VRは恐怖症の克服に革命を起こす--なぜ普及が進まないのか

Lisa Eadicicco (CNET News) 翻訳校正: 石橋啓一郎2023年12月30日 07時30分

 ニュージーランドで働く営業マネジャーのSam Stokes氏は、普段は特に心配性な性格ではない。しかし、どうしても怖くてたまらないものが1つだけあった。それは注射の針だ。

 同氏の注射恐怖症は深刻で、針を刺されるのが嫌で定期健診を受けることもできないほどだった。現在40歳のStokes氏は、20代の頃に、どうしても血液検査を受けられなかったときのことを思い出す。一度は採血のために検査施設まで行ったのだが、結局検査を受けられなかったのだ。パートナー(現在の同氏の妻)に説得されて最後には検査を受けたのだが、Stokes氏はそのときのことを、これまでで最も恐ろしい体験の1つだったと語った。

 「途中で少し気が遠くなって、べっとりと汗をかいたりした」と同氏は言う。「とにかく、その経験すべてが本当に嫌だった」

 しかしコロナ禍が起こると、Stokes氏は、このまま注射恐怖症に足を引っ張られるわけにはいかないと考えるようになった。頻繁にワクチンに関する話題が流れるため、ニュース番組を見ることさえ難しくなったからだ。

 「ニュースの3回に1回は注射針のイメージがテレビに映され、私はそれを見て縮み上がっていた」と同氏は言う。

 しかし、Stokes氏がワクチンを接種できる時期になった頃には、少しも不安を感じなくなり、手汗が出ることも、冷や汗をかくこともなくなっていた。

 Stokes氏は、仮想現実(VR)によって恐怖症を克服した。VRは、Metaやソニーなどの大手IT企業が、未来のゲームやオンライン交流の中心になると考えている今話題の技術だ。Appleも2023年6月、同社初の空間コンピューター「Vision Pro」を発表した。

 VRを使って不安を和らげ、恐怖症を克服するというアイデアは、特に新しいものではない。この種の研究は、1990年代から始まっている。しかし、2016年に初代「Oculus Rift」や「HTC Vive」のような最新のVRヘッドセットが登場したことで、この技術をメンタルヘルスケアの改善にどう活用できるかという議論が再燃することになった。

VRヘッドセットを使う人
提供:Department of Psychiatry, University of Oxford

 ところが今になっても、しかもコロナ禍によるストレスや不安、燃え尽き症候群などの問題に注目が集まっているにもかかわらず、人々の口の端に上がっているのは、いまだにVRの効果ではなく可能性の話でしかない。人ごみの恐怖を克服するためにVRヘッドセットを装着することが、地下鉄通勤の前に専門家に電話するのと同じくらい当たり前のことになるのはかなり先のことになるだろう。しかもこれは、技術的な問題があるからではない。主な問題は、コストの高さやVRの普及の遅れ、そしてVR療法に対する認識が広がっていないことだ。

 米エモリー大学医学部の臨床研究担当副学部長であり、心理療法にVRを活用する方法について検証した論文を1995年に発表したBarbara Rothbaum博士は、「今頃はもっと先に進んでいるものだと思っていた」と述べている。「私は、VRを治療介入に使用する人がもっと増えると考えていた」

 例えば、Stokes氏がVR療法を試したのは、ニュージーランドのクライストチャーチにあるオタゴ大学と、恐怖症に対処するためVRアプリケーションを開発したoVRcomeが共同研究を行っていることをテレビのニュースで目にしたからだった。

 「ほかの恐怖症と違って、この問題には期限があった」とStokes氏は述べた。「私は、自分がいずれコロナワクチンを打つ必要があると知っていた。そのため、これはチャンスだと思った」

VRの進化

Google Cardboard
Google Cardboard
提供:Getty Images

 今はスマートフォンに「Google Cardboard」のヘッドセットを取り付けるだけで、20ドル(約2800円)以下でVRを体験できる。Rothbaum氏らが、1995年に論文誌「American Journal of Psychiatry」で発表した研究に取り組んでいたときには、そのような状況ではなかった。同氏らが当時行っていた、暴露療法で高所恐怖症を治療する手段としてVRを活用できるかどうかを調べる研究には、15万ドル(当時のレートで約1400万円)のコンピューターと1万6000ドル(同約15万円)のヘッドセットが必要だった。

 そのコンピューターはサイズが大きく、冷却の必要もあったため、別室に置かなければならなかった。実験は、Rothbaum氏がいる小さな部屋の中で、ヘッドマウントディスプレーを着けた患者が、コンピューターを操作する大学院生とインターホンでコミュニケーションを取りながら進められた。

 「当時の運用は非常に大がかりなものだった」と同氏は言う。

 1990年代にVRヘッドセットを見つけるのは簡単なことではなかった。お気に入りのモデルの1つが生産中止になったときには、自分の研究を続けられるか心配になったという。

 そのときは「これで終わりだと思った」と同氏は話した。「これで研究はおしまいだと」

 幸い、そうはならなかった。市場はいまだ小さかったものの、ほかにもヘッドセットが登場し始め、価格も以前より安くなることが多かった。Rothbaum氏は、長年にわたってそれらのヘッドセットを数多く収集してきており、同氏の自宅のオフィスには、ヘッドセットが並んだ博物館のような展示ケースが置かれているほどだ。

 気に入っていたヘッドセットと、その他のヘッドセットでは何が違ったのかと尋ねると、同氏は「一番大きな違いは解像度だ」と答えたあと、「しかし、30分間着けていると不快になるようでは、それを使うのは難しい」とした。

 現在のVRヘッドセットにも、バッテリー持続時間や度入りメガネとの相性が悪いといった使い勝手の問題はある。しかし、Rothbaum氏が90年代に使っていたシステムと比べれば、はるかに進歩しているのは間違いない。Counterpoint Researchの調査によれば、現在VR市場で優勢なのは「Facebook」運営元のMetaで、2023年第2四半期時点での市場シェアは50%に達している。

 同社のヘッドセットである「Quest 2」の価格は400ドル(日本では税込4万7300円)で、外付けのコンピューティングデバイスに接続しなくても、単独で動作する。その1つだけを取っても、ゲームやアプリケーションを実行するには強力なコンピューターと有線で接続する必要があった、2016年頃の初代「Oculus Rift」や「HTC Vive」よりも大幅に進歩している。ソニーも2023年2月、鮮やかなディスプレイや、ハプティック技術、視線追跡技術を搭載した「PlayStation VR2」を550ドル(日本では税込7万4980円)で発売したが、こちらは「PlayStation 5」に接続する必要がある。

 コロナ禍の間に自宅で楽しめる没入型エンターテインメントの需要が高まったことや、メタバースに話題が集まったことで、VRの注目度は高まった。

 市場調査会社IDCのリサーチディレクターRamon Llamas氏は、「とは言え、完全な形でメタバースが実現するまでには、まだ10年はかかるだろう」と述べている。「しかしそれまでの間に、VRには多くの楽しみや、興味深いイノベーションがもたらされるはずだ」

VR療法を試してみる

 Rothbaum氏の研究以降、多くの研究や論文が発表されてきた。2021年に行われたスコーピングレビュー(特定の研究領域の状況を総合的に把握するために行う先行研究の調査)では、特定の恐怖症の治療にVR暴露療法を使用した19件の研究について調査しており、そのうち12件では、VRは不安の軽減に効果があったという結論が出ている。

 その理由は、実際に試してみれば分かるはずだ。筆者は、VR療法を行っているニューヨークの臨床心理士Howard Gurr博士に、同氏が患者に使用している、Amelia Virtual Careと呼ばれる会社のソフトウェアを試させてほしいとお願いした。

 アプリを起動し、自分のスマートフォンをVRヘッドセットにセットすると、筆者は車の運転席に座っていた。普通なら、とても不安に感じる状況だ。筆者は、ニューヨークに住んで10年以上になるため、もう10年ほどは車を運転していない。

Amelia Virtual Careのソフトウェアを体験する筆者
Amelia Virtual Careのソフトウェアを体験する筆者

 筆者は神経質なタイプのドライバーであるため、公共交通機関やUberで移動できる都会に住むようになって、解放されたと感じてきた。しかし、Stokes氏がコロナウイルスの予防接種を受けるために注射恐怖症と向き合ったように、郊外に家を買って夫と家庭を持つ予定である筆者も、自分の不安を解消する必要がある。

 仮想世界で路上に出る体験は、現実とは違った。シミュレーションはCGのアニメーションで作られたもので、物理的なハンドルやアクセルペダルはなかった。自分では加速することもブレーキを踏むこともできず、別の車線に合流するタイミングも選べなかった。自分で運転しているというよりは助手席に乗っているような感じだったが、いくつかの神経質な反応が起きるだけの没入感があった。

VRの映像
提供:Amelia Virtual Care

 例えば、サイドミラーでトラックが近づいてくるのに気づいたときには、胃に馴染みのある痛みを感じた。また、本物の車に乗っているわけではないのに、目の前の道路から目を逸らすべきではないと感じた。

 筆者は高速道路に集中していたので、シミュレーションが始まってから数分経つまで、仮想的な後部座席に乗っていた人に目をやることさえできなかった。土砂降りの雨の音やトラックや車が猛スピードで走る音で、自分のオフィスに座っていることを忘れそうになったが、その一方で、自分がハンドルを握っているように感じるわけでもなかった。

 Gurr氏にリモートから管理されていたこの経験は、スマートフォンを使った20ドル以下で作れるヘッドセットで実現したものだ。このような作動環境が採用されたのは、この技術をできるだけ手頃な価格で利用できるようにするためだという。

 しかし、もっと大がかりな作動環境を使用するケースもある。例えば、ニューヨークで活動する臨床心理士であり、論文誌「American Journal of Clinical Hypnosis」にVR療法に関する研究論文を発表したJoseph Hirsch博士が使っているものがそうだ。同氏は、飛行機恐怖症の治療に、乱気流の感触を正確にシミュレートするために、スピーカー付きの振動プラットフォームを使用していると話してくれた。

恐怖症以外にも

 恐怖症の治療にVRを利用するのは当然の成り行きのように思える。バーチャルな飛行機に乗ったり、デジタルの摩天楼から見下ろしたりすれば、ただ想像しただけの場合よりも、はるかに鮮明にその情景を感じられる。Gurr氏は、ここまで表現が詳細で、没入感が高くなると、恐怖症を克服するプロセスを早めることができると述べている。

ビルの上から見下ろすVR映像
提供:Amelia Virtual Care

 「患者によっては、7回から9回のセッションで治ってしまう」と同氏は話した。「従来の療法ではそんなことはできない」

 またVRが、辛い現実を紛らわす気晴らしや、新しいタイプのコンフォートゾーン(安心を感じられる場所)になる場合もある。カリフォルニアでVR療法を提供しており、夫婦や家族の問題に関するカウンセラーの資格を持っているMonet Goldman氏は、多くの専門家よりもこのことを理解している。

 Goldman氏は、2022年の前半に、VRが特に大きな影響を与えたカウンセリングセッションを経験したと話してくれた。それは、完全に心を閉ざしてしまっており、質問に一言でしか答えられない少年のカウンセリングだった。しかし、同氏とその少年がVRでゲームを始めた途端に、状況は変わった。同氏によれば、少年の様子は「普段とまったく違っていた」という。

 「それらはその少年が一番得意なことで、彼がその腕前を披露できる機会を得られたからだろう」と同氏は説明した。「少年は私にそれを教えてくれて、私はそれを目撃した。このような機会は、そうした子どもの自尊心や達成感を高めることにつながる」

 普段からVRに親しんでいる人たちでさえ、VRを使った新しいストレス解消法を見つけている。「TikTok」「YouTube」「Twitch」に計数百万人のフォロワーがおり、Naysyの名前で知られているAnais Riley氏は、仕事上の不安を和らげるために、人気のVRダンスゲーム「Beat Saber」を利用している。このゲームは、Riley氏にストレス要因と戦うために必要なものを提供してくれるのだという。運動や達成感、現実世界からの逃避、そして幼い頃に興味を持っていた音楽やダンスに触れる機会だ。

Beat SaberをプレイするRiley氏
提供:Youtuber Naysy

 「このゲームをプレイすると、自分の状態がよくなっていくのを感じられてうれしかった」と同氏は言う。

 しかし、VRは不安や恐怖症を消し去る魔法の杖ではない。これは、専門家が暴露療法を行うために使える道具が1つ増えたというだけのことだ。暴露療法とは、恐怖症を誘発する刺激に晒すことで、患者が恐怖を克服するのを手助けする精神療法のことを指す。

 Rothbaum氏は、VR療法を、エレベーター恐怖症を治療するために本物のエレベーターを使うのと同じようなものだと説明した。「私は暴露療法の訓練を受けており、患者によってエレベーターの使い方を変えている」と同氏は言う。「つまり、これは単なるツールにすぎない。それ自体はエレベーター療法ではない」

いまだブレイク待ちのVR

 最大の問題は、単純にVRが日常的に使われていないことだ。もしVRヘッドセットがスマートフォンと同じくらい普及していたら、専門家はそれを診療に取り入れる方法を懸命に模索していただろう。しかし現時点では、相談者がVRを使っていないため、専門家がVRについて学んだり、投資したりするインセンティブはほとんどない。

 南カリフォルニア大学の精神科および老年学部の研究教授であるAlbert "Skip" Rizzo博士は、「ボトルネックになるのはいつでもコストだ」と述べている。

 IDCの統計によれば、2023年のVR・ARヘッドセットの出荷台数は、全世界で850万台となる見込みだ。比較のために数字を挙げると、スマートフォンは、2023年第3四半期だけで全世界で3億280万台出荷された

 Bloombergは2023年1月、Appleのヘッドセットの発売は、VRがブレイクするきっかけになるかもしれないと伝えていた。6月に発表されたこのVision Proは3499ドル(約50万円)と高価だ。しかし、スマートフォンやタブレット、スマートウォッチなどの新技術を普及させてきたAppleの実績を考えれば、VRヘッドセットでも同じことが起きると期待されても不思議ではない。

 「Appleは、業界全体を上げ潮に乗せる手段を持っている」とLlamas氏は言う。「同社の参入は注目を集め、多くの場合その市場に正当性を与える。VRだけが例外だとは思わない」

 VRを使った診療サービスを提供しているセラピストやメンタルヘルス専門家がどれだけいるかは不明だが、その手がかりとなるデータはある。筆者が体験したソフトウェアを提供しているAmelia Virtual Careの創業者Xavier Palomer氏は、このシステムは2万人以上の患者の治療に使用された実績があると述べている。同社のプレスリリースによれば、このソフトウェアは全世界で2000人以上のメンタルヘルス専門家に使用されているという。

 また、Stokes氏が参加した臨床試験で使われたソフトウェアを提供したoVRcomeの創業者であるAdam Hutchinson氏は、このプログラムは30カ国以上で使われていると述べている。

 Gurr氏も、VRを使った診療サービスを提供している専門家の非公式なリストを作っている。同氏のウェブサイトには約60人のセラピストが掲載されているが、その大半は米国の臨床心理士だ。臨床心理士は通常、州によって異なる免許要件を満たす必要がある。Association for Behavioral and Cognitive Therapies(行動・認知療法協会)の名簿には、VR療法が可能な専門家が28人掲載されている

 ジョージワシントン大学の「Behavioral Health Workforce Tracker」のデータによれば、米国内だけでも約70万人の行動保健学の専門家が存在するため、それに比べればその数は非常に少ないと言わざるを得ない。70万人のうち、53万9714人がカウンセラーかセラピストだ。

 「VRは効果的ではあるものの、まだ発展途上だ」とGurr氏は言う。「そして現場の専門家は、自分が理解していない技術や訓練を受けていない技術を取り上げることには消極的だ」

 VR療法を利用できる機会が少ないこと以外に、学習曲線の問題もある。メンタルヘルスの専門家がVRについて理解し、患者や相談者のニーズにどう応用できるかを学ぶためには時間がかかる。

 ゲームをして育ち、ゲームボーイで遊んだ経験を懐かしむGoldman氏のような人物でさえ、相談者と適切な形で関われるように、プライベートな時間にVRゲームの練習をしている。

 Goldman氏は「ゲームそのもの以外にも、多くのトレーニングや教育を受ける必要がある」と述べている。

VRヘッドセットのイメージ画像
提供:Robert Rodriguez

VR療法を普及させようとする企業

 Hutchinson氏は、専門家を含む一般大衆がVRを日常的に利用するようになるまでには、かなりの時間がかかるかもしれないと考えている。それが、すでに多く人が日常的に使っているスマートフォンから取り組みを始めた理由だ。oVRcomeは、ほかにも専門家向けの診療ツールを提供しているが、同社はまず、臨床心理士が開発した、専門家の監督を受けずに誰でも使えるVR療法プログラムを配布することから始めた。

 「oVRcomeの目標は、VR暴露療法を用いた不安障害の治療を、より簡単に手頃な価格で受けられるようにすることだった」とHutchinson氏は言う。

 このプログラムを使用した参加者は、最初はそれほど不安を感じない仮想環境に置かれ、徐々により直接的に不安を感じる環境へと進んでいくことになる。例えばStokes氏の場合、最初の方のステージでは仮想的なワクチン接種のためのテントの外にいたが、最後のセッションでは、注射の準備を終えた看護師のそばに座らされたという。

 「私たちがやりたかったのは、クリニックで暴露療法を提供する際のモデルを作ることだ」とHutchinson氏は説明した。

 一方、筆者がGurr氏とのセッションで使用したAmeliaのソフトウェアは、メンタルヘルスの専門家の監督下で使用することを前提として設計されている。同社の製品には、ヘッドセットと患者の発汗反応を測定するための皮膚電気反応センサーがセットになったVRキットや、100種類以上の仮想シミュレーションが利用できるVRソフトウェアプラットフォーム、VR療法を遠隔で実施するためのアプリケーションなどがある。また、入門コースやチュートリアル、マニュアル、マーケティングガイドなどの、トレーニングやサポートのための資料も提供している。

 Ameliaの創業者であるXavier Palomer氏は、飛行機を怖がる友人を見て、2013年頃にこのアイデアを思いついた。同社が設立されたのは2014年だったが、Palomer氏によれば、変曲点を迎えたのは、サムソンの「Gear VR」のようなVRデバイスが普及し始めた2016年の終わりから2017年のはじめ頃だったという。また、コロナ禍も人々のメンタルヘルスやセルフケアに対する意識を高めた。

 「人々は、精神的な問題について以前よりもオープンに話し、解決法を探したり、実際に助けを求めたりするようになった」とPalomer氏は言う。

 Rothbaum氏によれば、従来の常識では、ある研究が発表されてからその技術が一般に使われるようになるまでには、20年ほどかかると言われている。それが正しければ、VRはすでに普及しているはずだ。しかしGurr氏は、少し違った見方をしている。同氏の考えでは、その期間が始まったのはRothbaum氏らが研究内容を発表した1995年ではなく、現代のVRヘッドセットが安価になり、広く入手できるようになった時期だという。

 「VRが誕生してからかなりの時間が経つが、私は2015年がスタート地点だと考えている」と同氏は述べた。「つまり、VRが始まってからまだ7、8年しか経っていないということだ」

 Stokes氏はVRについてはよく知っていたが、oVRcomeの研究を知るまでは、注射針恐怖症に対処するためにVRを使おうと考えたことはなかった。実際、同氏には、もともと恐怖症の治療を受けるつもりはまったくなかった。しかし今は、ワクチン注射や血液検査を受けることを考えても、まったく気にならなくなった。

 「今なら、私の机の上に注射針が置いてあったとしても、まったく平静でいられるだろう」と同氏は言う。「これは実際、凄いことだ」

本記事のカバー画像
提供:Brandon Douglas

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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