アップルを待ち受ける「成長の限界」 - (page 4)

文:Adrien Lamothe 翻訳校正:坂和敏(編集部)2006年05月02日 19時54分

 Mac OS XとLinuxはWindowsと比べてセキュリティの脅威にさらされにくい。これがWindowsに対する両者の差別化要因となっている。これは消費者市場では強力なセールスポイントであり、Mac OS X とLinuxの普及を後押しするものとなるだろう。少なくとも、ソニーのPlayStation 3のおかげで、まもなくLinuxユーザーが劇増することは間違いない。アナリストの予想によれば、PlayStations 3の販売台数は2億台に達する見込みだ。これは2億台のLinuxコンピュータが若者(5〜18歳)を中心とする人々の手にわたることを意味する。これは驚異的な数だ。Linuxを主流に押し上げるために、これほど効果的な方法はないだろう。

 消費者市場でLinuxが普及する可能性を疑問視する声もある。ひとつの理由は、プリンタ、ビデオカード、スキャナーといった周辺機器のデバイスドライバの問題だ。Linuxコミュニティでは、この問題は以前から指摘されてきた。Linuxコミュニティの中心を占めているのは技術に詳しいユーザーとマニアだ。デバイスメーカーがLinuxコミュニティと密接に連携する可能性はなく、したがって、Linuxが消費者市場に受け入れられることもない、というのが一般的な見方となっている。

 ソニーやLenovoには、この問題を他社よりも容易に解決できる可能性がある。AppleはMacの製造のあらゆる側面を管理することで有利な立場を維持しているが、ソニーとLenovoも自社製品のほとんどの側面を管理しており、規模の経済を利用して、自社製品に利用する部品を選ぶことができる。Linuxと互換性を持たせたいなら、Linuxと互換性のある部品を使い、標準化されたシステムを構築すればいい。すでにIBMはこのアプローチを採用して、IBM ThinkPadがLinuxシステムで動作することを確認している。Linuxはプリンタ、スキャナー、デジタルカメラなど、幅広い周辺機器とも互換性がある。映像性能の最適化にはまだ問題がかかるかもしれないが、ソニーはnVidiaと密接に連携して、PlayStation 3のビデオコントローラ開発に取り組んでいる。

性能の問題

 Appleが直面している問題はほかにもある。「Macworld」誌は先ごろ、新型Macの独立ベンチマークテストを実施し、新しいデスクトップMacはAppleが主張しているほど高速ではないと結論した(ノートPC 「MacBook Pro」のベンチマークテストの結果は、同PCの発売後に発表される予定)。

 Appleは「Rosetta」と呼ばれるPower PCエミュレータも提供している。Rosettaを利用すれば、Powerアーキテクチャ向けに書かれたMac OS Xプログラムを、Core Duoシステムでも走らせることができるようになる。しかしベンチマークの結果、Rosettaを利用すると、ネイティブ環境で動かした場合と比べて、Photoshopの一部の機能は約50%も遅くなることが分かった。これはPhotoshopを仕事で使う場合、Rosettaは使いものにならないことを意味している。Photoshop以外のアプリケーションでは、Rosettaの結果はまちまちだった。

 Appleは「Universal Binary」という認定プログラムも導入している。これはPowerアーキテクチャとCore Duoアーキテクチャの両方にネイティブ対応したソフトウェアを認証するもので、ソフトウェアメーカーにとっては、1つのパッケージに2種類のプログラムを組み込むことを意味する。Appleはコンピュータを買い換えるつもりはないが、今すぐソフトウェアを購入する必要があり、いずれコンピュータを買い換えた時に、同じソフトウェアを買い直したくないと考えている顧客のために、独立系ソフトウェアベンダーがこのアプローチを採用することを望んでいる。「Adobe Creative Suite Production Studio」(Photoshopとその他のAdobe製品をバンドルしたソフトウェア)の小売価格は1700ドルだ。これを買い直すとなれば、大変な出費になる。AppleはOS 9からMac OS Xに移行した時も同じ問題に直面しており、今回は同じトラブルは避けたいと考えている。

 今のところ、Adobeやその他のソフトウェアメーカーは自社製品のUniversal Binary化に二の足を踏んでいる。新たな出費が発生するだけでなく、流通チャネルを混乱させる可能性があるからだ。おそらく、ソフトウェアベンダーはアップグレード版を提供するだろう。ベンダーにとっては、その方が都合がいい。今後発売されるソフトウェアがUniversal Binaryとなるかどうかは、まだ推測の域を出ない。

 近年、Appleとソフトウェアデベロッパーの関係はやや緊張している。Appleは新しいアプリケーションを開発し、Mac OS Xにバンドルするか、単体で販売している。Macworld Expoでは写真処理プログラムの「Aperture」が大々的に展示された。Apertureは大量の写真を簡単に整理できる強力な写真管理プログラムだ。ApertureにはAdobeのPhotoshop等に搭載されている基本的な写真編集機能の多くが備わっている。AppleはApertureを「プロのフォトグラファーのために開発された」プログラムと表現する。

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