「Raspberry Pi Zero」搭載の衛星が宇宙へ--市販ハードが宇宙で機体制御

Liam Tung (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル2022年03月16日 07時30分

 「Raspberry Pi Zero」が小型人工衛星に搭載され、フライトコンピューターとして使用されている。このような実験は初めてだとされている。

 8年間の計画を経て、「Get Away Special Passive Attitude Control Satellite」(GASPACS)と呼ばれるCubeSat(訳注:大学の研究室などが開発する小型人工衛星)を製作したユタ州立大学(USU)の学部生たちは2021年12月、Raspberry Pi Zeroを搭載した同機が米航空宇宙局(NASA)によって宇宙に打ち上げられるのを見守った。

 このプロジェクトの目標の1つは、Raspberry Pi Zeroのような市販の低価格ハードウェアが宇宙旅行に耐えうるかどうか確認することだった。

 同大学の物理学部の学生たちが2018年の論文で詳しく説明したように、地球低軌道に到達した際の放射線によるダメージに、Raspberry Pi Zeroが耐えられるのかという重大な懸念点があった。彼らがRaspberry Pi Zeroに目を付けたのは、低価格で、GASPACSに搭載できるコンパクトさを備えていたからだ。GASPACSは、わずか4平方インチ(約10平方cm)のサイズで、軌道を安定させるために、カスタマイズされたインフレータブルブームを備えている。

 現在、Raspberry Piは、このプロジェクトの進行状況に関する最新情報を提供している。GASPACSの主な使命は、長さ1mのインフレータブルブームの展開、そして、それが意図したとおりに衛星を安定させ、制御不能に陥るのを防いでいるかどうかをテストすることだった。ユタ州立大学によると、ブームは矢に付いた羽根のように機能して、衛星を安定させるという。

 国際宇宙ステーションに到着した後、GASPACSは米国時間2022年1月26日に展開され、インフレータブルブームもミッションの開始から約45分後に無事に展開された。それ以来、GASPACSは「Raspberry Pi Camera Module 2」を使用して、宇宙空間から地球を撮影し、その画像をユタ州立大学の地上局に送信している。

 Raspberry Pi Zeroが搭載されたGASPACSには、その状態をチェックする「DFRobot Beetle」マイクロコントローラーボードがある。

 「Pi Zeroは数秒ごとに『心拍』信号を送信する。これが途絶えたら、DFRobot Beetleが一度電源を切って入れ直す。『電源をオフにしてから、もう一度オンにする』というおなじみの解決法は宇宙空間でも同様に通用するからだ」(Raspberry Pi)

 GASPACSは2月下旬、2枚のソーラーパネルを失って「極端に電力が不足」したことから、電源を切って充電することが多くなり、大きな遅れが生じた。しかし、GASPACSの「Twitter」アカウントによると、GASPACSは「優れた回復力を発揮して、作業を続けた」という。

 GASPACSのオープンソースのフライトソフトウェアを見てみたい開発者は、「GitHub」でCubeWorksのページを閲覧するといい。Raspberry Piによると、GASPACSのソフトウェアの80%は「Python」で書かれているという。

 CubeWorksの開発者は、Pythonは、ハードウェアと緊密に連携する「堅牢なモジュール式で、フォールトトレラント(一部が故障しても全体としての動作が継続する特性)のソフトウェアフレームワーク」の開発に最適な選択肢ではないだろうという。「C++」の方がより適しているかもしれないということだ。

 しかし、このプロジェクトのポイントは効率性とパフォーマンスではなかった。GitHubのCubeWorksのページには、「経験豊富な開発者は、『ハードウェアとより緊密に連携するもっと高パフォーマンスの言語ではなく、Pythonでフレームワーク全体を記述したのはなぜなのか』と尋ねるかもしれない。その質問に答えておくと、このフレームワークは、宇宙研究の分野に進みたい新参の開発者たちが利用しやすいように設計されているからだ」と書かれている。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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