日鉄興和不動産がマンションに住む利便性を買い物の観点から変えようとしている。4月2日、「無人コンビニ600」を展開する600と組み、マンション専用 無人ストア「Store600」の開発を発表。マンション内に適した筐体と品ぞろえ、決済方法を用い、自宅から徒歩1分圏内の買い物体験を作り出す。
600は、オフィス向け無人コンビニ「600」を運営するスタートアップ。2017年6月に設立した。日鉄興和不動産では、ファミリー、高額物件の「リビオ」「グランリビオ」から単身者向けの「リビオレゾン」まで幅広いマンションシリーズを展開しているが、「差別化しないと売れないと実感し、無人コンビニを分譲マンションとして初めて設置した」と日鉄興和不動産 常務執行役員住宅事業本部長の猪狩甲隆氏はきっかけを話す。
「導入した板橋のマンションは、駅から徒歩2分という好立地だが、アプローチにコンビニなどがなく、なにかないかと考えて設置を決めたもの。その後社内から、ほかの物件にも導入したいという声が上がり、2020年3月には資本業務提携を結んだ。住民の方にはミニコンビニがついているという、付加価値の向上につなげられる」(猪狩氏)と出資に至った理由を説明した。
Store600は、マンションへの設置に特化した新モデル。オフィス向けの600では飲料や食料を扱っているため、冷蔵ケースを使用しているが、常温帯の筐体を採用。マンションの共有部においても浮かない高級感のあるデザインにすることで、高級物件へのラウンジ導入なども見込む。
クレジットカード決済だったオフィス向けモデルに比べ、Store600では、専用アプリを使ったQRコード決済を採用。600 代表取締役の久保渓氏は「オフィスでは財布を持っていても、マンション内ではスマートフォンだけというケースが多いため、より利便性の高い決済方法を採用した」とする。
購入時は、専用アプリで扉のQRコードを読み取り解錠し、ほしい商品を取り出した後、商品に付けられたQRコードを読み取って決済を完了する流れ。アプリ内で履歴確認ができるほか、マンション内ということで、防犯カメラが設置されているケースが多いことで、セキュリティを担保する。
ラウンジのほか、キッズルームやワークスペースなどへの設置を想定しており、キッズルームであればおもちゃ、ワークスペースであればコーヒーとスイーツなど、多様な商品を取り扱う予定。飲料と食料が中心のオフィス向けに比べ、ドライフラワーが購入されたというケースもあり、購入価格が数百円から数千円程度の、マンションならではの品ぞろえを目指す。
商品の補充は管理人の方にお願いするほか、場所によっては600のスタッフが対応するなど「物件ごとに調整していく」(久保氏)方針。将来的には冷蔵帯や冷凍帯の筐体も用意し、食品や冷凍食品も取り扱いたいとする。
Store600では、今後「Location」「Contents」「Standby」「Solution」「Integration」の5つの領域のパートナーととも価値提供するべく、パートナーと一緒に事業開発を行う枠組みとして、「600コンソーシアム」を発足。すでに複数の事業者が参画しており、プロジェクトも進行しているという。
無人販売の仕組みでは自動販売機も考えられるが、久保氏は「取り扱える商品の大きさ、形の幅が広く、ドア式で商品を取り出す形式のため、落下に耐えられるものに限定されない。商品棚は高さの変更もできるため、多様な商品に対応しやすいなどのメリットがある」と説明。現在新築の10棟の物件に導入しているが、既築物件での取り扱いも視野に入れているとのこと。猪狩氏は「マンション内での買い物を通して、住民の方同士のコミュニティ形成に役立つと思っている。売って終わりではなく、楽しんで生活してもらえることに重きをおいている」とした。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス