富士通と東海国立大学機構は2月24日、宇宙と医療の各分野での包括協定を締結したと発表した。宇宙分野では、太陽風の影響や宇宙環境を事前に予測して対策を立てる「宇宙天気予報」の高度化に取り組む。東海国立大学機構は、2020年4月に岐阜大学と名古屋大学が統合した国立大学法人。
機構の傘下にある名古屋大学 宇宙地球環境研究所(Institute for space-Earth Environmental research:ISEE)は、太陽フレアの発生をピンポイントで予測する世界初のモデルを開発した実績がある。また、航空宇宙開発機構(JAXA)や国立天文台と連携し、全世界に最新の衛星データを発信する「衛星・地上観測統合データベース」などを有している。
衛星・地上観測統合データベースはISEE内の「太陽圏サイエンスセンター」と「宇宙地球環境観測所ネットワーク」で構成。太陽圏サイエンスセンターは、JAXA 宇宙科学研究所が運用するジオスペース探査衛星「あらせ」(Exploration of energization and Radiation in Geospace:ERG)と太陽観測衛星「ひので」(SOLAR-B)のデータを活用している。宇宙地球環境観測所ネットワークは、太陽風と地球の電離圏の変動を常に監視する観測所を日本全国に展開している。
こうしたISEEの宇宙への知見と、富士通が2020年に名古屋大学に導入したスーパーコンピューター「不老」(フロー)の大規模シミュレーションやデータ解析技術を組み合わせ、宇宙天気予報の予測モデル高度化やシミュレーションの高速化に取り組む。
ISSEで所長を務める草野完也氏は「太陽でフレアが発生した場合、宇宙飛行士だけでなく、電力や通信などのインフラに惑星規模の打撃を与える」とし、予測する技術の重要性を説明。前述の世界初のフレア予測モデルに加え、日本の電力網や地形を考慮して、フレア発生時に日本の電力網に生じる誘導電流をシミュレーションするモデルなども紹介した。
富士通で執行役員 シニアエグゼクティブバイスプレジデント(SEVP) Japanリージョン 最高経営責任者(CEO)を務める堤浩幸氏は「1967年から宇宙分野の事業開拓に取り組んできた」と前置きし「我々には最先端のコンピューティング技術がある。これと東海国立大学機構の“宇宙の知”を組み合わせることで、宇宙領域における新技術の開拓が可能になる」と意気込んだ。
また、ヘルスケア分野では、電子カルテやスマートデバイスからの健康情報などをクラウド上に蓄積し分析する「データアナリティクスセンター」を設置する。データ分析には富士通のAI技術や、東海国立大学機構傘下の健康医療ライフデザイン統合研究教育拠点(C-REX、4月に「健康医療データ統合研究教育拠点」から名称を変更)の知見を活用する。加齢による心身の衰えといった社会的課題を解決するサービスの開発を目指す。
東海国立大学機構で機構長を務める松尾清一氏は「大学が社会に出て良い社会づくりに貢献するためには、産業界との連携が必須である」と述べ、包括協定の意義を強調した。
(この記事はUchuBizからの転載です)
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