不動産VR「ROOV」のスタイルポートが資金調達--非対面が追い風、事業領域拡大も視野

 3Dコミュニケーションプラットフォーム「ROOV」を展開するスタイルポートは10月6日、日本郵政キャピタル、ゼンリンフューチャーパートナーズ、Sony Innovation Fund、三菱UFJキャピタル、マーキュリアインベストメント、みずほキャピタルほかを引き受け先とする第三者割当増資により総額4億2000万円の資金調達を実施したと発表した。戸建てやリフォームなど、新市場への展開と不動産向けVRだけに留まらない事業領域の拡大を目指す。

総額4億2000万円の資金調達を実施した
総額4億2000万円の資金調達を実施した

 ROOVは、VR内覧を中心にした不動産販売の総合接客ツール。三菱地所レジデンス、日鉄興和不動産、三井不動産レジデンシャルなどの大手不動産会社をはじめ、現在導入企業数は約70社。導入物件数は約270に及ぶ。スタイルポート 代表取締役の間所暁彦氏は「都内のデベロッパーでの採用実績も伸びているが、この1年は地方での導入が増えている。商談もほぼオンラインで実施し、情報もデータでやりとりしているが、オンラインに特化したやり方はROOVのメリットが伝わりやすく、デベロッパーの方にも理解していただきやすい」とここ1年半の変化を話す。

 数字でみても2020年度上期に比べ、2021年度下期の売上は4.6倍に拡大。コロナ前後で潮目が変わったことがわかる。「サービスを立ち上げた時『いつか必ずROOVが使われる時代が来る』と確信していたが、唯一わからなかったのはいつその時代が来るのかということ。当初はモデルルームありきの営業スタイルを変えることへの障壁があり、販売には苦労したが、非対面、非接触のキーワードが取り沙汰されるにつれ、大きかった障壁が取り除かれてきた」と振り返る。

 現在のマンション価格高騰もこの状況を後押しする。「都内を中心にマンション価格はどんどん高くなっている。デベロッパーは価格を抑えたいが、なかなかコントロールが難しい状況。その中で、自社内でコントロールが利くマーケティングコストをカットしたいという思いが急激に高まってきた。加えて、インターネットやSNSが普及するにつれ、お客様の情報収集力が飛躍的に向上している。今までモデルルームに行かなければわからなかったことがネットで取得できるようになった今、モデルルームの役割が問い直されてきた」と3つの変化を挙げる。

 この状況を一過性と見る向きもあるが、間所氏は「効率の良いマーケティングをしたいという思いは不可逆で変化しており、手応えと自信を感じている」と言い切る。

「ROOV」
「ROOV」

 今回の資金調達では、ゼンリンフューチャーパートナーズ、Sony Innovation FundなどCVCを中心にしていることも特徴の1つ。「今後は、現在のマンションに加え、戸建てやリフォームなどへもROOVの活用場所を広げていきたい。新しい事業を展開していく上で、一緒に取り組めることも視野に入れている。ゼンリンであれば、街のデータベースを持ち、町並みとマンションの両方を組み合わせたサービスを提供できるかもしれないし、私たちが持つデータも役立てていただける可能性も高い。ソニーはエレキのイメージが強いが、SREホールディングスとして不動産事業も持つ懐の広い会社。一方で、最先端の3Dレンダリング技術を持つトップランナーとしての側面も持ち、技術面からのシナジー効果も出せると考えている」と資金提供にとどまらないシナジー効果を打ち出す。

 不動産物件におけるVR内覧を手掛ける企業はいくつかあるが、「リアルタイムで室内を自由に歩き回れ、高画質で見られるのはROOVのみ。マーケティングで活用できたり、オンライン商談ができるなど、活用の幅も広い。そう考えると競合はなかなか出てこないと思っている。不動産VRの分野は実績が物を言う世界。最初に多くの実績を作れば、それだけでデベロッパーやクライアントのニーズや要望を汲み取れる。その情報ベースにプロダクトを改善し、機能追加をスピード感を持って対応していくことが必要。その好循環を私たちはもっとも多く回している」とスタイルポートならではの強みを説明する。

 間所氏は「戸建てやリフォームの現場でも活用できるようサービスの幅を広げていくこと、加えて、ROOVのサービスとほかのサービスを組み合わせて、さらなる新規ジャンルに出ていけるようにしたい。不動産VRからさらに枝葉を伸ばし、インテリアや大型家電などの購入の際に使っていただけるようなサービスにしていきたい。家電や家具の購入時に気になるのは『本当に自宅に入るかどうか』『設置して自宅のインテリアにマッチするかどうか』この部分が不安だったり、面倒だったりと感じる人は多い。今後は、VRを使うことで、こうした空間把握をしないと購買の意思決定ができないものを減らしていきたい」と見据える先は不動産に留まらない。

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