中古マンション探しとリノベーションのワンストップサービス「リノベる。」を展開するリノベるは、リノベーションにまつわるさまざまな課題をテクノロジーで解決する仕組みを整えている。「人が苦手な部分をテクノロジーで補完し、できることをテクノロジーで増やす」という思いのもと取り組む、リノベるのテクノロジー活用について紹介する。
中古マンションのリノベーションは、マンション探しから、間取り、デザイン、住宅設備の選択まで決めることが多く、時間もかかる。そのため「お客様が辛い体験をしてしまうことも起こり得る。今まではその部分を人で埋めていたが、担当者によりサービスが異なり、品質が安定しない。さらにやり取りのタイミングが間延びするなどの課題があった。そこをテクノロジーで解決していく」とリノベる プロダクトマネジメント部部長の照屋遼氏は背景を話す。
リノベるが主に提供しているテクノロジーのサービスは、中古不動産マッチング支援システム「R CORE(アールコア)」、オススメの住まいを自動提案するオンラインサービス「sugata(スガタ)」、リノベーションの施工プロセスにおける「遠隔施工管理」、ARを活用したリノベーション買取再販事業者向けプラットフォームサービス「ARリノベ」。
「お客様の体験価値にフォーカスしたものに加え、住まいの作り手である設計担当者や職人の方が、抱えている課題についても解決する。この2つを実現すれば、最終的にサステナブルな社会を作り、テクノロジーが暮らしを豊かできる」と照屋氏はその意義を説明した。
R COREは、相場価格や希望面積、築年数といった希望条件を入力すると、地図上に該当物件を表示するというもの。表示する際、赤、青、緑と色が塗られることで、買いにくい(赤)、可能性あり(青)、希望価格の物件が多い(緑)といった状況をひと目で把握できることが特徴だ。
リノベる 経営企画本部事業開発担当の間多洋彰氏は「物件は、チラシや物件情報、ポータルサイトなどから探す必要があり、お客様がほしい物件にたどり着くまで時間がかかるという課題があった。それを地図上にマッピングすることで、お客様への提案がしやすくなった。物件探しは知識量が必要で、担当者によって差が出る部分だったが、R COREを使うことで、入社半年のスタッフがお客様から申し込みを得られたという例もあった。まさしく課題が価値になる流れが作れた」と説明する。
色分けでマッピングする時には、マンション、戸建て、土地を対象にしたAI査定「HowMa」などを展開するコラビットのデータを活用。「お客様は、条件を変更しながら感覚的に購入できるエリアをご理解いただける。誰でも使えるので難しくない」(間多氏)と使いやすさも強調した。
物件を見つけた後に必要になってくるのが、室内デザインだ。リノべる。では「デザインを決める時にイメージがわかない、自分以外の人にイメージを共有するのが難しい」というお客様からの声を受け、開発したのがsugataだ。
sugataは、画面上に出てくるキッチンやリビング、ベッドルームなどの画像から「いいな」と感じたものを選択していくことで、オススメの住まいを自動提案するオンラインサービス。「住まいのイメージを的確に伝えたいというお客様のニーズと、それをどう実現するのかという壁があり、その壁を乗り越えて作ったのがsugata。お客様の好みはデザインとコストパフォーマンスの2軸でバランスを見ながら探るようにしている。部材や住宅設備を変更すると、概算金額も変わり、担当者の業務削減にも結びついている」とリノベる プロダクトマネージャーの柴田征宏氏は説明する。
従来はPinterestなどから画像を選んでもらい、それをベースにしていたというが「部屋全体のテイストなのか、パーツのことなのか、どの部分の好みを示しているのかわかりづらかった」という。sugataではパーツを細分化し、選べるため、お客様の好みを素早く把握できるとのこと。
現物を見て最終決定に至るケースがほとんどで「自動化というよりはデザイナーの業務負荷を減らし、間取りを提案するなどの時間を作り出すことが目的。お客様のイメージをしっかりと可視化するツールとして補助的に使っている」(柴田氏)と位置づける。
一方、現場における働き方改革も推進する。遠隔施工管理は、工事中の施工現場の様子を静止画で見ることで、現状を把握できるというもの。常に複数案件を持つデザイナーが現場に行く移動時間を減らし、仕事の効率化につなげる。3月にMVP版をリリースし、現在6つの現場で稼働しているという。
施工現場とデザイナーのいるオフィスでは、音声や文字ベースでのコミュニケーションでは現状が伝わりづらく、認識のズレを減らすために、画像でのコミュニケーションが必要だったとのこと。
しかし、現場では電源やインターネットの確保が難しく、データ量の多い動画では扱いづらく、カメラとスマートフォンを組み合わせることで静止画を共有するシステムを構築したという。「撮影は1日4回しており、工事の遅延なども確認できる。見たい時に現場を確認したいというデザイナーの要望を形にした」とリノベる プロダクトマネージャーの原田大氏は、シンプルなシステムで構築した理由を話す。玄関には人感センサーを置くことで、不法侵入なども確認できるという。
2020年5月にローンチし、2021年4月から本格稼働しているのが、買取再販事業者向けのプラットフォームサービスARリノベだ。リノベる ARリノベ専門営業担当の太田広志氏は「ここ数年、接客していると、リノベーション済みの物件を購入して、さらにリノベーションを加える人が増えてきた。こうした傾向を受け、オーダーメイドリノベーションとリノベ済みマンションのいいところ取りができる仕組みとしてARリノベを開始した」と背景を話す。
買取再販事業者向けのBtoBサービスのため、その仕組みを理解してもらう必要があったが「『ポケモン GO』のようなものと説明することで、話しの広がりでてきた。買取再販事業者が現場で使うイメージがわかないと言われたこともあるが、使い方のレクチャーやマニュアルをパッケージとして提供することで、活用してもらえた」(太田氏)とサポート体制も整える。
実際の現場では、不動産会社よりお客様が使いこなしているケースもあるとのこと。「お客様がARを活用してイメージを確認しながら意思決定できる」(太田氏)ことが大きなメリットになっているという。
お客様、工事担当者、さらに不動産会社と、あらゆる接点でテクノロジーを活用し、業務効率化に結びつけているリノベる。照屋氏は「日本の住宅はまだ新築が8割の市場。中古マンションのリノベーションは可能性が大きいが、壁や課題も残る。その部分をテクノロジーを通して解決している。リアルとテクノロジーの掛け合わせで理解してもらえることも多い」とコメントした。
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