地球外生命体を探す場所として最も有望視されている場所のひとつに、土星の衛星エンケラドスのような別世界の厚い氷の殻の下に隠された海がある。米航空宇宙局(NASA)は、そうした暗くて深い場所を調査して、海中の地球外生命体を探すことのできる小型水泳ロボットの研究開発に資金を提供している。
エンケラドスの凍った表面の裂け目から複数の水の柱が宇宙空間に噴出した。その宇宙の霧の中を飛行したNASAの宇宙探査機「Cassini」は、メタンのように、生命の存在と関連付けられることの多い興味深い分子を検出した。
NASAのエンジニアであるEthan Schaler氏は、そのような薄気味悪い環境を探索するため、氷を溶かす探針とスマートフォンサイズの水中ドローン群を含む計画を立案した。この計画は、「Sensing With Independent Micro-Swimmers」(SWIM)と呼ばれ、先頃、3Dプリンターでプロトタイプを作成してテストするための資金を受け取っている。
Schaler氏は声明で、「小さなスイミングロボット群によって、これまでよりもはるかに広い範囲で海水を探索することができる。また、複数のロボットが同じ場所でデータを収集することで、測定の精度を高めることも可能になる」と述べている。
このプロジェクトは先頃、「NASA Innovative Advanced Concepts」(NIAC)のフェーズ2の資金として、60万ドル(約8300万円)を受け取った。フェーズ1では、SWIMは実現可能性調査と設計用の資金として、NIACから12万5000ドル(約1700万円)を与えられている。
水泳ロボットは三角の形をしており、(おそらく放射線を使用して)氷を溶かしながら進む大型の「クライオボット」設計に搭載することができる。クライオボットのコンセプトは現在、ほかのNASAプログラムで開発中だ。
現在のクライオボット設計では、通信と制御のための探針が地表の着陸船につながれている。SWIMチームの科学者のSamuel Howell氏によると、NASAのヘリコプター「ingenuity」が火星での「Perseverance」ミッションの範囲を拡大したのと同じように、小型水泳ロボットは調査範囲を大幅に拡大できるという。
「海に入るために長い年月をかけたにもかかわらず、間違った場所で氷の殻を溶かして、侵入してしまったとしたらどうだろうか。自分たちが海に入ったところとは別の場所に生命の兆候があったとしたら、どうだろうか」とHowell氏。「これらのロボット群を持って行くことで、われわれはその『別の場所』を調べて、クライオボット1台を使用する場合よりもはるかに広範囲の環境を探索することができる」
これらの小型ボットが実際に別世界の海に触れるのは、もう少し先のことだ。このコンセプトは、そのような世界を目指すNASAのミッションにはまだ含まれていない。しかし、木星の衛星エウロパを探査する「Europa Clipper」ミッションでは、氷の下に海が隠されている別の凍った世界から貴重なデータが間違いなくもたらされるはずだ。Europa Clipperは2024年に打ち上げられ、2030年にエウロパに到着する予定だ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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