Suica「2万円の壁」の行方は--QRやクレカ乗車などの『ライバル出現』でも続く進化を考察 - (page 2)

Suicaは「まだ」なくならない

 この話題に関して勘違いされないようにまとめておくと、「このQRコード改札とは別に“PayPay”のようなスマホ決済のための仕組みではない」し、「QRコード改札はSuica置き換えを意図したものではない」だけでなく、むしろ「裏が黒い磁気切符を(物理的に)入手しなくてもスマートフォンで改札をそのまま通過できる」ことを意図した新サービスだ。JR東日本によれば、QRコード改札はスマートフォンの「えきねっと」アプリ利用を想定したもので、現状では同アプリがなければ利用できない。

 将来的には、訪日外国人が日本を周遊する際の“企画券”として、QRコード情報を紙やスマホの画面に表示させて改札を通過するといったことも想定しているかもしれないが、2024年以降のサービス開始時点では「駅の券売機に出向いて切符を受け取らずとも、そのままスマホだけで移動ができる」といった、「MaaS(Mobility as a Service)」的な用途が主眼となる。Suicaの一部用途を奪う可能性はあるが、どちらかといえば、磁気切符が必須だった用途を少しでもスマホで置き換えることが目的だ。

 一方で、磁気切符そのものは他のJR各社との連絡のほか、JRの駅に接続する私鉄各社との“連絡切符”としての役割も持っており、前述のような用途全てを「えきねっと」アプリによるQRコード乗車で置き換えるのは難しい。JR東日本もそれは理解しており、当初はあくまでJR東日本の営業区域内+αでの利用に留まる。

 また、「QRコードなら複製が容易では?」というセキュリティ上の懸念もよく聞かれるが、現状ではまだ「えきねっと」アプリで表示されるQRコードのみが対象であり、加えて「同じ区間切符や企画券でもそれぞれが異なる情報を含んだQRコードになる」(JR東日本)とのことで、QRコードの複製による“キセル”乗車のほか、「印刷された人のコード情報を盗んで乗車」といったことは難しい。さまざまなケースを想定して検討を続けているとのことで、おそらく多くの利用者がすぐに思い付きそうな利用の穴は、すでに塞がれていると思っていい。

 このように、2024年以降に導入されるQRコード改札は、あくまで磁気切符の補完となる「新サービス」という位置付けだ。実際に新改札のテスト機材が導入されている代々木駅東口の場合、4つある改札機のうち、磁気切符通過に対応した2つの改札機にのみQRコードの読み取り口が付いている。JR東日本によると、各駅の利用状況などを鑑みて対応改札機の設置台数を決めるとしているが、おそらく他の駅も代々木駅同様に「磁気切符改札のリプレイスで、全体に3-5割程度の置き換え」になるのではないかと予測する。

 同時に、新改札機のデザインを見れば分かるように、Suicaの読み取り機は健在だ。改札機のリプレイス周期は減価償却の理由などもあり、おおよそ7年間隔となっている。そのため、リプレイスが開始される2023年以降、より具体的には少なくとも2030年以降まではSuicaは現在の形で生き残り、JR東日本としても別の技術、例えば前述のクレジットカードなどを使ったオープンループで置き換えることは想定していないとみられる。実際、新宿駅のような大トラフィックを問題なく捌くようなシステムを大胆に変える理由もなく、後述のようにJR東日本自体がSuicaを“戦略的中核”と考えている以上、これからもまだ当面は現役であり続ける。

JR新宿駅南口
JR新宿駅南口

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