誰でも、「苦手」なことや「弱さ」、「マイノリティ性」を持っているものだ。「マイノリティデザイン」は、たったひとりの「弱さ」を起点にして、世界をより良くしようとする考え方だ。大規模なマーケティングは「マイノリティ」を対象にしないことが大半だろう。マイノリティデザインの考え方は非効率的に思えるかもしれない。しかし、ある人のマイノリティに寄り添ってデザインされたものは、その周辺にいるほかの人にとっても役立つものになるかもしれない。
たとえば、本書で紹介されている、「あるひとりの人の障害を起点につくられた服」は、障害のあるなしにかかわらず、「かっこいいから」「機能性が高いから」と、さまざまな人に購入されていったそうだ。また、運動音痴である著者は自らを「スポーツ弱者」と呼び、自分のマイノリティ性から出発して、誰でも楽しめる「ゆるスポーツ」をつくった。これは、結果的に運動が苦手な多くの人を巻き込みながら、障害者と健常者が対等に勝負できるプラットフォームになっている。
自分のあるがままを認めて、「弱さ」を克服せずに社会の側を変えてしまう。そんな「マイノリティデザイン」は、働くことや生きることの意味を改めて考えさせてくれる。多種多様な「マイノリティ」に合わせて変わった先の社会は、多くの人にとって息の吸いやすい世界になっているのではないか。そんな希望に溢れる1冊だ。
今回ご紹介した「マイノリティデザイン」の要約記事はこちら。この記事は、ビジネスパーソンのスキルや知識アップに役立つ“今読むべき本”を厳選し、要約してアプリやネットで伝える「flier(フライヤー)」からの転載になります。CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
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