写真を使った自作LINEスタンプが人気だ。一方で、実写スタンプを使ったトラブルも起きている。LINEの実写スタンプ事情はどうなっているのだろうか。
飼っているペットや子どもの写真を使った自作スタンプをもらったことがある方はいるだろうか。
子どもの写真でスタンプを作ったある40代女性はいう。「考えていたよりずっと簡単に作れて満足。作ったスタンプは家族間のやり取りで大活躍。すごく盛り上がっている。自分としてはお気入りだけれど、親ばかと思われるので、両親など親族とのやり取りのみに使うようにしている」
ある50代男性は、飼っていた猫の写真でスタンプを作った。猫は、1年前に亡くなってしまったそうだ。「かわいがっていた猫が亡くなってしまい、何か残せないかと思って作った。スタンプを使うと元気な時の様子を思い出して慰められる。大学生になって一人暮らしをしている娘に連絡する時に送ると、『元気な時を思い出す』と喜んでいる」
どちらにも共通しているのが、「思ったより簡単にできた」「身内で使うと盛り上がる」という点だ。ただ、身内以外に使うことについて聞いたところ、その50代男性は、「考えたほうがいいかもしれない」と首をかしげる。「誰彼構わず自分の子どもスタンプを送る人がいるが、リアクションにも困るし、ちょっと微妙かもと感じた。そもそも顔写真は個人情報だし、セキュリティ的に危険な気がする」
顔写真を使ったスタンプニーズは以前からあり、一般人でも顔写真を使ったスタンプは簡単に作れるようになっている。「LINEスタンプメーカー」は、スマートフォンのみでLINEスタンプの制作・申請・販売ができる専用アプリだ。アプリ内の写真機能・トリミング・ペイントなどで作成でき、PCや特別なソフトなどを必要としない。
スタンプは、自分だけで利用する場合でも、審査を通過しなければ利用できないようになっている。ガイドラインが細かく決まっており、違反したものはリジェクトされる仕組みだ。作成者以外のダウンロードは有料となり、家族や友人などには購入してもらうか、プレゼントする必要がある。
「いちいちどのスタンプが原因でリジェクトされたのか教えてもらえず、数回リジェクトされた。おむつ姿だったりすると、『肌の露出が多い』とはじかれるみたい。ディズニーキャラの服を着ていてもだめだった」と、前述の40代女性はいう。
作ったスタンプは、LINEスタンプを販売・公開できる「LINE Creators Market」で審査通過後、LINE STOREとLINE内スタンプショップで販売・購入できるようになる。他者に購入された場合、販売額からApp Store、Google Playなどの手数料(30%)を除いたうちの約50%が報酬として支払われる。
顔写真スタンプは作りたいが、セキュリティ的に心配という声があったため、新しい機能も加わっている。LINE Creators Marketで「プライベート設定」で設定すると、検索などへの表示を制限でき、自分たち専用スタンプとして利用できるのだ。
ただし、LINE STOREとLINE内スタンプショップでの新着・ランキング・検索一覧に表示されることを制限するだけなので、トーク画面やスタンプURLから購入ページに移動すれば、誰でも閲覧・購入は可能だ。
スタンプショップでは、誰でも買えるように全体公開している顔写真を使った一般人のスタンプも多数見つかる。「面白い一般人の顔写真スタンプを見つけた」と話題になっていたこともあるほどだ。買った後に勝手に文字などを加えて加工、再販売している例も見られるので、子どもの写真などはプライベート設定で公開を制限し、家族間などでのみ送り合う方が安心だ。
顔写真のスタンプはこのように楽しい使い方がされているが、悪用したいじめなども起きている。
「先生とか友だちの写真をこっそり隠し撮りして、スタンプに加工して利用している子がいた。送り合って大騒ぎしていたので気がついた」とある高校生は眉をしかめる。「普段は仲良しグループだけで送り合っていたみたいだけど、ある時、クラスのLINEグループに送った子がいてわかった。正直、気分が悪かった」
このような話は珍しいことではない。学校でこのようなトラブルが起きたというある先生は、「そもそも当人たちに悪いことをした意識がなかった。『ネット上にはコラ画像も多いし、ふざけていただけ』と悪びれなかった」と頭を抱える。生徒たちには指導した上で、スタンプは販売停止にさせたという。
人には肖像権があり、無断で撮影したり、写真を勝手に公開することは肖像権を侵害する行為だ。また、自分の写真を勝手に公開されることは嫌がられる行為であり、子どもたちの間でもよくトラブルになっている。このような行為はマナー違反であり、いじめや嫌がらせと変わらないということは子どもに伝えていくべきだろう。
スタンプというコミュニケーションを円滑にするためのツールでも、派生して新しい事象やトラブルが起きているのだ。
高橋暁子
ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。
公式サイト:https://www.akiakatsuki.com/
Twitter:@akiakatsuki
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