Nokiaのプロダクトマーケティング部門を率いるAdam Ferguson氏は、最近発売した3つの格安スマートフォンのうち1つを使って、報道陣の前で自らバッテリーを交換し、そのプロセスを実況解説するという勇敢な、ある意味では大胆な行動に出た。
冒頭で、Ferguson氏は5分以内にバッテリー交換を完了すると約束した。細かいことを言えば多少はみ出た気もするが、この約束はおおむね果たされた。
報道関係者が見守る中、素人による大手術を受けた「Nokia G22」は、ユーザー自身が修理できるように設計されたスマートフォンだ。世界最大のモバイル関連イベント「Mobile World Congress」(MWC)に先立ち発表されたこの新型スマートフォンは、テクノロジー製品の修理を支援するiFixitとのパートナーシップから生まれたものだ。購入者には、いざというときに自分で端末を修理するための手引きと部品が提供される。修理に必要なものはギターのピックと00番のドライバーだけだ。
この斬新な機能により、世界のスマートフォンブランドの中でトップ5にすら入っていないNokiaが、今年のMWCでは大きな話題を集めた。今回のMWCは「サステナビリティ」を大きなテーマに掲げている。気候変動の危機が世界を襲うなか、電子機器の廃棄問題はハイテク企業にとっても消費者にとっても切迫した問題になりつつある。製品寿命を延ばし、バッテリーが消耗してもすぐに廃棄されないようにすることは、テクノロジー製品の使用が環境に与える負荷を軽減するための重要なステップだ。
MWCを主催するモバイル業界団体のGSMアソシエーション(GSMA)で気候変動対策責任者を務めるSteven Moore氏は、MWC開幕前のインタビューで「消費者は同じスマートフォンを長く使うようになっている」と述べた。実際、スマホの買い換えサイクルは2年から3年に延びているという。また、スマホの修理に関心を持つ人も増え、整備済製品を購入することへの抵抗も減っているとMoore氏は指摘した。
スマートフォンの修理に注目したのはNokiaが初めてではない。オランダの社会的企業Fairphoneは、2013年からいち早く環境負荷の少ないモジュール式スマホの開発に取り組んでいる。2022年4月にはAppleも、iPhoneを自分で修理したいユーザー向けに「セルフサービス修理」プログラムを開始した。
従来の取り組みと現在のトレンドとの違いは、DIY修理がニッチな機能から、新型スマートフォンの目玉機能になりつつあることだ。CCS Insightのチーフアナリスト、Ben Wood氏は「消費者はサステナブルか、長持ちするかに注目してデバイスを選ぶようになっている。スマホを簡単かつ手頃な価格で修理できることは、市場での重要な差別化要因になるだろう」と述べた。
Nokiaは、DIY修理のトレンドを生み出したわけではないかもしれないが、完璧なタイミングでこのトレンドに乗った。今回のMWCは、サステナビリティを最重要テーマに掲げており、2050年までにモバイル業界の二酸化炭素排出量をネットゼロにするというGSMAの目標に沿って、多くの業界企業が自社の製品がもたらす環境負荷の低減に取り組んでいる。
データ分析企業Global Dataのチーフアナリスト兼プラクティスリーダーEmma Mohr-McClune氏は声明で、今回のMWCに修理機能のない製品を出品しているスマートフォンメーカーは、その理由を十分に説明できない限り、批判を受けることを覚悟すべきだと述べた。
同氏はさらに「現時点では、通信事業者はこの議論に参加していないが、修理という選択肢を(メーカーに)求めるようになるのは時間の問題だ」と付け加えた。
消費者やモバイル業界の各方面からの圧力が高まるなか、スマホメーカーはバッテリーやディスプレイなど、長く使っていると劣化しやすい部品を手軽に交換できるようにすることを求められるようになるだろう。しかも、サステナビリティはソフトウェアの分野でも求められるようになっている。
OnePlusは、2月に発売された「OnePlus 11」のサポート期間をAndroidのアップデートについて最大4年間、セキュリティアップデートについて5年間に延長した。長期のセキュリティアップデートが約束されていなければ、十分な性能があってもスマートフォンは使えなくなってしまう。
また、どんなに未来志向の製品だろうと、ユーザーの手元に届く前に、サステナビリティを可能な限り高めておくことはスマートフォンメーカーの責任だ。
Moore氏によると、スマートフォンが環境に排出する温室効果ガスの80%は、箱から端末を出す前に排出されているという。「これは、デバイスの製造過程で生じる排出物や環境負荷を考慮する必要があることを意味する」と、同氏は言う。
GSMAは、2022年11月に発表した戦略文書の中で、いずれは端末がすべてリサイクル可能な素材で製造され、再生可能エネルギーのみでまかなえるようになるという長期的な展望を述べた。
「今のところ、このビジョンを体現しているデバイスはないが、一部のメーカーではすでに有望な兆しが見えはじめている」と同氏は語った。「モバイル業界にできることはたくさんある。変化はまだ始まったばかりだ」
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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