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学生が「ChatGPT」を使いたがらない理由--使わせるコツは「就活」

 「ChatGPT」の活用が進んでいる。全社で導入する企業や自治体も増えており、業務効率化における成功例なども報じられている。

 ChatGPTの活用はメリットをもたらしそうだが、これから社会に出る大学生の利用実態はどうなのか。大学生の活用を促すためには、どうすればいいのだろうか。

ChatGPT利用に腰が重い学生たち

 大学の講義で、受講生に複数回にわたり、ChatGPT利用実態アンケートを取っている。その結果、思った以上に使えていない学生が多く、驚いた。「間違っていそう」「胡散臭い感じ」などと、敬遠する声が思った以上に多かったのだ。後期でも、利用率は3割程度だった。

 前期にChatGPTを利用した感想をミニレポートとして出したが、何と「自己判断で登録をやめた」学生が複数おり、利用せずにミニレポートを書いてきた。「メールアドレスを登録するのが心配だから」というのが、利用しなかった理由だ。

 「使ってみて」と自主性に任せているだけでは、そういう学生に使わせることは難しい。そこで、強制的に利用する機会を設けようと、後期のレポートで再度取り上げることにした。

 テーマを立ててChatGPTを利用してもらう。プロンプトと出てきた結果をすべて提出した上で、メリットや課題などをレポートしてもらうというものだ。前期との違いは、利用が必須となる点だ。

学習させないなど安心させる仕組みも

 心配する学生が多そうだったので、安心して利用できるよう、「登録に必要なメールアドレスはフリーメールでもいい」と強調した。

 入力から学習する仕組みによる個人情報流出のリスクも、学生が怖がる理由につながっている。そこで、けして個人情報は入力しないようにすること。「Setting」から「Date controls」→「Chat history&training」をオフにすると、入力から学習させないようにできることを伝えた。

 プロンプト入力にはコツも多いが、難しい話をしすぎるとただでさえ高い敷居がさらに上がりそうだ。あくまで試しに使ってみてもらいたいのがメインなので、あえてそれ以上は条件などをつけずに自由に使ってもらうことにした。

就活での活用は学生の関心が高い

 Synergy Careerの「就活とAIに関するアンケート」(2023年6月)によると、就活生の23.2%がChatGPTで作成したエントリーシートを提出したことがあり、企業・業界分析や、面接対策などにも使われている。

 学生の反応が一番よかったのが、やはり就活だ。「就活にChatGPTが使える」と言っただけではピンとこないようだったが、実際に利用されていることを前述のようなデータで示すと真剣な顔に。レポートでも、半数近くが「試しにエントリーシートを書いてみた」「志願書を作成した」などの就活関連のテーマを選んでいた。

 「そもそもエントリーシートを書いたことがなかったけれど、雛形を出してくれたり、どこをどのようにアピールすればいいかとアドバイスしてくれたりして、コツがとてもわかりやすかった。箇条書きでプロンプトを入れただけなのに、わかりやすい文章になっていて驚いた」という感想をもらっている。

創意工夫しながらChatGPTを活用

 ユニークなレポートを出してくれた学生も多かった。たとえば、小説読解の国語のワークシートに回答させ、読解ができるかを調べたレポートは興味深かった。理解できる部分も多いが、人ならばわかる心情の読み取りがまったくできないということがよく分かるものだった。

 既存のカードゲームで強いデッキを組ませ、そのデッキで戦った学生もいた。負けた場合は理由と改善してほしい点を伝えて、新たなデッキを提案してもらうのだ。ゲームのルールを毎回教える必要があるのが大変そうだが、かなり楽しめたようだ。「カードのイラストも瞬時に出るんですよ」と示してくれた。はじめはゲームを作成させたかったが、ありものを出されそうだったのでこのようなテーマにしたそうだ。

 吉祥寺駅から成蹊大学までの道順を案内させようとした学生もいた。ChatGPTはそのようなデータは学習していないようで、出口も道順も正しくないものを出されたそうだ。聞き方を変えながら何度聞いても、地図を見ながら説明するような説明でしかも間違ったものが出てきたという。

知ったかぶりで接続詞が使えないChatGPT

 レポート提出後に、グループごとに自分が選んだテーマと、使ってみて感じたChatGPTの感想や使い方のコツなどをシェアしてもらった。

 「(ChatGPTは)知ったかぶり」「えらそう」「謝れない」「気持ちを汲んでくれない」「接続詞が使えない」「文章がおかしい」など、使ってみたならではのさまざまな感想で盛り上がっていた。

 「『(ChatGPTが出した文章に対して)なぜそうしたのですか』と聞くと、ChatGPTは間違っていたのかと思い、理由は教えてくれず、違う結果を出されてしまう。『疑っているわけではないのですが、なぜそうしたのか理由を聞かせてください』などと聞かないと理由を教えてくれない。『まるでご機嫌伺いしているようで大変だった』」という感想を寄せてくれた学生もいた。

 「やっぱり間違っているし信用ならないと思った」「瞬時に長文を出してくれて恐ろしいくらいだった」「使いようによってはとても便利で時短になると思った」など、学生はそれぞれに感想を抱いたようだ。

 ChatGPTは便利なツールであり、どのように使えるかを知ることでいざというときに活用できるだろう。ChatGPTを使わせるときの参考にしていただければ幸いだ。

高橋暁子

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。

公式サイト:https://www.akiakatsuki.com/

Twitter:@akiakatsuki

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