マンションの大規模修繕に安心を--管理組合と工事会社をつなぐ「スマート修繕」

 マンションの大規模修繕と工事会社をつなぐマッチングサービス「スマート修繕」が登場した。手掛けたのはデライトベンチャーズから出資を受けて立ち上がった「株式会社スマート修繕」。マンション管理組合と仲介コンサルタントなど業界関係者の情報の非対称性をなくし、透明性が高く、安心して依頼できる大規模修繕の提供を目指す。

「スマート修繕」
「スマート修繕」

 「スマート修繕を立ち上げたのは、自分が暮らすマンションで理事長になったことがきっかけ。共用部工事の修繕時期にあたり、管理会社から打診を受けたが、その内容や金額を見てもピンと来ず、マンション管理組合と管理会社の間に大きな隔たりを感じた」(スマート修繕 代表取締役の豊田賢治郎氏)と自らの体験がトリガーになったという。

スマート修繕 代表取締役の豊田賢治郎氏
スマート修繕 代表取締役の豊田賢治郎氏

 マンションの大規模修繕は10数年に一度実施され、廊下や屋上などの共用部が対象。一般的には管理組合と修繕を手掛ける工事会社が契約、発注して実施されている。1戸あたり100万円~がかかり、50戸のマンションであれば5000万円~が必要になるなど動く金額は大きい。

 「マンション管理組合があまりよくない仲介コンサルタントなど業界関係者に依頼してしまうと不必要な工事を要求されて費用がかさむ。『あわよくば』と狙われてしまいがちな部分」(豊田氏)と注意を促す。

 「あわよくば」の状況が生まれてしまう背景には、管理組合側が弱者の立場に追い込まれてしまうからだという。「管理組合側は素人のため、言われたことを真に受けて承認してしまうケースが多い。必要か不必要化の判断も難しいし、決定する立場の理事や理事長も2年程度で交代になるため、ノウハウが残りづらい。これをなんとかしたいと思った」と振り返る。

 スマ―ト修繕は、マンションの管理組合や理事会、オーナーと工事会社をマッチングするサービス。比較選定、契約などのサポートをするほか、工事会社と保証や契約内容などの取り決めるなど、間に立つことでスムーズなコミュニケーションを促す。スマート修繕が契約を交わした会社のみを紹介することで、信頼性を確保する。

スマート修繕の仕組み
スマート修繕の仕組み

 豊田氏は3月までDeNAで勤務しており「起業したいと思ったことはなかった」という。しかし、持ち回りで回ってきたマンション管理組合の理事長を務めている時、DeNAグループ全体のSNSで、デライト・ベンチャーズから不動産領域に関するアンケートが回ってきた。それに回答したところ、デライト・ベンチャーズの新規事業創出責任者とミーティング、その後リサーチを進めるよう依頼され、週末起業のような形でリサーチ活動を開始。その後、会社として立ち上がった」(豊田氏)と少し珍しい経歴を持つ。

 この時のリサーチでは、業界関係者、管理組合、工事会社などにヒアリングをしたほか、市場検証も実施。簡易サイトを立ち上げ、ウェブ広告でサイトの集客を図るなど、起業への第一歩となっている。

 実稼働に向け留意したのは「この業界に強い人脈を築くこと」。現在、マンション管理組合の顧問などを数多く務める設計コンサルタントである別所毅謙氏と契約することで、透明性の高い工事を請け負う会社とのつながりを築く。

 2021年度末に実施したテストサイトでは、ウェブ広告のみの露出だったにもかかわらず問い合わせもあり、手応えを感じているとのこと。「結婚や自宅の購入など、ライフステージごとにでてくる疑問点はみなさんウェブ検索するのが今は一般的。そういう意味では「マンション、修繕」といったキーワードも数多く検索されており、ウェブのトラフィックはかなりある。ただ、マンション購入の平均年齢は43歳で、その人たちが大規模修繕を初めて体験するのは平均して55歳以降。その世代に強く訴えかえるようなアプローチもしていきたい」(豊田氏)と今後を見据える。

 「マンション管理や建設に対する知識は普通の人程度だった」と話す豊田氏だが、スマート修繕立ち上げにあたり、この分野の知識を徹底的に身につけ、オウンドメディアも自らが執筆しているほど。「マンション管理組合の希望に応じて工事会社をご紹介できる自信がある。きちんと受注につながることで工事会社は必ず集まる。クリーンなエコシステムを構築することで、マンション修繕に関する透明性を上げていきたい」とした。

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