進出する場合も、端末の生産は中国国内にて行わなければならないのだ。しかし中国政府は、国産メーカーを保護するため、海外メーカーに対する端末生産のライセンスを厳しく制限し、2000年以降外資系企業に新たなライセンスをほとんど発行していない。ライセンスを受けた外国メーカーも、独資で工場を設立することが認められず、中国企業との合弁が条件であった。唯一の例外は、最も早い時期に中国に進出したモトローラで、通信インフラ全般において中国に多額の投資を行ったため、独資による携帯端末の生産が認められた。
北京にある携帯電話販売店の店内
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1990年代の中国携帯端末市場は、ほとんどが海外ブランドのものであった。市場規模が急激に拡大すると、中国政府はそれまでの放任姿勢から携帯端末生産を民族産業として育てる路線へと傾いてきた。そこで中国政府は、外資系企業へのライセンス発行を制限する一方で、国産メーカーのTCLやハイアール、バードといった企業に携帯端末の生産を許可した。中国市場の最前線で販売経験のあるこれらのメーカーは、中国消費者の考えを熟知し、全国の隅々までカバーする販売ネットワークを持っている。こうしたマーケティングのノウハウや独自の営業戦略によって、国産メーカーは2000年から着実にシェアを伸ばしはじめた。特に数量の多いローエンド端末の売れ行きが良く、2003年にはバードとTCLが、万年上位を独占していたモトローラとノキアを追い越して、年間販売台数の1位と2位を獲得した。
元々携帯端末の設計や生産のノウハウを持ってない中国の家電メーカーだが、短い準備期間で端末を売り出すことができたのは、台湾や韓国の携帯端末デザイン会社やOEM(Original Equipment Manufacturer)企業のソリューションを採用したためだ。中国政府が「国産端末」とする定義は曖昧で、海外から完成品に近い部品を調達し、国内の工場で組み立てて出荷すれば国産端末となる。ほとんどの国内メーカーは自社で研究開発の機能を持たず、OEMかODM(Original Design Manufacturer)で端末を調達し、自社ブランドの下で販売していた。この方法は、端末提供までの期間短縮と低コスト端末の生産を実現したが、品質管理が困難で、海外ブランドの製品と比べるとケタ違いに不良品が発生することもあった。筆者の知る某中国メーカーは、あるモデルで10%以上の不良品を出したほどだ。
また、バードやTCLの成功から一斉に増産に踏み切った各国内メーカーは、過剰供給に陥った。新規参入者の増加による激しい競争の中、新機種が1年に500モデルも発売されたといわれる。業界筋の情報によると、年間需要約7000万台の中国携帯端末市場において、2004年末のメーカー全体の在庫は7000万台にのぼるという。2003年に市場シェア55%を占めた国内メーカーは、2004年にはシェアを41%まで落とした。
今後生産ライセンス制度の廃止によって、中国市場では更に多くの新規参入者が見込まれ、端末メーカーの競争が一層激しくなることが予想される。
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