9月、Facebook(現Meta)の安全性担当グローバル責任者のAntigone Davis氏は、同社の写真共有アプリ「Instagram」が10代の若者のメンタルヘルスに悪影響を及ぼしているという懸念への対応に追われた。
米The Wall Street Journal(WSJ)に、FacebookはInstagramが10代の少女にとって「有害」であり、少女たちの体型コンプレックスや自殺願望をあおっていることを認識していたという記事が掲載されると、米議会は公聴会を開いてDavis氏を召喚した。この記事は、Facebookの元プロダクトマネージャーで内部告発者のFrances Haugen氏が持ち込んだ内部調査資料をもとにWSJが連載した記事の1つだ。
公聴会に出席したDavis氏は居並ぶ議員たちに向かい、この内部調査は「爆弾」と呼ぶようなものではなく、因果関係を調べることを目的としたものでもないと訴えた。
しかし民主党のRichard Blumenthal上院議員(コネカット州選出)は、この主張を認めないだろう。
同議員はFacebookの内部調査について、「自社のサイトが子どもに与える悪影響をFacebookが認識していたことを示す、強力で説得力のある、揺るぎない証拠」だと述べ、「この事実と調査結果を隠していた」として同社を批判した。
議会での激しい応酬は、この世界最大のソーシャルネットワークサービス(SNS)に対する米国の議員や社会全体の不信感を浮き彫りにしている。Facebook改めMetaは、ヘイトスピーチや誤情報、攻撃的なコンテンツに対する対策を十分に講じず、発展途上国をはじめ世界中の国で深刻な問題を引き起こしていると批判され続けてきた。2021年は内部文書の流出を機に、同社はユーザーの安全よりも会社の利益を優先しているという批判がさらに高まった。36億人のユーザーを抱える同社は、一連の報道は内部調査の結果をねじまげて伝えていると述べ、4万人を超える従業員が安全とセキュリティの問題に取り組んでおり、それこそが、こうした問題を真剣に受け止めていることの証だと主張した。内部告発をめぐる騒動に対応する一方で、同社は2021年、人々が仕事をし、交流し、ゲームを楽しむ場になると期待されている仮想環境「メタバース」の構築にも取り組んだ。
2021年のFacebook/Metaをめぐる動きを時系列で振り返ってみたい。
1月6日、Donald Trump米大統領(当時)の支持者が米連邦議会を襲撃した。目的は、大統領選におけるJoe Biden氏の勝利確定を妨害することだ。この事件では、ソーシャルメディア各社にも厳しい目が向けられた。Trump氏は当時、2020年の大統領選挙は不正選挙であり、本来の当選者は自分だとする根拠のない主張をSNS上で展開していたからだ。
米議会襲撃事件は5人の死者を出した。Facebookは、この襲撃がさらなる暴力を誘発することを恐れ、Twitter、Snapchat、Google傘下のYouTubeとともに、Trump氏を自社のプラットフォームから締め出すという異例の措置を講じた。
Facebookは、同社の独立監視委員会の同意を得て、Trump氏のアカウントを無期限に停止すると発表した。現在は停止期間を2023年までとし、2023年になった時点で「公共の安全に対するリスクがなくなったかどうか専門家の評価をあおぐ」としている。
3月にはFacebookのMark Zuckerberg氏、TwitterのJack Dorsey氏、GoogleのSundar Pichal氏の各最高経営責任者(CEO)が米議会に召喚され、1月の議会襲撃事件で各プラットフォームが果たした役割について厳しい追求を受けた。
Trump氏のアカウント停止を機に、FacebookなどのSNSが保守派の言論を検閲しているという批判が巻き起こった。SNS各社は、こうした主張を一貫して否定しているが、Trump氏は10月、大手テクノロジー企業に対抗するために独自のSNS「TRUTH Social」を立ち上げると発表した。
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