気球による「宇宙遊覧」の実現を目指す岩谷技研(札幌市北区)は2月21日、商用サービスを2023〜2024年度に開始すると発表した。第1期の搭乗者5人とパイロット候補生の募集もあわせて開始した。
同社の遊覧サービスでは、2時間かけて高度25kmの成層圏へと上昇。同高度に1時間ほど滞在し、さらに1時間かけて地表へ帰還する、一般的な宇宙の定義とされる高度80〜100km以上には届かないが、黒い空、そして青い地球を見下ろす体験が味わえるという。軌道飛行ではないため、無重力状態を体験することはできない。
また、数十億円かかるロケットを用いた宇宙旅行と比べてコストを抑えられる点も特徴。当初の旅行代金は1人あたり2500万円だが、同社で代表取締役 最高経営責任者(CEO)を務める岩谷圭介氏によると、2030年代には1人あたり100万円程度まで値下げできる可能性があるという。
遊覧に用いる2人乗りキャビン「T-10 Earther」は直径150cm。1人がパイロット、もう1人が乗客となる。高度25km付近は真空に近く、無音かつ無酸素状態となるが、特許技術により機内の気圧変化を飛行機よりも抑えたといい、さらに振動や揺れは新幹線よりも小さいという。
気球部分からキャビン、打ち上げや管制システム、通信装置まですべて自社で開発した点も特徴。気球の安全性についても「気球は自動車やバイクよりも安全」(岩谷氏)と胸を張る。
気球の打ち上げは北海道の十勝地方を予定している。打ち上げは気象状況により特定の出発日を指定できず、1週間ほど予備日程を確保する必要がある。
また、気球は風に流されるが、事前のシミュレーションで気球の着地地点を予測し、クルーザーが先回りして迎えに行くという。
なお、将来的には70m級の気球を用い、6人乗りの遊覧キャビンの運行を目指す。
岩谷技研はあわせて、宇宙共創プロジェクト「OPEN UNIVERSE PROJECT」を発表。旅行大手のJTBが同プロジェクトを支援すると発表した。
JTBで専務執行役員 取締役専務を務める花坂氏は「JTBもかつては人々が海外に行くことが一般ではなかった時代に、誰でも享受できるサービスとして切り拓いた経験がある。優れた可能性を秘めた日本のスタートアップである岩谷技研が、社会でその価値を存分に発揮できるように支えていく」とした。
(この記事はUchuBizからの転載です)
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