テクノロジー企業は、有害なコンテンツの検出やバーチャルアシスタントの支援、翻訳ツールの改善など、さまざまなタスクに人工知能(AI)を使用している。
しかし、Facebookの運営会社であるMetaが構築しているようなAIシステムは、言語学習能力という点で、まだ人間に及ばない。Metaは、人間の脳が言語を学習する仕組みとAIが情報を処理する仕組みを比較する新しい長期的な研究によって、そうした状況を変えたいと考えている。
こうした方針は、近未来的な製品(例えば、道案内やメッセージの表示、仮想ゲームのプレイといった機能を備える拡張現実グラス)の開発を強化するMetaの研究者が、どういったやり方でAIを改善しようとしているかを示している。ARは、現実世界の景色にデジタル画像を重ねて表示するテクノロジーだ。
MetaのAI研究チームでリサーチサイエンティストを務めるJean-Remi King氏によると、このプロジェクトは、文やフレーズの後に続く単語やアイデアの予測など、さまざまなタスクに使用されるAIの改善に役立つ可能性があるという。少量の情報から素早く学習できる人間と異なり、AIシステムは依然として、大量のデータセットを与えられた場合でも、単純なタスクを実行するのに苦労している。
例えば、バーチャルアシスタントは、タスクが明確に定義されている場合、ユーザーが何を求めているのかをより正確に理解できる。バーチャルアシスタントを相手にしていると、いら立ちを覚えることもある。バーチャルアシスタントがやるべき事を分かっていない場合は、特にそうだ。AIが言語を処理する仕組みを改善すれば、バーチャルアシスタントのような製品の改良につながる可能性がある。こうした製品は、人々が求めていることや期待していることを学習しようとしている。
「AIが大きく進歩したとしても、人間と同水準の知性に到達するまでの道のりが長いことは、多くの人にとって明白である」(King氏)
Metaによると、この研究を実施するために、同社はフランスのニューロイメージングセンターであるNeuroSpin、フランス国立情報学自動制御研究所(INRIA)と協力して、脳が特定の単語にどのように反応するかを研究している。研究者たちは、人間の脳と、次の単語を予測するように訓練されたAIモデルの違いをすでに理解したという。
INRIAのある研究では、AI言語モデルとボランティア345人の脳の反応の比較が行われた。ボランティアたちが物語に耳を傾けている間、研究者たちは機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を使って、彼らの脳の活動を記録した。
Metaによると、脳のさまざまな領域は、言葉やアイデアを極めて早い段階で予測できるという。例えば、AI言語モデルは通常、「むかしむかし……」というフレーズに続く単語が「あるところに」であることを予測可能だ。一方、人間は物語の常套句であるこのフレーズを耳にすると、話の筋のアイデアや物語を思いつく。
こうした研究の成果が研究者にもたらすのは、AI改善のためにできることについての仮説であり、最終的な答えではない、とKing氏は話す。
「これは恐らく、われわれがこうしたアルゴリズムをさらに究明して、予測をさらに進めれば、より効率的に学習ができるようになるということを示す良い兆候だろう」(同氏)
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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