三菱地所は2月2日、大手町、丸の内、有楽町の丸の内エリアにおける防災の取り組みとして「災害ダッシュボード 4.0」の実証実験を実施していると発表した。千代田区、鉄道各社、バス事業者、ビル事業者等と連携し、帰宅困難者受け入れ施設での入退館をデジタル化するほか、人流データを取得、解析し、受け入れ施設周辺の混雑状況を見える化する。実証実験期間は1月下旬から2月上旬。
災害ダッシュボードは、災害対策機関での情報共有や帰宅困難者向けに情報を発信するプラットフォーム。2020年1月に「災害ダッシュボー ド 3.0」として発表している。災害ダッシュボード 4.0では、帰宅困難者の受け入れ施設で、人数が把握できない、対面での受付作業は煩雑すぎるという課題に対し、QRコードを使うことで、課題解決を目指す。非対面、非接触でできるため、新型コロナ対策にもつなげる。
QRコードは、災害発生時の帰宅困難者受け入れ施設に掲出。スマートフォンで読み取ると専用サイトに接続し、名前、性別、生年月日、メールアドレス、電話番号、住所などを登録してチェックインする仕組み。データは「災害ダッシュボード帰宅困難者名簿データベース」に登録され、施設内の人数を把握したり、安否確認をしたりできるとしている。名簿データベースは、千代田区が一元管理する想定だ。
三菱地所 都市計画企画部統括の澤部光太郎氏は「受け入れ施設の情報を千代田区が一元管理することで、全体を俯瞰し、安否確認などができる。これが可能になれば、自宅にいる家族からの問い合わせにも千代田区側で答えられるようになるかもしれない。登録していただいたデータは個人情報なので、民間企業側が取り扱うのはNG。民間と行政が連携で実施することで、安否確認もスムーズになる」と官民連携の重要性を訴える。
退館時には、専用のQRコードを読み取ることで、スムーズなチェックアウトを促進。リアルタイムで施設内の人数を把握することで、新しい施設を開設したり、別の施設に誘導したりと、先手を取った行動につなげる。
各施設の状況は、丸の内エリアに設置している「丸の内ビジョン」に表示するデジタルサイネージ版と、WEB版の両方で、歩行者などに情報を共有。NHKの災害ニュースを中心に、周辺のライブカメラ映像や千代田区等からのエリア避難等情報、受け入れ施設の混雑状況などを知らせる。
ライブカメラ映像は、ビルなどに取り付けた固定ライブカメラのほか、災害対策機関用として、東京駅地下や受け入れ施設内などにもカメラを設置。加えて丸の内シャトルバスなどに取り付け、移動しながら周辺情報を取得する。
実証実験時では、ライブ映像を撮影するカメラとしてスマートフォン「iPhone」を活用。機動力に加え、位置情報の精度が高いことを採用理由にしている。バッテリーについては、キャンプ用の大容量電源と組み合わせることで、長時間の使用を実現した。
今回の実証実験では、赤外線による人流計測データを受け取り、その人流密度等を解析のうえ、屋内外電子地図上で見える化する国土交通省との共同実証も実施。丸の内ビルの仲通り側歩道上と、行幸通り側地下通路に計測機器を設置し、リアルタイムで人流データを取得しているとのこと。これにより、受け入れ施設周辺の人流シミュレーションなどへの適用実証もしていくとのことだ。
首都直下地震で丸の内エリアで発生する帰宅困難者数は、平日15時頃で約4万2000人と推定される。三菱地所では、丸ビルや新丸ビルをはじめ現在17棟の建物で千代田区と帰宅困難者受け入れ施設の協定を結んでおり、千代田区、同協定締結者、鉄道事業者間の実務者会議も行い、官民連携した取り組みを推進。今後も次世代防災拠点機能の実現や、突如発生する首都直下地震等に対して、スマートシティの1つの機能として、災害ダッシュボードによる官民、民民情報連携を強化していくという。
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