「Roblox(ロブロックス)」とは、世界中のキッズや若者の間で親しまれている大人気のゲーミングプラットフォームである。
世界に比べて日本ではまだまだ知名度と人気度は低いものの、もし小学生から高校生くらいのお子さんがいるのであれば、お子さんはRobloxで遊んだことがあるかもしれない。またRobloxは、最近メタバース関連の動きが活発化していることでも注目を浴びている。
そこで今回は、筆者自身もハマっているRobloxに注目し、メタバースへ進化を遂げるオンラインゲーミングプラットフォームについて解説する。
Robloxとは世界中で、ユーザーによって制作されたオリジナルゲームを遊んだり、制作したゲームをRobloxで公開することができるオンラインゲーミングプラットフォームである。スマートフォン(iOS・Android)やPC(Windows・MacOS)、Amazonデバイスから遊ぶことが可能。ペット育成からピザの配達、ミニゲームや対戦型シューターなどさまざまなゲームがあり、課金システムはあるものの、無料で遊ぶことができる。
GameFi(ゲームファイ)やメタバースという側面でも注目されており、世界中のキッズや若者を中心に人気が広がっている。月間の全世界ユーザー数は2億200万人(2021年4月時点)、ウェブサイト訪問数は7億9200万回を超えているとされている。
GameFiとは、Game(ゲーム)とFinance(金融)をつなげた新しい造語である。仮想通貨やブロックチェーン技術を活用した新しいビジネスモデルも誕生しつつあり、最近注目が高まっている。GameFiでは、ゲームをプレイすることで、ゲーム外においても価値がある仮想通貨やNFTを獲得できるため、ゲームなのに現実世界のお金を稼ぐことができるのだ。人気があるゲームの場合は、ゲーム内の仮想通貨が暗号資産取引所で取り扱いされており、稼いだ仮想通貨を日本円やドルに交換することも可能である。
Robloxは無料で遊ぶことができるというのが、ユーザー数の多い理由の一つとなっている。特に欧米とアジアでの人気が非常に高く、娯楽のためのゲーミングプラットフォームとしてだけではなく、教育分野にも積極的に活用されており、幅広い可能性を感じさせる。
Robloxにおける大きな特徴は、専用ゲームエンジン「Roblox Studio」でユーザー自身が制作したゲームを配信・公開することができるという点にある。現在は200万人以上のユーザーがゲームを作ってRoblox上に公開しており、なかには「Adopt Me!」や「Meep City」など、世界中で数十億~数百億回プレイされている。
加えて、Robloxは自作ゲームを公開できるだけでなく、自作したゲームで稼ぐことができるGameFiの要素を兼ね備えていることも大きな特徴。ゲーム内通貨の「Robux」を通して収益化が可能で、有償のゲームの配信やアバター用コスチュームなどの販売も可能だ。ただし自作ゲームを収益化するにはサブスクに登録する必要がある。自作ゲームの公開以外にも、衣服、武器、アバター ギア、アバターショップで販売できるキャラクターなどの仮想アイテムを作成して売ることもできる。
Robloxには、教育的側面も多く盛り込まれている。実際に欧米では多くの教育現場でゲームが利用されている。Robloxの創始者であるDavid Baszucki氏は元々教育者であり、Robloxそのものも教育用のソフトから着想を得たものと言っているようだ。
ゲームを開発するには、プログラミングや3Dグラフィックなどの知識が必要になる。そして、自分の開発したゲームで収益を上げるためには「ビジネス」の視点も重要だ。Robloxを通したゲーム開発で試行錯誤しながら、どうすれば他のユーザーがゲームをプレイしてくれるか、どうすればアイテムを購入してくれるか、といったビジネスに近い考え方を育てることがRobloxを通してできる。
プログラミング学習としてのRobloxは、プログラミング完全な初心者よりも、少しプログラミングを学習したことのあるお子さんにおすすめである。RobloxではLua(ルア)というプログラミング言語を使用している。「Scratch」などのビジュアルプログラミング(※アイコンや矢印のような視覚的なオブジェクトを組み合わせてプログラミングができる言語)は、特に子どものプログラミング教育に広く活用されているが、Robloxの場合は、本格的なテキストプログラミング(※テキストのみでプログラミングをする言語)の学習が必要になる。
GUCCIもRoblox内で展示会を開催している。それぞれの部屋にはそれぞれ”urban romanticism”、“Tokyo tribe”といった名前が付けられており、メタバース空間に展示が広がっている。
Robloxの公式ブログによれば、プレイヤーが展示空間に入ると、自身のアバターからシンプルなマネキンアバターに姿が変わる仕様になっている。空間を巡るにつれ、体験したものに合わせてマネキンの姿が変化する、というギミックがほどこされている。空間の中に入ると、商品が見られたり、隠しアイテムを見つけたりと、楽しむ工夫がされており、展示会の新しい楽しみ方を体験することができる。
メタバースで広がる美術の可能性--VR空間で作品展示を行う画家の植村友哉氏が見た未来(2022年10月7日掲載)
生まれたときからインターネットが存在している今の子供たち、そしてオンラインの世界に慣れ親しみ、インターネットリテラシーの高いZ世代の若者たちにとって,「Roblox」やメタバースは、その他のSNSなどと変わらないコミュニケーションツールの1つなのかもしれない。
3Dの仮想空間・メタバースは、今の子どもたちにとって、昔の子供たちが野球やサッカーをしていた公園のような存在だ。Roblox内のゲームの多くは、時間やお金をかけてキャラクターを育成するような作業要素はない。ゲーマーのためのゲームであれば、技術力を向上するためにゲームを練習したり、課金して強いアイテムを入手したりする必要があるかもしれない。それがゲームの醍醐味だったりもする。
しかし、現代の若者が目的とするのは、ゲームで勝ち負けを競ったりすることだけに限らず、ゲームを通じた交流なのかもしれない。ゲームというものは単なる娯楽ではなく、生活に無くてなならない新しい日常空間として成長してることに、我々はもっと目を向けるべきであろう。
齊藤大将
Steins Inc. 代表取締役 【http://steins.works/】
エストニアの国立大学タリン工科大学物理学修士修了。大学院では文学の数値解析の研究。バーチャル教育の研究開発やVR美術館をはじめとするアートを用いた広報に関する事業を行う。
Twitter @T_I_SHOW
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス