ディー・エヌ・エー(DeNA)は3月27日、EVの実用航続距離や導入効果予測を見える化するEV転換シミュレーター「FACTEV(ファクティブ)」について、4月1日からオートリース会社向けに試験提供を開始すると発表した。2024年度の商用化を目指す。
FACTEVでは、DeNAがこれまでプラットフォームやインターネットサービスの運用で培ったデータサイエンスやAIの技術、ノウハウと自動車技術を組み合わせ、EVの実用航続距離や導入効果を予測できる。EV普及のボトルネックになっていた実用航続距離を、車載器から取得するCAN(Controller Area Network)データといった車両データを取得せずにシミュレーション可能だ。
車検証や定期点検情報、運行管理台帳情報などの基本情報で、車両の使われ方を特定。走行地域の道路特性や気象情報の分析を加え、用途に合った候補EVを選定し、実用性能(実用航続距離やバッテリー状況)や導入効果をデータで提供する。
同社によると、日本におけるEV乗用車販売比率(2022年1〜12月)は1.42%にとどまり、EV普及で先行する北米、欧州、中国に大きく差を付けられているという。
また、EV普及を阻害している主な要因として、「価格(の高さ)」「航続距離(への不安)」「充電インフラ(不足)」が指摘されている。
この内、「価格」については近年、軽自動車のEVや一部の輸入車EVを中心に低廉化が進み、補助金を活用することでガソリン車並の価格で購入可能な車種が登場。「充電インフラ」についても、急速充電器の設置に対して補助金が増額されるなど、徐々に拡充している状況にある。
「航続距離」も、バッテリー容量の大型化などにより、徐々に長距離走行可能になっている。しかし、使用環境や運転の仕方、用途などにより、実際の航続距離(実用航続距離)は大きく変動してしまう。そのため、実用航続距離をカタログ航続距離(JC08モードやWLTCモードなど)から予測したり、EV導入後の運用イメージ(途中充電の要否、頻度など)をEV導入前に把握したりすることは困難としている。
DeNAは、EVを導入しなければわからなかった実用航続距離や導入効果(経済性や環境性)をあらかじめ把握できれば、用途に適したEVを安心して導入できると考え、EV導入後の実用航続距離や導入効果を予測するEV転換シミュレーターとなるFACTEVを開発。まずは、法人のEV普及の鍵を握るオートリース会社を対象に、FACTEVと、FACTEVの利用を促進する研修プログラム(マインドセット研修・提案力向上研修)、EV普及に向けた課題へのコンサルティング(分析などを含む)を組み合わせ、「EV導入支援ソリューション」として試験提供を開始する。
なお、大手オートリース会社に向けた試験提供が決定。4月から利用される予定だという。
今後は、コネクテッドデータを含む各社のさまざまなEVデータをクラウド上で編集、加工(実用性能、導入効果、バッテリー寿命などの予実管理、見える化など)し、各社のEV情報を共通形式で各種サービス事業者(フリート管理、カーシェアリング、エネルギー、保険など)に提供するシステムの構築を目指すとしている。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」