「SNSは10代のメンタルヘルスに悪影響」は本当なのか(後編) - (page 2)

Katie Collins (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2021年02月16日 07時30分

ティーンエイジャーは十人十色

 その相互関係を証明するための「数値」の探究は、学校でのプレッシャー、社会生活、趣味、家庭の問題、社会経済的な問題など、ティーンエイジャーのメンタルヘルスに影響を与える可能性のある膨大な数の要因によって、さらに複雑になる。何をソーシャルメディアの利用とみなすのか、という分類だけでも、微妙なところだ。「親に理解してほしいことが1つだけあるとしたら、それは、ソーシャルメディアという言葉は、さまざまなものを1語で表している、ということだ。その情報だけでも、本当に大きな価値があるかもしれない」。ケンブリッジ大学のOrben氏はそう述べている。

 統計的な1つの相互関係を割り出そうとする動きの裏には、それによって、健康関連の専門家が、ティーンエイジャーのスクリーンタイムの限度について、ガイドラインを打ち出せるようになるという意図がある。摂取してよいアルコール量の限度を設けるガイドラインを打ち出すのと同じやり方だ。英国の4人の主席医務官は、公開された研究結果を包括的に精査した後、2019年にそのようなガイドラインを設ける取り組みをすでに取り下げている。

 Orben氏が、定量可能な一般化された数値を求めるのではなく、ソーシャルメディアが各個人に及ぼす影響を評価する方法を探ろうとしているのはそのためだ。辺境の田舎の村に住むLGBTQ+のティーンエイジャーにとっては、ソーシャルメディアが、支援コミュニティーや活動のリソースにアクセスできる窓口になるかもしれない、と同氏は指摘する。一般化されたガイドラインを当てはめて、その窓口を奪ってしまうことは、有益どころか、むしろ害になってしまう可能性もある。

 Orben氏によると、ソーシャルメディアの利用がメンタルヘルスに影響を与える可能性があるのと同様に、その関係性が双方向である可能性にも留意すべきだという。メンタルヘルスが人々のソーシャルメディアとの付き合い方に影響する可能性もある。

 「私たちは、苦しみの原因はソーシャルメディアの利用だと考えがちだが、他のテクノロジーでも同じ現象がみられる。私たちの感情や生き方も、テクノロジーの使い方に影響を及ぼしている」(同氏)

 ティーンエイジャーが長時間テレビを見たり、暴力的なビデオゲームをプレイしたり、非現実的な体型を称賛する雑誌を読んだりすることを諸悪の根源と考えるようなモラルパニックは、目新しいものではない。したがって、ソーシャルメディアをめぐる今日の議論も、その現代版だと解釈することは簡単だ。だが、この問題はそれほど単純なものではないとOrben氏は考えている。「従来のモラルパニックの延長線上にあることは確かだが、その懸念を真剣に受け止めなくてもいいわけではない」(同氏)

 ソーシャルメディアがティーンエイジャーの現在と将来のメンタルヘルスに及ぼす影響についての懸念には妥当なものもある。だからこそ、研究者たちはこの問題をこれほど広範に調査しているのだ。ただし、調査結果について断定的な主張がなされ、不安をあおる見出しを付ける報道発表の文化には警戒する必要がある、とOrben氏は指摘する。このような傾向が原因で、究極的には矛盾する情報が広まってしまい、保護者とティーンエイジャーはこの問題をどれだけ深刻に受け止めればいいのか、混乱をきたしてしまう。

 Orben氏は、どのようなソーシャルメディアが適していて、どのようなものが適していないのか、そのソーシャルメディアを使ってどのような気持ちになるか、ということについて、保護者がティーンエイジャーの子供と話し合うことを勧めている。ソーシャルメディアを利用する時間にこだわるよりも、行動の変化に注意して、積極的にコミュニケーションをとる方が重要だ。

 「もちろん、皆が聞きたいのはそんなアドバイスではないだろう。人々が欲しているのは明確な答えだ」とOrben氏。「だが、問題が複雑すぎて、その影響を理解する統計的手段がまだ存在しないのかもしれない」(同氏)

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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